大企業とベンチャー企業、仕事の“スピード感”の違いはどこから来るのか 組織と個人、両方の観点から考える

大企業とベンチャー企業、仕事の“スピード感”の違いはどこから来るのか 組織と個人、両方の観点から考える

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スタートアップ企業と大手企業を比較する際に、よく出てくる話題の一つが「仕事のスピード感」が違うというものです。

大企業とベンチャー企業では従業員人数が大きく違います。かたや数千人、数万人という社員が働いており、かたや数名から数十名という規模。(※中小企業基本法の定義とは異なりますが、今回のテーマは上記の企業をイメージしています)

「仕事のスピード感」の話は「会社(組織)としてのスピード感」と「個人のスピード感」のどちらかを指す場合がほとんどです。今回はそれぞれを見ていきたいと思います。(文:エックスエージェント株式会社代表 飯盛崇)

膨大なコミュニケーションコストによるスピードロス

規模が違う会社間では当然ながら「組織」「階層」「役職者」の数も大きく異なります。大企業にはいくつもの部署や組織が存在し、その数だけ管理職(マネジャー)が存在します。それらは増えれば増えるほど、コミュニケーションの量や必要な手続きも増えていきます。大企業の会社組織としてのスピード感が遅くなる一つの理由が、この「コミュニケーションコスト」問題です。

もし社長一人しか役職者(管理職)がいなければ、当然決裁者も一人です。生まれたアイディアは稟議なども必要なくあっという間に形にできるでしょう。一方で役職者が複数いた場合はどうでしょうか。稟議書やハンコが何個も必要になり、複数の関係者が内容を見て承認する必要が出てきます。先日も話題になっていた、「ハンコはおじぎをするように押す」だの「ハンコのサイズは上席より大きいものはダメ」など、その会社独自のルールが出てくることもあります。

私が以前在籍していた大企業でも、自分自身の起案が複数の管理職によって精査され、ダメ出しをされることはザラでした。しかしそのダメ出しを複数の管理職を経ることで、よく見ると最初に起案した私の内容に極めて近いものに結局落ち着いた、なんてことも一度や二度ではありません。

「失敗するくらいなら何もしない」事なかれ主義によるスピードロス

大企業がスピード感を損なう組織的な理由としては、失敗をマイナスとして捉える「無難な成功を目指す事なかれ主義」をベースにした文化や評価制度の存在もあります。

ベンチャー企業では、決まったプロダクトや業務プロセスがあるわけではなく、日々試行錯誤です。開発したサービスが売れなければ、すぐに改善しまた新しいものを創り出していかなければいけません。一方で大企業は、「余計なことをして失敗するくらいなら何もしない」というスタンスで仕事をしている人も多々います。

また、大企業では何か実行する際も複数人で担当して責任を分散することがあります。商談や提携話でも、スタートアップ側は1人か2人なのに対して、大企業側は8人もいる。というような事を、私自身が某大企業在籍時は違和感なく実行していましたし、逆にスタートアップ経営者として何度も遭遇しました。大企業のそういった事なかれ主義、他人巻き込み型の責任回避の横行は、当然ながら会社としてのスピード感を損ないます。

大企業にも仕事の処理能力が高い個人はたくさんいる

では、個人の仕事のスピードについてはどうでしょう。正直、これについては解を持っていません。ただ言えるのは、大企業の方で圧倒的仕事の処理能力が高い方、仕事を計画的に的確に遂行していく方は何人も見てきました。

私が属していた大企業でも、それ以外の取引先でも、「この方は本当に優秀な方だな」と感じる方は多かったです。その方たちに共通するのは、自身の哲学・判断軸を持っており、その基準によって仕事の優先順位づけを行い、自ら課題を設定し素早く処理ができる、ということです。

それは単にエクセルやパワーポイントを早く上手に作れる、という類のオペレーティブな話ではなく、課題の発見・設定から解決策の実行までが、とても素早く的確である、というものです。基準に満たなければ損切りも素早く行えます。もちろんベンチャー企業にもそういった方はいらっしゃいますが、個のスピードにおいて大企業の方が劣っているということは、全く無いと思います。

大企業はコミュニケーションコストや組織の慣習などにより組織としてのスピードが遅くなる事はありますが、個々のスピードや能力においては優れた方々がとても多いです。それらの方々がよりパフォーマンスを上げられる仕組みや制度があれば、大企業がまだまだ生産性や業績を向上する事は可能だと思います。オープンイノベーションやスタートアップとの連携、M&A、そしてベンチャー転職や起業などを通じ、今後の日本企業の競争力が上がっていく未来を、筆者は信じています。

【著者プロフィール】飯盛崇

エックスエージェント株式会社 代表取締役。1997年に富士通に入社し営業と人事を経験したのち2005年より株式会社リクルートへ。総合企画部、HR営業、人材育成業務に従事。退職後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科に進み在学中に3社創業。うち株式会社iCAREではCEO、COOを歴任し創業から6年間事業を牽引。現在はスタートアップ・ベンチャー企業特化型の人材紹介会社を経営し、起業支援団体「メンター三田会」の事務局も務める。経営学修士(MBA)。

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