韓国以下! 日本の賃金をどう上げるのか〜森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

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森永卓郎 (C)週刊実話Web

日本の実質賃金は、もう30年も上がっていない。そのため、かつてはG7トップに君臨していた日本の賃金は、いまや韓国にも抜かれてしまった。



そして、賃金の低迷は大きな所得格差をもたらしている。そうした現状認識は、与野党とも共通のようで、いまや賃上げと格差縮小が、経済政策上の大きな課題となっている。問題は、どうやってそれを実現するのかだ。


第一の政策は、最低賃金の引き上げだ。賃金は労使交渉で決まるから、政府は直接介入ができない。唯一、政府が決められる賃金が最低賃金だ。今年度の最低賃金は、全国平均で930円となっている。この金額だと年間2000時間働いても、年収は186万円だから生活は苦しい。野党の一部は最低賃金1500円への引き上げを掲げているが、ドイツでも連立政権を組む予定の3党が、最低賃金を1590円に引き上げることで合意しており、法外な政策とは言えない。


最低賃金の引き上げは、自公政権の下でも緩やかに続けられてきた。財務省も財政負担がないので、反対しない。ただ問題は、急激な最低賃金引き上げが、雇用減を招くことだ。


今年のノーベル経済学賞は、「最低賃金の引き上げは雇用減を招かない」とする実証研究を行ったカード教授らが受賞したが、これはアメリカの話だ。日本の場合、短時間労働者の55%が時給1100円未満に集中していて、最低賃金を急激に引き上げたら、雇用減は避けられない。カード教授の研究でも、「緩やかな最低賃金の引き上げは雇用減を招かない」というのが、正確な表現なのだ。


格差が縮小しないのは国民の意識のせい!?

一方、与党が掲げているのは、賃上げ企業に対する法人税減税だ。ただ、すでに制度は存在しており、一定以上の賃上げと教育訓練費の増額などを行った場合、大企業は給与増加額の最大20%、中小企業は25%が減税される。岸田文雄総理は減税率を高める意向だが、中小零細企業は複雑な手続きについていけず、そもそも賃上げの原資がないので、効果は限定的だ。財務省は、後年度負担を残さないこの制度を許容しているが、大企業だけが利用することで、むしろ格差を拡大させる可能性が高いのだ。


格差縮小の第三の方法は、消費税減税だ。消費税には「逆進性」があり、収入に対する負担率が低所得層ほど大きくなるが、それだけではない。富裕層は生活費の大部分を会社の経費として支出するため、実質的に消費税を負担していない。だから、消費税減税は即座に格差縮小に結びつく。問題は財源だ。現在の消費税収は地方分も含めると27兆円に達する。消費税を撤廃すれば、財政収支がそれだけ悪化する上、翌年以降も継続していく。財務省は絶対に認めないだろう。


第四の格差縮小策は、一律の現金給付を全員に行うベーシックインカム制度の導入だ。例えば1人当たり月額7万円の給付を行えば、貧困の問題も、老後の不安もほとんど解消できる。しかし、その導入には100兆円の財源が必要だ。結局、短期間に格差を縮小させようと思ったら、大規模な財政出動が必要となる。


だが、NNNと読売新聞が10月中旬に行った世論調査では、58%の国民が「国の借金が増えないよう財政再建を優先すべき」と答えている。財務省だけでなく国民の過半数が緊縮財政を支持しているのだから、残念ながら格差は当分縮小しないだろう。



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