「おにぎりは具が少なすぎてほぼご飯」「工事現場で食べているような…」ソウル“丸亀製麺跡地”にできた「そっくり製麺」に行ってみた。

「おにぎりは具が少なすぎてほぼご飯」「工事現場で食べているような…」ソウル“丸亀製麺跡地”にできた「そっくり製麺」に行ってみた。

店へ行く路地

 秋ののどかなある月曜日、久々に明洞を訪れた。明洞は韓国・ソウルの中心地に位置する繁華街。ランドマークである「ロッテデパート」の向かい側にメインストリートに入る入口があり、その右側に路地がある。この路地を30メートルぐらい進むと、中国大使館があり、そのむかい合わせに「あきない(商内)製麺」という和風のうどん屋があった。

 ここは、少し前までは丸亀製麺・明洞店があった場所。今回やってきたのは、その跡地に丸亀製麺とそっくりのうどん屋ができたという噂を聞いたからである。

■「丸亀製麺」→「自家製麺・丸」→「あきない製麺」速すぎる展開

 2012年12月にソウル・弘大店を第1号店として韓国に上陸した丸亀製麺は、安い価格で本場のうどんの味が楽しめる「名物食堂」として韓国の若者から愛されてきた。2014年6月にオープンした明洞店も昼休みになると、いつも近くのサラリーマンやOLで店先に長い列ができるほど人気があったと、筆者は覚えている。

 だが、コロナや不買運動の余波で丸亀製麺が韓国から撤退してからは、丸亀製麺そっくりの「あきない製麺」に生まれ変わってしまった。目の前に出てきた「そっくり製麺」には昔の丸亀製麺のようなにぎやかな雰囲気は全く感じられなかった。

 実は、今年の8月に丸亀製麺が撤退すると、韓国人の同業者が、「自家製麺・丸」と店名だけを変えて 店はそのまま営業を続けていた。だが、この事実が日本のメディアで報じられたことで非難が起こると、急いで名前を「あきない製麺」に変更。そういえば、路地の入り口からよく見えるように、店の屋根の上に勢いよくさしかかっていた赤い旗も消え、どこか寂しい感じの目立たない店に変わっていた。

■お昼ど真ん中に行ってみると…

 筆者が来店したのは正午を少し過ぎた時刻。昼商売の真っ最中のはずなのに、店の前の行列は消え、店内のあちこちの空席が目に入った。4人用テーブルが20個ほどおいてある店内には、空いたテーブルが6~7個もあった。

 店に入ると、入口に設置された「商号変更による案内文」が目に入った。

〈7月1日から丸亀製麺・明洞店より「あきない製麺」としてリニューアルオープン致しました。日本伝統の讃岐うどんのノウハウそのまま、変わらない味や、より良いサービスでお客様のご愛顧に応えます〉

 筆者は、丸亀製麺時代から最も人気のあるメニューの「肉玉ぶっかけうどん」を注文。うどんの上に肉と卵がどんと乗ったがっつりしたメニューだ。お店全体のメニューを見ると、豚骨ベースのうどん屋カレーうどん、おでんうどんなどちょっとボリューミー。日本のうどん屋よりも「韓国ナイズ」されている。

 トッピングバー(天ぷらやおにぎりが並べられているカウンター)から店員の推薦を受け、野菜コロッケやえび天、明太子おにぎりを選び、合計13000ウォン(約1300円)を支払った(余談になるが、韓国ではいわゆる「エビ天」と「エビフライ」を区別しない)。

 席について一口すする。料理の味はだいたいにおいて丸亀製麺に似ているのだが、つゆがもう少ししょっぱく、天ぷらは少し脂っこく、うどんのつなぎも「濃く」なった感じがした。ただ、私自身、本家の丸亀製麺を食べたのは数年前。そのときに食べた味と比べようとすると、どうも自分の舌に自信がない……。

■「以前はよく来ていましたが…」

 そこで、隣のテーブルに座った20代の若い女性2人に勇気を出してそれとなく話しかけてみた。

「ちょっと味が変わったみたいですね」

 すると、2人のうち一人の女性も私の話にうなずいた。

「以前(丸亀製麺の時代)はよく来ていましたが、久しぶりに来てみると、やはり味が少し変わった気がします。うどんはしょっぱいし、おにぎりは具が少なすぎてほぼご飯だけって感じです。サイズも小さくなってますし……」

