レポート『コロナと性風俗』第2回「東京・池袋」〜ノンフィクション作家・八木澤高明

レポート『コロナと性風俗』第2回「東京・池袋」〜ノンフィクション作家・八木澤高明

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新型コロナウイルスは風俗関係者の生活にも影を落とす Oleg Elkov / Shutterstock (C)週刊実話Web

「お店、決まってますか?」


緊急事態宣言下の東京・池袋駅西口周辺の歓楽街を歩いていると、客引きの男たちに声をかけられた。街灯のスピーカーからは客引き行為の中止を喚起するアナウンスが流れているが、そんなことはお構いなしだ。時計は午後10時すぎ。通常なら多くの人で賑わうはずだが、歩く人の姿はまばらで、黒いスーツを着た客引きばかりが目立っていた。



しばし歩いて、空腹を満たそうと店を探したが、ほとんどが自粛要請に応じていて閉まっていた。要請を無視するラーメン屋もあったが、満員で、しかも行列ができていた。仕方ないので、テイクアウトのみ営業しているハンバーガーショップに寄り、路上でハンバーガーを頬張った。こんなこと、いつ以来かと思ったが、これも緊急事態宣言下ならではの光景なのだろう。


飲食店が営業を自粛する一方、普段と変わらず営業を続けている業種があった。風俗店だ。池袋といえば、北口などに多くのラブホテルが建ち並んでいることもあり、「ホテヘルのメッカ」としても知られている。


10年近くこの街でヘルス嬢として働き続けている香奈枝(28歳・仮名)が、現在の様子を明かす。


「一回目の緊急事態宣言が出た昨年の4月頃がいちばんヒドかった。本当にお客さんが来なくて、ゼロになった。それから、6、7月は少しよくなったけど、年末にまたコロナが増えて、だんだんお客さんが減っていって。去年の4月頃よりはマシだけど、今も大変。持続化給付金を偽装申請する女の子や昼職に転じる子も多いよ」


香奈枝の生活にも、様々な変化があったようだ。


「お給料は今、いい時の半分以下。20万円ぐらいしかいかないので、ギャラ飲み(お金をもらって飲み会に参加する)とかでしのいでる。1時間で1万円もらえるので、ありがたいよね。私はやっていないけど、パパ活をやっている子もいる。1回3万円、ゴム付きでセックスをする。AVやってる子も大変みたいで、コロナで撮影が月に1本とかに減ったって。その子もパパ活とかで何とか生活しているみたい」


働きたい女性もいっぱいいるのに…

私の知り合いで、マッチングアプリを愛用している40代の男がいるが、彼によれば、コロナが流行して以降、女性を見つけるのが簡単になったと言っていた。風俗嬢ばかりでなく、リモートワークを強いられている一般職の女性も人恋しさに相手を探しているという。


コロナ禍の影響は、風俗嬢ばかりでなく、女性を風俗業界に送り込むスカウトたちにも及んでいた。以前、取材したことがあるスカウトの龍雄(36歳・仮名)にも話を聞いた。


「久しぶりっすね」


池袋の西口にある喫茶店で久しぶりに会った龍雄だったが、張りのある声音とは裏腹に、昨今の状況は厳しいようだった。


「コロナで完全に開店休業状態ですね。俺たちの仕事って人と会ってナンボの、ナマモノ¥、売だと思うんです。実際、俺も人と会うのが好きですし、人との繋がりによって次の何かが生まれたりするんです。それなのに、コロナで人と会うのが難しくなっちゃった。これじゃあ、活力が失せますよね」


実際、コロナの影響で仕事内容も変化したという。


「リモートとかで打ち合わせをしても、実際に会うのと全然違うし、やる気が起きません。この状況だから、潰れている店も多いですし、働きたい女性もいっぱいいると思うんです。とにかく、暗い話ばかりですよね」


そう語る龍雄自身も、コロナの実害を被っている。


「最初の緊急事態宣言が終わった去年の8月頃、情報交換のために、仲間たちとメシを食いに行ったんですけど、そこでコロナにかかってしまったんです。何日か経って微熱が出て、体がすごくダルい。おかしいなと思って検査を受けたら陽性で、すぐ入院になりました。頭痛と肩甲骨の痛み以外、症状はたいしたことなかったんですが、8日も入院したんですよ」


コロナで増えた“ネットスカウト”

龍雄は現在、結婚して2人の子どもの父である。幸い、家族には感染しなかったものの、その入院以来、妻との関係がぎくしゃくするようになったという。


「嫁にめちゃくちゃ怒られました。しばらく人とは会うなって言われて、ストレスも溜まりまくりですよ。まだ子どもが小さいから離婚とはならないですけど、ちょっと考えちゃいますよね」


とはいえ、仕事をしないことには生活できない。生活費はどうしているのか。


「以前、風俗店に紹介した女の子の売り上げから、まだ俺に何%かマージンが入ってくるんです。その額が月に100万円ぐらいになるので、何とかなっています。だけど、このまま何もしないで女の子が辞めてしまったら収入がゼロになりますから、何か仕事をしないとマズい状況ですね」


以前の働きによって現在の生活を成り立たせている龍雄。しかし、スカウトの中には、コロナ禍であってもうまく稼いでいる者もいるという。


「ツイッターとかで女の子を募集するネットスカウト≠ェいるんですよ。直接会いはせず、写メを送ってもらって店に紹介するんです。若いスカウトがやっているんですけど、僕にはできないですね。写メは加工されていたりするんで、店とトラブルにもなるんです。信用第一ですからね。でも、こういうスカウト業界の変化も、やる気をなくす原因の一つなんです」


コロナにより、ますますネットスカウトは増えているという。


生き残る者と、限界を感じる者――。コロナは街や職業の明と暗をくっきりと浮かび上がらせている。


八木澤高明(やぎさわ・たかあき)

神奈川県横浜市出身。写真週刊誌勤務を経てフリーに。『マオキッズ毛沢東のこどもたちを巡る旅』で第19回 小学館ノンフィクション大賞の優秀賞を受賞。著書多数。



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Oleg Elkov / Shutterstock



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