「好きを仕事にする」は間違いなの!? 膨大な研究データを紹介する書籍 『科学的な適職』

「好きを仕事にする」は間違いなの!? 膨大な研究データを紹介する書籍 『科学的な適職』

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「転職に失敗し続け迷走している」「いまの職場が自分に最適なのか疑問」という人に読んでいただきたいのが、『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』(クロスメディア・パブリッシング)だ。

著者の鈴木祐氏は、600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねたというサイエンスライター。本書はその膨大なデータから適職選びに役立つ知見をまとめ、「あなたの幸福が最大化される仕事」を選ぶ手助けをしてくれる。

アマゾン・レビューでは、実際に人生の方針が変わったという転職希望者の声も寄せられており、中田敦彦さんを始め複数のYouTubeでも紹介されるなど、注目度の高い一冊となっている。(文:篠原みつき)

「好きを仕事にした人ほど長続きしない」という結論

本書では、これまで職業を選ぶ際にあたりまえに推奨されてきた、

「1.好きを仕事にする、2.給料の多さで選ぶ、3.業界や職種で選ぶ、4.仕事の楽さで選ぶ、5.性格テストで選ぶ、6.直感で選ぶ、7.適性にあった仕事を求める」

という考え方を、「7つの大罪」として否定するところから始まる。これらのアドバイスは「大半が個人の経験や思考にしか基づいていない」というのだ。例えば、2015年にミシガン州立大学が「好きなことを仕事にする者は本当に幸せか?」という大規模調査をしたところ、

「『好きなことを仕事にするのが幸せだ』と答える傾向の“適合派”よりも、『そんなに仕事は楽しくなくてもいいけど給料は欲しい』と答える傾向の“成長派”のほうが、長いスパンで見ると幸福度・年収・キャリアなどのレベルが高かった」

という(筆者要約)。好きな人ほど、現実とのギャップに苦しむことが多いからだ。オックスフォード大学が行った別の研究では、「好きを仕事にした人ほど長続きしない」という結論も出ている。

「給料の多さ」で選んでも、年収がある程度に達した時点で幸福度の上昇は横ばいになる。どんな専門家でも正確に10年後も好調な業種を予想することはできないため、「業界や職種で選ぶ」もNG。「直感」で選んで成功するためには、「ルールが厳格に決まっている。何度も練習するチャンスがある。フィードバックがすぐに得られる」という3つの条件が必須で、直感よりも合理的な意思決定をした人のほうが圧倒的な成果を収めたという。

「性格テストで選ぶ」についても、エニアグラムなどのテストはタロット占いのようなもので「適職が見つかる保証はどこにもありません」と断じている。それぞれの研究結果の紹介が1〜2ページでまとめられているため、細かく考えると疑問を感じる部分もあるが、これまでの常識や思い込みを覆し、視野を広げるため参考にすべき面は大きい。

様々なバイアスを排除し、『人生の後悔』を限界まで減らすのが目的

しかし、これらを読むと否定ばかりで、転職を考えている人がますます迷走してしまいそうだ。だが本書は、様々なバイアスを排除した上で、

「皆さんの仕事選びにおける意思決定の精度を高め、正しいキャリアを選び取る確率を上げ、『人生の後悔』を限界まで減らすこと」

をゴールにしている。「あなたにはこれが適職」と答えをくれるものではなく、自ら適職を導き出すための知識や方法を提示している。

仕事の幸福度を決めるものを「7つの徳目」としており、要約すると「裁量権や達成感があるか、なすべきことや評価軸がはっきりしているか、自分のモチベーションタイプに合っているか、友人がいるか、世の中に対する貢献度」が鍵となる。仕事そのものよりも、仕事の自由度や人間関係、他者からの評価といったことが幸福度を高めるポイントだ。

「自分のモチベーションタイプ」(攻撃型or防御型)は、本書に掲載の16の質問に答えることで診断できる。「どうやったら自分の目標や希望をかなえられるか、よく想像することがある」などの問いに当てはまる度合いを1〜7で答えて合計する。ちなみに筆者はかなりの「防御型」だった。やる前からほとんどの人が自分のタイプを予測出来そうだが、自分の考え方の再確認や、違うタイプの人がどう考えるのか知ることもできて興味深い。

本書にはこうした、自身の意思決定を定量化する「科学的な適職探しツール」が複数用意されている。「この会社を辞めるべきか、数社あるうちのどこを選ぶか」などの判断材料になる「プロコン分析」や「マトリックス分析」などは簡単ですぐに取り組めるだろう。

ある程度働いた経験がある人に向けた内容が多いため、転職者にお勧めだが、学生でも選択肢に悩むとき応用して使えるだろう。職場環境の改善を目指す経営者にもお勧めだ。人生の岐路で「できるだけ正しい選択肢」を選び、幸福度を上げるヒントとなる本書。課題の整理や自分にとっての幸せを見つめ直す機会にもなり、分析ツールを試すだけでも価値ある一冊となるだろう。

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