「男女が結合したまま…」「ユニットバスと壁の間に覚せい剤が」 ホテル幹部が明かす“夜のヤバい客”

ホテル幹部が明かす"夜のヤバい客" 「男女が結合したまま動けず搬送」など

記事まとめ

  • 「毎日お客様と対峙するホテルという業態は毎日が驚きの連続だった」というホテル幹部
  • 夜のトラブルは男女間のものが多く、裸で部屋を追い出されて助けを求めに来ることも
  • 男女が結合したままどうにも身動きができない状態に陥り、救急車で搬送されたケースも

「男女が結合したまま…」「ユニットバスと壁の間に覚せい剤が」 ホテル幹部が明かす“夜のヤバい客”

「男女が結合したまま…」「ユニットバスと壁の間に覚せい剤が」 ホテル幹部が明かす“夜のヤバい客”

©?iStock.com

 私は以前勤めていた不動産会社で系列のホテル会社に出向していたことがある。経営企画部長という肩書だったが、実際の仕事のほとんどが、日本全国各地にあるホテルからの業務報告、相談事への対応だった。それまでは不動産会社でオフィスビルの開発の仕事ばかりやっていた私にとって、毎日お客様と対峙するホテルという業態は毎日が驚きの連続だった。それはあたかも毎日手元で「人間動物図鑑」を開いているようなそんな錯覚に陥る日々だった。

■朝メールを開くと前夜の業務報告が

 毎朝、出勤してはじめにやるのがパソコンを開くことだ。不動産会社に在籍していたころは、いつも何の気もなしにパソコンを開き、無造作にメールチェックをするのが日常だった。ところがホテル会社での朝、メールチェックをするのは何だか怖いような、楽しいような複雑な気持ちだったことを今でもよく覚えている。全国15のホテルの前夜の業務報告がすべて私のパソコンに集まってくるからだ。

 ホテルは夜が本番の商売だ。なぜなら、当日宿泊するお客様全員が建物内に滞在されているからだ。前夜が順調で何事もおきなければ、私のメールボックスは閑散としている。ところが、どうしたことかほぼ必ずと言ってよいくらい数件のトラブル報告があがってきた。

 夜のトラブルといえば、多くが男女間のトラブルだ。フロント前でいきなり若い男女が口論をはじめ、つかみあいの大喧嘩、などというのはかわいいほうだ。裸のまま部屋から放り出された女性が助けを求めに来る。逆にフル○○の男が部屋から締め出されるなどというケースもあった。男女が結合したままどうにも身動きができない状態に陥り、救急車を呼んで搬送した、などという事件にも遭遇した。

■「落ち着け、何が起こったんだ」「脱糞です!」

 夜の所業のもうひとつはお酒をめぐるトラブルだ。酔客同士のけんかは大抵が他愛のないものなのだが、仲裁に入ったホテル側が逆に両者からからまれるなどということもよくあった。しかし、中にはさすがにホテル側としても我慢できない事件が起こる。

 ある夏の蒸し暑い朝、それはいつものメールではなく、あるホテルの支配人からの直接の電話で知らされた。

「牧野さん、た、たいへんです。」

「どうしたの?」

「6階のフロアが大変なことになってます。」

「落ち着け。何が起こったんだ。」

「そ、その、脱糞です。」

「え? なに? だっぷん?」

「はい、エレベーターホールから廊下、客室まで、ゲロとウンコです。」

「なに〜。どうして?」

「よくわからないのですが、とにかくたいへんなことに。」

■這いながら、よからぬものを塗りたくって

 あわてて電話を切って現場に向かうと、現場はものすごいことになっている。とりあえず、同じフロアのお客様には全員部屋から移っていただき、謝罪する。それにしてもすごい臭気だ。気を取り直してあらためて現場の報告を聞くと、どうやら酒で泥酔した外国人留学生が、おう吐を繰り返したあげくに脱糞の行為に及んだとのこと。おそらくそのままの状態で部屋まで這っていったために、あらゆる箇所によからぬものを塗りたくってしまったとのこと。本人はまったく当夜の記憶がないらしく、まだ気持ちが悪いのかぼそぼそと母国語で何やら話すのだが、とにかく何を言っているのかもわからない状態。