■テーブル下に落ちたままのティッシュペーパー

 もう一人の女性は、お料理の味はあまり変わってないが、サービスがずいぶんと変わってしまったと話した。

「テーブルがべたべたで、全体的に衛生状態がよくないです。以前は店員さんも親切でお店も清潔だったのですが、店主が変わったせいかあまり綺麗ではないですね」

 実は私も店の衛生状態はすごく気になっていた。基本的に食べ終わった食器を客自らが返却するセルフサービス店ではあるが、客が去ったテーブルの床にはティッシュペーパーが落ちたり、テーブルの上に食べ物がついたりする場合もよくある。

 ところが、私がこの店に留まった40分余りの間、7人ほどの店員たちは誰一人店の中を片付けたり、テーブルを拭いたりしなかった。12時50分頃、私が店を出る時、店内にはほとんど客がいなかったが、それでも店員たちは厨房やカウンターの前に立っているだけで、ホールを見回ろうとはしなかった。

■意外と高評価?ネット口コミサイトを見てみると…

 韓国のポータルサイト「ネイバー」の飲食店評価で、この店の採点は「5点満点で4.53」とかなり高い。ただ、全体的に良い評価とは別に、清潔度と親切さはよく指摘されている。

〈「オープンの準備もできていないのに客を迎える。セルフバーも天かすを用意していなかったし、エアコンをつけてくれと頼んでも知らんぷりされた。すぐ出すといわれた天かすは結局、 食べ終わって店を出るまで出なかった」 ★★★ 〉

〈「味はまあまあだけど、ちょっと汚いんです。テーブルも整理できてないし、薬味入れはべたべたする。店員は一人で仕事しているみたいですが、スタッフがもっと必要です」 ★★★〉

〈「応対も残念だし、店内の清潔さも残念です。まるで工事現場で食事しているような慌ただしさ」 ★★★〉

〈「早く出てくること以外には長所がないですね。店員の一人は不親切で…」 ★★★〉

■この10年で一気に増えた韓国の日本食レストラン

 日本製品不買運動の余波にもかかわらず、日本の食べ物はますます韓国人の生活の中に浸透している。

 韓国での日本料理人気が分かる統計も出されている。「新韓(シンハン)カード」が、自社カード加盟店舗のうち、ソウル市内の飲食業種を相手に分析した「ビッグデータ」によると、ソウル市全体の飲食店店舗は11年末から21年3月の10年間、8.0%も減少したものの、日本食の店はむしろ18.3%増えた。特に、20代や30代の顧客の割合が高い弘大商圏(日本の渋谷のように若者がよく訪れる上、観光地としても有名な弘益大学周辺の商圏)の統計を見ると、韓国料理が8.6%、洋食が30.5%も減少している一方、日本食は35.3%も増加した。

■最近のブームは「板前のおまかせ寿司」

 最近では昔から人気のうどんやラーメン、天丼に加え、「おまかせ寿司」という高級コースが若者たちに大人気だ。板前さんにメニューを選んでもらい、その日のオススメを見繕って出してもらうことを「おまかせ料理」と言い、安いところでも一食5万ウォン(約5000円)ほど、一流店だと数十万ウォンもするという価格帯を鑑みれば、いわば「シェフの特選メニュー」と言ったところだろうか。

 韓国メディアによると、「おまかせ寿司ブームは、自分のためのオーダーメード型サービスと特別な経験を求める消費者の欲求によるもの」と分析する。コロナによる飲食業界の不況の中でも、人気のあるおまかせ寿司専門店は数カ月前から予約ができないほど人気だ。飲食代がいくら高くても、サービスを受けるその瞬間だけは「王様」でいたいという若者たちが増えている。

 一方、いくら安くてうまくてもサービスで消費者を満足させられないと、すぐに廃業に立たされる。韓国小商工人連合会によると、2020年1月の新型コロナ大流行から1年6ヵ月の間で、韓国では45万3000店が廃業した。

 韓国で最も賃貸料が高い明洞は、いまや一軒おきに空室になっていて、ゴーストタウン化してしまった。国土交通部の統計によると、今年の第2四半期の明洞の中小型ビルの空室率は40%を超えている。

 丸亀製麺そっくりの「あきない製麺」がコロナや不況の荒い波の中でなんとか持ちこたえるためには、インテリアではなく、サービスを丸亀レベルで受け継ぐことが必要そうだ。

写真=筆者撮影

(シン・ソンヒ)

関連記事(外部サイト)