発見に満ちている人工河川・利根川の“流域” 平時から身につけたい流域の視点と発想

(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)

 先週から関東地方も梅雨に入った。梅雨の存在しない北海道を除いて、日本列島のほぼすべてが梅雨入りしたことになる。

 スーパーマーケットの店頭には、梅酒や梅干しづくりのための梅の実が並んでいる。なるほど、梅雨とは梅の実がなる季節なのだなあと実感する。季節感の乏しくなったといわれる日本だが、湿度の高いこの日々には季節を実感するものが多い。

 梅雨時には水について考えざるをえない。梅雨の時期は、正直いってうっとうしいが、空梅雨(からつゆ)で雨が降らないと逆に困ることになる。もちろん雨が降りすぎても問題だ。梅雨が終わる頃には、毎年ほぼ必ずといっていいほど、日本のどこかで豪雨災害が発生する。

 人間が生きるために水は絶対に不可欠だが、同時に人間存在を脅かす存在でもある。何ごとであれ、過ぎたるは及ばざるがごとし。メリットあればデメリットあり。水を求めて苦労してきたと同時に、水の害を防ぐために知恵を絞り、苦労してきたのが人間の歴史だ。水の惑星である地球に生きる生命体としての歴史である。

 こんなことを考える際にうってつけの本が、つい最近出版された。『水運史から世界の水へ』(徳仁親王、NHK出版、2019)である。徳仁親王(なるひと・しんのう)とは、先月即位されたばかりの天皇陛下の本名。即位前に皇太子時代に出版されたために、私が購入した本には「皇太子殿下のご講演の記録」と書かれているが、徳仁(なるひと)というお名前が変わることはない。普段あまり意識することはないが、上皇様のお名前は明仁(あきひと)である。

 今回は、天皇陛下のご著書をひもときながら、水をめぐるさまざまなことについて考えてみたいと思う。とくに注目したいのは、天皇陛下のもともとの専攻である水運史。ご著書でも取り上げられている江戸時代中期から明治時代中期まで続いた利根川の水運について考えながら、利根川流域を中心に、人間と水との関わりについて総合的に考えてみたい。

「文理融合」をみずから実践されている天皇陛下

『水運史から世界の水へ』は、皇太子時代に行われた8本の講演録で構成されている。

 内容は、学習院大学の学部時代の専門である「日本中世水運史」関連の講演が3本、英国のオックスフォード大学に留学して研究テーマとした「産業革命時代のテムズ河の水運史」関連が2本、「3・11」の東日本大震災の津波災害を機会にあらたに研究を始めた「水災害とその歴史」、そして「水問題」に関する講演が2本。「世界の水問題の現状と課題」は、国連での基調講演をもとにしたもの。もともとの英文による講演も収録されている。

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