「飲料水ビジネス」新規参入&拡大!コロナ禍で注目集まる〜企業経済深層レポート

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「飲料水ビジネス」に新規参入や既存業者の拡大が相次いでいる (画像)Tarasyuk Igor / Shutterstock

去る3月8日、大手家電量販店のビックカメラ(東京都豊島区)が、飲料用天然水の定期宅配サービスを開始すると発表した。ビックカメラは同日、採水工場の建設予定地である山梨県富士吉田市と、「地下水を活用した事業の実施に関する協定」を締結し、開発に伴う諸手続きが済み次第、工場建屋工事に着手する。



昨今、これまで「飲料水ビジネス」とは縁が薄かった企業が、相次いで本格参入する傾向が目立っている。各企業とも10年先をにらんでの動きだが、果たして思惑通り将来性はあるのだろうか。まず、ビックカメラの計画を見てみよう。在京キー局の経済担当記者が解説する。


「ビックカメラはヤマダ電機に次ぎ、国内売上高ナンバー2の家電量販店です。休眠中だった系列子会社のビックライフソリューションが、富士山麓に採水工場を新設します。販売は自社店舗やインターネット通販サイトを活用し、子育て世代や健康志向が強いシニア層の需要に応えることで、将来的にも採算が取れると踏んでの進出です」


富士山の天然水は、噴火時に流出した溶岩や砂礫が何層にも重なってフィルターの役割を果たし、雨や雪が数十年もの年月をかけて、土や岩のミネラルを含みながらろ過されたものだ。


富士吉田市内に25億円を投じて建設する工場には、9.5リットルのウオーターサーバー用ボトルを生産するラインを設置し、月産80万本以上が可能だという。工場では地元雇用を重視し、2022年の稼働を目指して40人を新規採用する。


「ネット通販市場はまだこれから」

家電関連産業からは、アイリスオーヤマ(宮城県仙台市)も飲料水ビジネスに進出している。飲料水メーカーの関係者に聞いた。


「アイリスオーヤマの本社機能は、東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方にあり、飲料水の重要さを実体験している。その教訓を活かして災害時の飲料水確保、補給に貢献するため、新規事業に参入したという。しかし、そこはコロナ禍をものともせず、対前年比40%もの売上増を果たした同社のこと、飲料水ビジネスの伸長を確信しての参入とみています」


アイリスオーヤマは2020年1月に飲料水事業への参入を表明しており、金太郎伝説で有名な金時山のある静岡県小山町に工場を建設し、ペットボトル入り天然水と強炭酸水の本格生産を始めた。敷地内で地下水をくみ上げ、ペットボトルへの詰め込みまで全工程を自動化している。


商品名は『富士山の天然水』と『富士山の強炭酸水』で、1日あたりの生産能力は、天然水が500ミリのペットボトルで40万本、強炭酸水が同35万本、初年度の2021年は約50億円の売り上げを目指している。


また、2月13日の福島県沖地震(震度6強)で断水が発生したことを受け、同社は急きょライン増設を決定。新たに約30億円の追加投資に踏み切るという。記者会見した大山晃弘社長は、「日本が災害に強い国になれるよう貢献したい」と述べている。


「飲料水事業は競争が激しく、市場は熟成しつつあるが、ネット通販市場はまだこれからとアイリスオーヤマは読んでいる。2025年までには売上高300億円を達成し、当初の6倍規模まで拡大させる強気の作戦だ」(同)


かつて「水と安全はタダ」が常識だったが…

こうした新興勢力の参入で、既存メーカーも安閑としてはいられない。天然水やミネラルウオーターの売り上げで国内約4割のシェアを誇り、トップを走り続けるサントリー食品インターナショナル(東京都中央区)は、長野県大町市に新工場を建設中で、さらなる増産を計画している。経営コンサルタントが計画の全体像を明かす。


「5月末に稼働する新工場は『サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場』と称し、約240億円を投じた新たな生産拠点。現在『サントリー天然水』は、山梨県の南アルプス、鳥取県の奥大山、熊本県の阿蘇と3つの水源から採水しているが、ブランドの発売開始から30年を迎えて、長野県の北アルプスが第4の水源として加わることになります」


同工場で生産される天然水は、『サントリー天然水〈北アルプス〉』と名付けられ、年間1500万ケースを出荷する予定だという。


「新工場は単なる生産拠点としてではなく、約41万平方bという広大な敷地内に、遊歩道や展望デッキ、地元の食材を楽しめるレストランなどを併設し、観光や交遊の場としても地元に貢献する予定です。当然ながら環境保全にも最大限の配慮を講じています」


東日本大震災後は原発事故も重なり、汚染水が懸念されたことから、多くの小売店や自販機から水が消えた。昨年来のコロナ禍で水はますます重要視され、自治体や各家庭、職場でも、万が一のため保存水を備蓄する傾向が高まっている。


1983年にハウス食品から発売された『六甲のおいしい水』が、一般家庭向け飲料水ビジネスの始まりと言われるが、それまでの日本では「水と安全はタダ」が常識だった。


あれから約40年、その日本で飲料水ビジネスが本格化し、新たな時代を迎えつつある。


【画像】


Tarasyuk Igor / Shutterstock



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