学級崩壊「立て直し請負人」に学ぶ「不満だらけの人たち」たちとの関係づくり

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学級崩壊、という言葉がメディアに登場するようになってしばらく経ちます。最近は学校現場でもノウハウが確立され、崩壊したクラスを立て直す「学級崩壊請負人」が誕生したりもしているようです。

先日、実際に「学級崩壊請負人」として、各地の崩壊クラスを転々としている中学校教諭から、そのあたりのリアルな話を聞くことができました。教育現場だけではなく、いろんな場面で役立つ話だと思いますので、ご紹介します。(文:プロ家庭教師・妻鹿潤)

■ 「舐められないこと」

「請負人」の先生によると、学級崩壊したクラスに赴任する場合、「一番最初が一番たいへんだ」ということです。なにせ、こうしたクラスの子どもたちは先生を敵視していて、誰も授業を聞かない・背中を見せると物が飛んでくる・授業中に平気で私語・歩き回るような状況がほとんど。

この場面で、何より大切なのは「舐められないこと」。まずは毅然とした態度で一歩も引かず、「ちゃんと聞け!」「静かにしろ!」と、怒鳴ることもあるそうです。

変にブレたりせずに「教室はちゃんとする場だ」と一貫して示す。そんな空気感を作ることが何よりも大事だと言います。

もちろん、ご想像のとおり、それだけだと子どもたちはついてきません。

時間が許す限り、1人1人と向き合う必要もあります。

重要になってくるのは、クラスのキーパーソン(ボス)的な子どもとの関係性です。

こちらのほうは手始めに「ボス」がどんな性格をしているのか、その取り巻きがどんな子どもたちなのか、情報収集をするのが第一歩。ほとんどのケースで、「ボス」は何かしら大きな不安・不満を持っているので、そこを取り除きにいきます。

実例でいうと、親からDVを受けていたり、無視(ネグレクト)されていたり、兄からいじめられていたり……と不満の根本的な原因が、実は家庭にあることも少なくないそう。

もし、こうした問題にアプローチして状況を少しでも改善できれば、「この先生は只者ではない」「この先生は味方だ」と感じてもらえます。一筋縄ではいかないことですが「引かずに、徹底的に向き合う」ことを続ければ、少しずつ信頼関係が生まれ、次第に心を開いてくれる――というのが、先生の経験談でした。

さまざまな実例を聞いていくと、クラスで暴れる生徒たちも非行を心から楽しんではおらず、不安や不満のはけ口がそれしかないからやっている。そして、その「取り巻き」も積極的に状況を楽しんでいるというより、「一緒にやらないと自分がターゲットになるかも」といった、後ろ向きな気持ちで加担しているというケースが少なくない、という印象を受けました。

それゆえ、ボス的な子どもに信頼してもらえれば、その取り巻きも自然と先生を攻撃しなくなるとのことです。

ただ、それで学級崩壊が止まっても「一件落着」とはなりません。学校教育のそもそもの目的は、生徒が将来生きていくための学力を身に付けてもらうことだからです。

学級崩壊していたクラスの生徒は、概して学力が低く理解度のバラツキも多くなっています。本来なら、一人ひとりに合わせた丁寧な授業をするのが理想です。しかし、1クラスに40人前後の生徒がいる中、そんなことは不可能です。では、どのレベルに的を絞った授業をすべきなのか?

その答えは、「勉強が得意な生徒たち」です。

まずは、そういう生徒たちに「わかりやすい」「面白い」と思ってもらい、味方になってもらうことが大事だそうです。ポイントは同時に、生徒が「お互いに教えあう」体制も作ること。そうすれば、賢い生徒たちがみんなを引き上げる形で、波及的にどんどん学力が向上していく、とのことでした。

そして、クラス全体の学力が上がってくると、子供たちも自然と自信がつき、「将来や未来など、先のこと」を考えるようになります。これは実際、家庭教師や塾の現場でも感じることです。

成績中下位の子どもは、夢や目標をなかなか口にしません。ところが、成績がよくなってくると、とたんに「実は●●高校、●●大学に行きたい」とか「本当は●●になりたい」と話してくれるようになります。子どもたち自身、「どうせ無理だ」とか「言っても笑われる」と尻込みしてしまっているのでしょう。

前向きな「将来の夢」を持てば、そこに向けて勉強をする意味も自然と出てきます。進路指導で教師のすべきことは「夢」にたどり着くまでの現実的な道筋(目標)を示して、「勉強の必要性」を理解してもらうことです。

たとえば「君のその夢なら、教育学部がある●●大学に行こう」、「看護師や薬剤師になりたいなら、この専門学校とか大学が良いよ」など、具体的な目標に落とし込みます。

そして、さらに具体的に「●●大学に入るなら、学校の成績をどこまで上げればいいか」「そのためにどんな勉強をすれば良いか」もキッチリ明確にします。

夢があっても道筋が見えないと「もういいや」と諦める子どもは少なくありません。その子が「やってみようかな」と前向きになったタイミングで、「そうなるための道筋」と「今すべきこと」を具体的に、明確に示してあげることがとても重要なのです。

今回は学級崩壊したクラスをどう立て直すか、「請負人」に聞いたコツを紹介しました。「周囲に舐められず、毅然と対応」「キーパーソンとの関係を築く」「具体的な目標を立てて、そこに至る道筋をイメージ」というような点は、学校だけでなく社会に出てからも応用可能だと思います。参考にしてみてください。

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近影

【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアアドバイザー・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40〜50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアアドバイザーとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。

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