「働き方改革はウソっぱち」 常見陽平と海老原嗣生が雇用をめぐる議論に物申す

「働き方改革はウソっぱち」 常見陽平と海老原嗣生が雇用をめぐる議論に物申す

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「働き方改革」が企業で進められる中、トークイベント「雇用の常識 本当に見える嘘メッタ斬りビアガーデン」が7月31日、下北沢B&Bで開催された。『雇用の常識「本当に見えるウソ」』などの著作を持つ「雇用のカリスマ」海老原嗣生さんと、自称「若き老害」で、千葉商科大学専任講師の常見陽平さんが登壇。「働き方改革」をめぐる「ウソっぱち」の議論を一刀両断にした。

「通年採用をしても、内定を獲得できなかった学生が来るだけ」

日本では、新規学卒者を対象に限られた時期に採用選考を行い、卒業と同時に入社させる、いわゆる「新卒一括採用」が一般的だ。若年失業率を低く抑えていると評価される一方、新卒での就職機会を逃すとその後のキャリア形成で不利になるという批判も根強い。先日も法制大学の児美川孝一郎教授が、朝日新聞紙面で「再チャレンジしにくい社会、リスクを取らない、取れない社会を生み出している」と批判していた。

海老原さんによると、新卒一括採用は1990年代初め頃から批判され続けている。しかし常見さんは、近年になってむしろ新卒一括採用が強固になってきたと指摘する。

「1990年代後半〜2000年代前半には綻びが出ていて、経団連の加盟企業でも実施する企業が8割を切っていた。しかしリーマンショック以降はむしろ増加傾向にある」

また海老原さんは、新卒一括採用を批判する人は、こうした制度のない欧米の状況が理解できていないのではないかと指摘する。

「多くの日本人は、欧米を誤解している。新卒時点にこだわらない、という言葉を曲解して、既卒者でもいつでも採用してもらえると考えているのだ。現実は全く異なる。基本、超エリートかエンジニア以外は、"新卒など採用しない"のだ。普通の人は、中途採用の求人に社会人と横並びで応募するしかない」

ただ、新卒一括採用を見直そうと中途採用に力を入れたり、通年採用に切り替えたりする企業も一定数存在する。日用品大手のユニリーバ・ジャパンも、大学1〜2年生で内定を取得できるような採用制度を導入した。大学1年生から既卒3年目までの大卒者が通年で応募することができ、内定獲得から入社までは最長で2年間の猶予が与えられる。

常見さんは、「こうした柔軟な制度の背景には、人材獲得競争がある」と分析する。

「新卒採用の要件緩和は、学生に対して優しくしようということではない。採用に苦戦して実施している部分もあるし、PRやIR目的でやっている面もある。『働き方改革』も同じだ」

海老原さんもこうした新しい採用制度には懐疑的だ。

「早期採用は、GAPやワークスアプリケーション、ユニクロなどがもうずいぶん前から実施している。しかし早期に内定を獲得するようなやる気のある優秀な学生は、いざ本番で、結局総合商社や広告代理店、グローバルメーカーなどに行ってしまう。内定を出しても、誰も来てくれないということが起こる」

通年採用についても、「4〜5月に内定を獲得できなかった学生が8〜9月に来るだけで、企業からすれば優秀な学生の採用にはつながらない」ため、結局は上手くいかないという。

「何より、マイクロソフトはじめとした外資大手がみな、それをやらなくなった。合理性を重視する外資大手が、結局は新卒採用で経団連大手に先んじて大学3年生の後半に先だし"一括採用"している状態を、冷静に考えてみてください」

ただ、そもそも「新卒偏重」は一部の大手企業に限った話だとも指摘する。

「日本の入職傾向を見れば、新卒より中途の方が圧倒的に多い。雇用動向調査で見れば、中途は新卒の3倍以上の採用数となっている。人材ビジネス市場でも、中途正社員は新卒採用の約5倍、これに非正規雇用や派遣まで混ぜると、既卒市場はとてつもなく大きいので、それは忘れずに。新卒偏重というのは、人気のある超大手限定の話なのです」

「高度プロフェッショナル制度は日本型"無限定雇用"を取り締まる初めての法律になる」

今秋の労働基準法改正に向けて話題になっているのが「高度プロフェッショナル制度」だ。同制度は、年収1075万円以上の為替・証券ディーラーやアナリストら専門職を労働時間の規制や残業代の支払い対象からはずす、というもの。ただ、野党からは「残業代ゼロ」と批判されている。

しかし海老原さんは、「ホワイトカラーエグゼンプションや高度プロフェッショナル制度は、日本型雇用を大きく変える可能性を持っている」と指摘する。

「日本型雇用の特徴として、人事権が強くて、職務範囲が無限定であり、その代わりに雇用が保証されているということが挙げられる。人事権が強い分、職務は限定されないから、ある仕事がなくなっても、その仕事を担っていた人を解雇せずに、配置転換で対応しなければならない、というトレードオフが起きるのだ。『高プロ』は、そうした日本型雇用を壊す一穴になる可能性がある」

そのため、「残業代を支払わないというだけでなく、働かせすぎない、職務転換や勤務地変更はできないといった制限が三位一体で揃う」という条件つきで、高プロを肯定しているという。

「現在、日本型"無限定雇用"を取り締まる法律はありません。それが初の"日本型取締り法"となる。けっこうこの一穴は大きいです。たとえば、パートタイム均等法の中に、日本型総合職のことを初めて規定する文言が入った。それ以来、その部分は"日本型労働"を公的に示す条文として活用されいてる。要は、一穴を開けて、それを引き合いに崩していく、というときの最初の一手になりうると思っています」

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