「お金さえ払えばクビにできるようになる」 連合や弁護士らが「解雇の金銭解決制度」の危険性を指摘

「お金さえ払えばクビにできるようになる」 連合や弁護士らが「解雇の金銭解決制度」の危険性を指摘

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厚生労働省に設置された「労働紛争解決システムの検討会」は今年5月、「解雇の金銭解決制度」の導入を提案する報告書を提出した。同制度は、解雇が無効だと裁判所に認定された場合でも、解決金を支払えば従業員を解雇できるようになる制度だ。

連合は7月20日、同制度についての記者勉強会を開催し、「不当解雇が蔓延する恐れがある」と反対を表明した。労働問題に詳しい嶋ア量弁護士も登壇し、「この制度がなければ労働者は金銭の補償を受けられない、というのは誤解だ」と語った。

「労働者が受け取れる金額は今よりも少なくなる」

同制度が導入されれば、不当解雇が増える恐れがあるという批判をかわすため、現在は労働者が希望しなければ制度を利用できないような制度設計になっている。しかし連合・総合労働局長の村上陽子さんは、「いずれ経営者側からも使えるようになる恐れがある」と指摘する。

「以前は、経営者が望めば、解決金を払って解雇できるようにする制度が目指されていました。今回は労働者側だけが制度を利用できるようにするという提案がなされています。しかしいずれは使用者側からも利用できるように制度が拡大されかねません。そうなれば『カネさえ払えばクビにできる』という風潮が生まれてしまいます」

連合は解決金に上限を求めるという提案にも反対している。現在は、裁判で解雇が無効だと認められた場合、解雇を言い渡したときから裁判終了までの給料を遡って支払う必要がある。これを「バックペイ」と呼ぶ。

「もし解決金に上限が設けられると、裁判が長引いても、バックペイが増えないことから、企業が裁判を長引かせて労働者を諦めさせるように行動する危険も出てきます」

また嶋ア弁護士は、「労働者が手にできる金額の水準は下がる」と指摘する。

「ケースバイケースですが、現状ではバックペイが5年分を超えることもありますし、10年分を超えたケースもありました。しかし経済同友会は、金銭補償を『賃金の半年分から1年半分の範囲内』に収めようと提案しています。もし1年半といった上限を設定されれば、労働者が手にできる金額の水準が下がる可能性が高いです」

「経済界は『労働者救済』と言うなら、そもそも解雇しないでほしい」

嶋ア弁護士は、「『金銭解決制度』は労働者のためになる」というのは誤解だと語った。

「現在でも解雇をめぐる紛争の96%は金銭で解決されています。(※)多くの人はすでに金銭を手にできているわけです。この『解決金制度』は不必要な仕組みです」

労働者に必要なのは、むしろ裁判費用の補助拡充や解雇予告手当の拡充だ。しかし経営者は金銭解雇制度を切実に欲しているという。

「経済界は、解雇トラブル解決の『金銭的・時間的予見可能性』を高めたいんです。上限が設定されれば、解雇にあたって補償金をどの程度払えばよいのか予測できるようになりますからね。そうした本音を伏せて、労働者にメリットがあると宣伝するのは卑怯ではないでしょうか。労働者を救済したいなら、そもそも不当な解雇をしないでほしい」

「解雇の金銭解決制度」の検討が始まったのは、2003年の労働基準法改正時だ。2007年の労働契約法制定時にも議題に上ったが、導入には至らなかった。2015年には、厚生労働省内に検討会が発足(「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」)。全20回の検討会を経て、今年5月29日に報告書を提出した。

同報告書では、どのような制度を導入するのかの明確な結論は出ていない。例えば、裁判を起こさなければ使えない制度にするのか、裁判外でも使える制度にするのかということすら決まっていないのだ。しかし経済界が同制度を導入したがっているのは明白だ。連合は、同制度への反対を続け、世論喚起を図っていくという。

(※)独立行政法人労働政策研究・研修機構が2015年に実施した調査による

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