中国で大ブレイク!日本に凱旋した元ボクサー俳優・木幡竜が45歳で掴んだ映画初主演のチャンス

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写真:石井隼人

ディーン・フジオカ、大谷亮平……。海外で見出された後、日本でも活躍する"逆輸入俳優"が目立つ昨今。「元ボクサー → 中国でブレイク」という異色の経歴を持つ俳優が、日本映画『生きててよかった』(5月13日公開)で初主演のチャンスを掴んだ。木幡竜、45歳。香港アクションスターのドニー・イェンからも認められた男だ。

世界チャンピオンも輩出している横浜高校ボクシング部を経て、ボクシングWBA・IBF統一バンタム級王者の井上尚弥も名を連ねる大橋ボクシングジムに所属。負けなしのその強さから、チャンピオンベルトも期待された。しかし映画好きが高じて、24歳の若さで突如引退。ゼロから俳優活動を始めた。(取材・文:石井 隼人)

■ 初舞台でも「まるでリングの上に立っているような感覚」

木幡は引退当時の心境をこう振り返る。

「大橋秀行会長には猛反対されました。世界チャンピオンになってからでも遅くはないのではないかと。もちろん僕自身怖かったです。ボクシングの世界にいれば、それなりの知名度もあって認められていましたから。でも自分としてはそのキャリアを投げうってでも俳優としてゼロのところから始めたかった」

14歳からボクシング一筋。演技経験などもちろんない。それでも根拠なき自信と手応えがあった。

「初めて俳優として立った下北沢の舞台も、まるでリングの上に立っているような感覚がありました。それまで拳だったものがセリフに変わったくらいの違いというか。自分の感覚的には、ボクサーから俳優への転向はスムーズ。表現という意味では同じだと感じました。ただ現実はそんなに甘くはない。日本ではなかなか芽が出ず、どこの国のどんな映画でもいいからまずはチャンスを掴むことだと思いました」

ボクシングで鍛えられた本番強さと勝負師としての根性は中国にも響いた。900人規模のオーディションを勝ち抜いて、中国映画『南京!南京!』でアジア進出。映画は中国全土で大ヒットし、木幡にも注目が集まった。アクションスター総出演の『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』でドニー・イェン、アンソニー・ウォンとも共演。中国映画への参加も続々と増えていく。

中国を拠点にしながら、"逆輸入俳優"として日本に凱旋。2021年には、綾野剛主演の連続ドラマ『アバランチ』での悪役ぶりが話題になった。「中国でキャリアを重ねて、今までどんなに大きな中国映画に出ても日本では何も言われなかったのに、『アバランチ』では放送後にもの凄い量の連絡をもらいました。ドニー・イェンと戦ったときは全く反応もなかったのに…」と笑う。

ボクシングの道を絶って早20年が過ぎた。風呂なしアパートから出発し、アルバイトをしながら虎視眈々とチャンスを狙っていた日々。夢を追い続けることができた理由を、木幡はこう分析する。

「大橋会長は周囲に『あいつはプロで一度も負けていないから、ボクシングの世界に戻って来るはずだ』と言っていたそうです。その気持ちもわかります。でも僕は『絶対に俳優として成功してみせる!』と宣言して飛び出したので引くに引けない。それをやってしまったらどんどん逃げ癖がつく。ある意味、戻ることへの恐怖心が原動力としてあったのかもしれません」

最近、嬉しいことがあった。「あいつはきっと戻って来る」と周囲に漏らしていた大橋会長のSNSに初主演映画『生きててよかった』のポスター画像がUPされており、「俺の後輩だ!」とエールが添えられていたという。木幡は「もの凄く嬉しかった」と笑顔を見せつつも、「僕の知名度なんてほとんどない。今もって苦節!」と初心を忘れない。

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映画『生きててよかった』より

初主演映画で演じるのは、彼自身を彷彿とさせるような元ボクサーの楠木創太。ドクターストップで引退したが、闘うことを諦めきれず、アンダーグラウンドな地下格闘技の世界に生きる意味を見出してしまう。木幡自身が企画した渾身の一作だ。

「企画立案をしてGOサインが出るまでに紆余曲折あり、さらにコロナ禍で最後まで撮り切ることができないのではないかという危機もありました。しかし継続を信じる力と忍耐でなんとか乗り越えた」と力を込める。

「この映画はいろんな意味で僕自身の人生が詰まったものになったと思います。スポーツ選手は全員が引退を経験します。引退したボクサーは次に何をやればいいのかわからず、さまよう人間も少なくありません。本当の幸せとは何なのか?僕がこれまでため込んだフラストレーションが大爆発していると思います」

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