コロナで沈没する地方の「誰を生かし、誰を殺すか」 【連載】令和版「この国のかたち」:NFIからの提言Vol.2

コロナで沈没する地方の「誰を生かし、誰を殺すか」 【連載】令和版「この国のかたち」:NFIからの提言Vol.2

営業自粛要請に応じて店を閉めるレストランなど(写真:ロイター/アフロ)

 少子高齢化と人口減少が進むわが国の社会の質を維持し、さらに発展させるためには、データの活用による効率的な社会運営が不可欠だ。一方で、データ活用のリスクにも対応した制度基盤の構築も早急に求められている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、これまでの経済、社会のあり方は大きく変わろうとしている。その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)に集う専門家が、この国のあるべき未来図を論じる。2回目は投資家で作家の山本一郎氏。(JBpress)

 2020年4月8日、安倍政権は、ついに『緊急事態宣言』を発出した。もちろん、我が国の緊急事態宣言は政府が国民に対して何かを強制するものではなく、私権もほとんど奪われない。言わば、政府から国民に対する「強めのお願い」レベルのものである。

 仮に緊急事態宣言が発布され、そこで外出の自粛が政府や都道府県および自治体から呼びかけられたとしても、その要請を破った国民は法を犯して罪に問われ直接罰せられるわけではない。コロナウイルスの流行拡大に伴って、事実上の戒厳令・外出禁止令にまで発展し、逸脱して外出したり、マスクをせずに会合したりしているところを官憲に見咎められれば罰金すら取られる国々に比べて、我が国がいかに人権・私権(財産権)に強く配慮するリベラルな国家であることか、実感してしまうほどである。

 コロナウイルスの流行については、初期に在日中国人に対する嫌がらせなどがあり、問題のある行動は決してゼロとは言えない。ただ、東洋人全体に対する広範な差別が広がった他国事情に比べる限り、我が国の人権状況は他国に対してまずまず誇れるものだとも言えよう。

経済対策とのバーターだった緊急事態宣言

 一方で、緊急事態宣言の発布については、当初4月1日に天皇陛下への上奏をもって3月31日に準備を終える手はずであったはずが、この緊急事態宣言によって国民生活に大きな障害を与え、日本経済の成長に強い悪影響があると危惧した安倍政権内の葛藤があったとされる。結果として、緊急事態宣言が緊急経済対策とのパッケージ扱いとなり、最終的に108兆円という大規模な対策とバーターする形で緊急事態宣言の発令に落着した件については、当連載でも今後詳述したい。

 さらに、安倍政権はこの緊急事態宣言を全国的に5月末まで延長すると発表。感染症対策のための緊急事態宣言と、打撃を受ける経済面への対策が急務であることは言うまでもない。

 経済縮小に対する応急措置は、ある種の泥縄的対応を強いられている。これは、PCR検査の拡大を求められている医療機関の厳しい現実とあまり変わらない。今では当たり前のように求められている「休業補償」も、厳密には必ずしも「自粛要請」に応じた人たちに自動的に支払われるという法的な裏付けはない。経済的に立ち行かない国民がいるのだから、政治がきちんとリーダーシップを発揮して給付金を一時的に出しましょう、という話でしかないのである。

「自粛に応じて店を閉めるのだから、政府や自治体はそれらの企業や個人に対して金品を保証するべきである」という立論は、結局感染症による死から国民を守らなければならない国家が、将来の税収を当てにして、いま苦しんでいる国民にどこまで経済援助するべきかという難題を突き付ける。

「こういう国民が苦しいときのために国家はあるのだから、制度や財政を総動員してでも国民の困窮を救うべき」という経済的な応急措置を求める議論は、困窮する国民にとって正当なものだ。その一方で、気をつけないと、単なる国費による大盤振る舞いに堕する危険すらある。なぜならば、これらの財源は基本として赤字国債の発行で充てられ、これらが日本銀行による引き受けで行われる限りは、どちらにせよ将来世代に対してツケを増やすだけだからである。

 緊急事態宣言と併せて発表された緊急経済対策という応急的措置ですらこのような状態であり、出口戦略について明確なシナリオを描けないまま泥縄的な対策に追われているのは各国も同じである。巷で問われる「感染症による死か、経済困窮による死か」の論争は根深い。アメリカでも、コロナウイルス禍が医療機関に大きな負担をかけ、感染・発症による多くの死者が続出しているなかでなお、一部のアメリカ人が「自由に経済活動を行う自由」を求めてデモを繰り広げている。

 高福祉国家として名高いスウェーデンでは、人口1000万人ほどの小国であるにもかかわらず5月1日現在2679人が亡くなっている。日本の人口規模でみれば、コロナウイルス流行から3カ月足らずで3万人の死者を出したことになるこのスウェーデンのコロナ対策は、積極的な治療を行わず「集団免疫」を確保して社会全体がコロナに罹っても耐えられるようにするという発想に基づいているとされる。しかしながら、コロナウイルスの感染については変異率も大きく一度獲得した免疫が次なるコロナウイルスの流行を抑え込める保証はいまのところない。

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