アフガン政変にほくそ笑む北朝鮮…“金一族の夢”在韓米軍撤退へ

アフガン政変にほくそ笑む北朝鮮…“金一族の夢”在韓米軍撤退へ

アフガン政変にほくそ笑む北朝鮮…“金一族の夢”在韓米軍撤退への画像

(画像) Es sarawuth / shutterstock

8月21日、北朝鮮の国営『朝鮮中央通信』は、金正恩総書記の意外な行動を報じた。米韓合同軍事演習が行われているさなかの同日、平壌市内を流れる普通江沿いの住宅建設現場を視察したというのだ。



「正恩氏の動静が伝えられるのは7月末以来のことです。米韓による軍事演習を批判していたこともあり、真っ先に軍事施設を訪問すると思いましたが、実際は住宅建設現場でした。人心掌握に腐心しているのがよく分かります」(北朝鮮ウオッチャー)


正恩氏は2012年4月、最高権力者の座に就いたときに「これからは人民を飢えさせない。人民がこれ以上ベルトを締める(?せ細る)ことがないようにする」と大見得を切った。だが、今年6月16日に開催された朝鮮労働党中央委員会総会では「人民の食糧状況が緊張している」と語り、自らの無能ぶりを懺悔している。


北朝鮮の農業生産における不振の原因は明らかで、第一に種子の不足と痩せた土壌問題、そして旧態依然とした生産方式にある。


「正恩氏が農業視察に赴く映像で、幹部たちがまくし立てる正恩氏の言葉を一つも逃すまいと、懸命にメモを取っている姿をよく目にします。でも、正恩氏が農業関係の学科を出ているとか、それに詳しいという話は聞いたことがありません。正恩氏は農業について何を話し、幹部は何をメモしているのでしょうか。まったく成果がないのは確かなところです」(同)


『アジアプレス』(21年5月19日付)には、《深刻な営農資材不足「廃ビニールつぎはぎしてハウスを造れ」と農民を動員》という記事が掲載されていた。要するに、この程度の指導をしているにすぎない。先だっては食糧不足解消のため、小中学生に大ウサギの養殖を奨励したこともある。


いまだ田畑には“人糞”という国

北朝鮮はチッ素、リン酸、カリの3大肥料をまともに生産できず、いまだに人糞で代用しているのが現実だ。17年11月に板門店で韓国に亡命した北朝鮮兵士の腸内からは、大量の寄生虫が発見されている。また、農業政策の遅れを揶揄して、農民の間では「堆肥より劣る国産化学肥料」といわれている。


「死亡説が流れていた折の20年5月1日、正恩氏は最新鋭の順川リン酸肥料工場の竣工式に出席し、健在ぶりをアピールしました。ところが、新型コロナウイルスを恐れて国境を封鎖したおかげで、肥料の生産に必要な機器類が輸入できず、同工場は現在停止中です。中国からの化学肥料も入ってきません。ミサイルを飛ばす技術はあっても、田畑には人糞という国なのです」(北朝鮮に詳しい元大学教授)


北朝鮮は何十年も前から、水害や干ばつに対処しようと努めてきたが、いまだにこれさえも統治≠ナきないでいる。


「今夏の水害が、経済的苦境に追い打ちをかけるのは容易に想像できます。正恩氏が『復旧用の資材を国家の備蓄分から緊急に供出し、中央が財政的、物質的に強力に支援せよ』と命じたことから、党の幹部たちが水害の被災地を訪れ、食糧や資金を届けたと伝えられていますが、いつもそうであるように実際に行われたのかは疑問です」(同)


正恩氏は10月10日の党創建日までに、水害復旧作業を終えるよう指示したようだが、復旧工事がまともに行われないまま、翌年に水害をこうむることを繰り返している。党創建日を前にした9月ごろに、また担当幹部の粛清があるだろう。


8月25日は「先軍節」、9月9日は建国記念日と、党創建日まで国家の重要行事が続くが、豪華な配給や子どもたちへのお菓子などが期待できるはずもない。


冬には食糧の枯渇で大量の餓死者が…

「WFP(国連世界食糧計画)は6月22日、世界43カ国で4100万人が飢饉に陥る恐れがあり、対策には60億ドル(約6600億円)が必要と支援を要請したが、北朝鮮はこの対象外です。というのも食糧や生活物資の不足から、今年3月に国連機関の職員たちが国外脱出してしまい、実態が報告されていないからです」(国際ジャーナリスト)


今年の冬には、食糧の枯渇で大量の餓死者が出ると予想される。


唯一、最近の北朝鮮が成果を示したものといえば、正恩氏の妹である金与正党副部長の恫喝により、韓国が米韓合同軍事演習を骨抜きにしてしまったことだ。


「演習はコンピューターシミュレーションを中心とした指揮所連携の確認などに限定され、野外での機動訓練は行われませんでした。これほど抑制的な内容になったのは、コロナ対策を理由にしていますが、与正氏の『必ず代価を支払うことになる自滅的な行動だ』との下命に、韓国の文在寅政権が従ったからです」(軍事ライター)


また、正恩氏はアフガニスタンの政変に、ほくそ笑んでいるという。タリバンの一連の勝利を目の当たりにして、韓国から在韓米軍さえ撤退すれば、韓国の首都ソウルに無血入城できると確信したからだ。


「金日成主席などは在韓米軍の撤退を望むあまり、ソ連との同盟を解消するふりさえしたことがある。金正日総書記も核保有国としての承認を勝ち得た上で、在韓米軍の撤退を実現させることを段階的な目標としていました。在韓米軍の撤退こそが金三代にわたる家訓≠ネのです」(同)


ただ、それまでに党や軍が存続しているか、怪しい限りだが…。



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