北朝鮮“若者の人民軍離れ”深刻…弾道ミサイル発射の裏事情

北朝鮮“若者の人民軍離れ”深刻…弾道ミサイル発射の裏事情

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Alexander Khitrov / Shutterstock.com

北朝鮮が「瀬戸際外交」を再開した。3月21日と25日、黄海と日本海に向け立て続けに短距離ミサイルを2発ずつ発射。2回目は約1年ぶりとなる弾道ミサイルで、国連安全保障理事会(安保理)の対北朝鮮決議に違反する行為だった。



今回の発射実験には、バイデン米政権が北朝鮮政策の見直しを進める中、再び米国を対話の場に引きずり出し、制裁緩和と体制維持を約束させようとの魂胆が垣間見える。


「黄海向けの1回目は巡航ミサイルで、バイデン大統領はこれを深刻な挑発ではないとの認識を示した。すると、北朝鮮はそのわずか4日後、1月の軍事パレードで公開したロシア製の短距離弾道ミサイル『イスカンデル』改良型を初めて試射した。これにはバイデン氏も『事態をエスカレートさせるなら、それに応じた対応をする』と北朝鮮を非難しました。相手の出方を見極めながら揺さぶり、関心を一挙に引き寄せる北朝鮮らしいやり方です」(国際ジャーナリスト)


北朝鮮の金正恩総書記は1月に開催された党大会で、「実戦での使用を想定した戦術核兵器の開発を急ぐ」と強調し、その直後の軍事パレードでイスカンデル改良型を披露している。


「イスカンデルは低空飛行で変則的な軌道を描き、迎撃が困難とされる。同ミサイルに小型、軽量化された核弾頭を搭載した場合、韓国は北朝鮮による核攻撃の脅威にさらされます。また、さらに射程が長い中距離弾道ミサイル『ノドン』に核弾頭を搭載すれば、今度は日本全域が核攻撃の的になる。北朝鮮は米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)で軍事的に直接威圧しなくても、短中距離弾道ミサイルで日韓を核の人質≠ノするつもりです」(軍事アナリスト)


目的はあくまで制裁解除と“金王朝”の存続

ただし、正恩氏は2回の発射実験に立ち会っていない。3月26日付の『労働新聞』は、1面が正恩氏の経済関連の国内視察で、2面にミサイルの記事が掲載されていた。そのことから、米国を過度に刺激しないよう一応の配慮がされていると推察できる。


また、米国の北朝鮮専門の情報サイト『38ノース』は、同月24日に新浦南造船所一帯を撮影した人工衛星写真を分析した結果、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載用の潜水艦が進水準備を始めていると公表した。この潜水艦は1950年代に旧ソ連で開発された旧型潜水艦「ロミオ級」の改良型とみられる。


「もちろん、核攻撃能力を有することと実際に核攻撃に踏み切ることはまったく別問題です。北朝鮮の目的はあくまで制裁解除と金王朝≠フ存続ですから、核攻撃の応酬に事態を発展させるつもりなど毛頭ないはずです」(同)


国連安保理の北朝鮮制裁委員会は、今回の弾道ミサイル発射を受けて緊急会合を開き、議長国のノルウェーは批判的な声明を発表した。しかし、新たな制裁の実施については中国とロシアが慎重な態度を示し、国連レベルでの制裁強化はまだ見通せない状況だ。


このように中国、ロシアの後ろ盾を得て軍備を増強している朝鮮人民軍は、現在、約130万人の兵員数を擁している。規模的には中国、インド、米国に次ぐ世界第4位だ。


北朝鮮の場合、性別に関係なく徴兵検査を受けなければならないことや、兵役の適用年齢が17歳から49歳までと幅広いこともあって、20人に1人が兵士となる計算だ。人口比から見た兵員数は世界一である。


「朝鮮人民軍に入ることは第1に食える≠アと、第2に兵役終了後は朝鮮労働党員≠ノなれることが最大の利点でしたが、最近は事情が違ってきた。これまでは、いかに早く党員になるかで人生が決まるとまで言われましたが、金正恩体制では兵役を終えても党員になれないことが普通になっています」(北朝鮮ウオッチャー)


兵役を避ける“奥の手”とは…

北朝鮮の場合、朝鮮労働党の党員であるかどうかは、住居や就職、教育など生活全般に大きく影響する。しかし、かつては党員の約90%が兵役を経験していたが、最近では党員全体における兵役経験者は約70%まで減っているという。


「厳しい訓練に耐えなければならない上、給料も安く、さらに党員にもなれないとなれば、兵役を避けようとする若者が増えるのは当然の流れです」(同)


兵役を回避する手段は2つ。まず、身体検査の担当者に賄賂を渡し、不合格にしてもらうことだ。また、賄賂を都合できない者には奥の手がある。


「肝炎や結核の人は最初から兵役を免除されるので、肝機能を異常な状態にするために、醤油を大量に飲むのです」(同)


北朝鮮における兵役の身体基準は、最低身長150センチ、最低体重50キロだが、最近は食料難から、そもそもこの基準に達していない若者が多い。最新兵器に切り替えつつある北朝鮮だが、「仏作って魂入れず」とはまさにこのことだ。


2006年に北朝鮮が核実験を行い、国際社会による制裁が本格化して以降、世界を舞台として制裁強化と制裁逃れのいたちごっこ≠ェ繰り広げられてきた。北朝鮮が「瀬戸際外交」を再開したことで、今後の情勢も動くことだろう。


日米の連携強化はもとより、対北融和策をとる韓国も巻き込んで、対北圧力を強めていかねばならない。経済制裁を回避する手段を徹底的につぶしてこそ、北朝鮮に完全非核化を迫る道が開かれるのだ。


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