 通常では、多少のおう吐やお漏らし程度はホテル側も清掃コストを請求することはないが、これは事件である。ホールから廊下のカーペット、壁紙は全交換。部屋も同様の処置が必要となった。加えて臭気はもともと気密性の高いホテルという建物では1日では収まらず、そのフロア全体が数日使えない状態となった。留学先の学校にも連絡をとり、さすがに費用については全額賠償を請求する事態となった。若気の至りとはいえ、その所業に唖然となったものだ。

■夜な夜なホテルに現れる肉食系のチョウ

 夜のホテルはお客様のトラブルだけではない。ホテルという建物には夜になると現れるチョウがいることをご存じだろうか。このチョウはなかなか捕まえることが難しいばかりでなく、鮮やかな色の羽を揺るがして、お客様を捕まえてしまう、という肉食系のチョウだ。そのため捕まえるのがなかなかにやっかいなのだ。

 最近のホテルでは、エレベーターに乗る際に客室カードキーをかざさないと行き先階のボタンが押せないようなセキュリティのかかったものが多くなったので、チョウの出現を阻止することがある程度可能になった。それでもお客様と同時にエレベーター内に潜入し、お客様の降りる階で降りてしまえば、完全に侵入を防ぐことは不可能だ。

 ホテル側としては夜中にホテル内を巡回して、怪しいチョウを発見した場合には声をかけるなどして追い払うのだが、彼女たちもさるもの。同宿の人を待っている、だのただ佇んでいるだけだなどと屁理屈だけは立派なものだ。どうしてもお客様第一主義のホテルマンには強く退去を迫ることが難しくなる。

 また、お客様自身が電話やSNSなどでチョウを呼び出して捕獲してしまうこともしばしばおこる。これも宿泊規定上は違反なので、そのようなチョウが部屋に入ることを妨げてもよいのだが、お客様が不機嫌になることを恐れる現場では黙認してしまうことが多い。

 こんなことからホテル従業員は毎晩、捕虫網を片手に夜のチョウを追いかけまわすことになる。

■「お気に入りの部屋」に隠されていたもの

 ホテルの共用部での出来事についてはある程度監視の目が行き届くのだが、部屋は密室なので、中でのやりとりを観察することは不可能だ。このことを利用してホテルの部屋で麻薬の密売が行われたり、拳銃などの武器の受け渡しが行われることがあり、ホテルとしてはその取締りには限界があると言わざるをえない。

 お客様の中には部屋を指定していつでも同じ部屋での宿泊を強く希望する方がいる。お気に入りの部屋、ということでホテル側もなるべくお客様の意向に沿うよう努力をするのだが、時折、別の理由が隠されていることがある。

 あるホテルで、いつも常連のお客様が指定する部屋で空調機の不具合があり、バスルームの天井の点検口から天井裏の配線をチェックする作業を行った時のことだ。点検口を開けて中に手を入れるとなにやらひやっとする金属の重たい感触が。作業員が手にしたものは拳銃だったのだ。どうやらそこに宿泊する常連のお客様が、警察の追及から逃れるために拳銃をホテルのお気に入り(と称する)の部屋の点検口に隠していたのだった。

 同様にベッド交換の際に、ベッドの下から大量の覚せい剤がみつかったこともあった。またユニットバスのバスを取り外したところ壁との間に覚せい剤が埋まっていたなどという奇妙な事件が報告されたこともある。

 ホテル側でも時折、部屋中入念な清掃を施すことが必要だ。デスクの裏、クローゼットの奥、そして点検口の裏などなど。

 ホテルは泊まる人を選ばない。そのためいろいろな顔をもった方々が毎晩、ホテルという建物の中でいろいろな所業に及ぶのだ。私は2年半ほどの短いお付き合いであったが、なんだかずいぶん人生の経験をさせてもらった。そしてつくづく思うのがホテルは人間動物図鑑であることだ。

(牧野 知弘)

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