「異世界スマホ」が"虚無アニメ"だったワケ 恋愛描写=虚無パートが中身のない冒険譚をさらに上書き

「異世界スマホ」が"虚無アニメ"だったワケ 恋愛描写=虚無パートが中身のない冒険譚をさらに上書き

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2017年の夏期アニメが9月末で大方の放送を終えた。中でも、"虚無アニメ"として衝撃が広がっていたのが「異世界はスマートフォンともに」(異世界スマホ)だ。小説投稿サイト「小説家になろう」(以下:なろう)に投稿された小説をアニメ化したものだが、そのあまりの内容のなさが話題を集めていた。(文:河嶌太郎)

ヤマもないしオチもないが、あらすじを見ているかのような軽快さ

この作品は、神様の手違いから男子高校生の主人公が死んでしまい、異世界に送り込まれるところから始まる。この設定は「異世界転生(転移)」と呼ばれ、「なろう」に投稿される小説の代表的テンプレートとされるものだ。さらに、手違いで主人公が死んでしまったお詫びとして、主人公の能力が大幅に底上げされ、生前使っていたスマートフォンが異世界でも使えるという特典までついている。

神様の力添えを得た主人公は、異世界でいきなり魔法が全属性使え、お金や屋敷といった財産にもすんなりと恵まれる。仲間にも恵まれるが、主人公以外全員女性で、しかも主人公に好感を抱くハーレム展開になっている。

第1話の放送直後からこうした主人公のご都合主義的展開が目立ち、かつあまりに物語がサクサク進んでいくことから、「ヤマもないしオチもない」という声があがるようになった。だが、そういう声と裏腹に、まるであらすじを見ているかのように、次々に舞台が移り変わっていく軽快さもあり、ニコニコ動画など動画視聴サイトのランキングでは常に上位に位置していた。「中身がない」にもかかわらず、ついつい見てしまう人が少なくなかったようだ。

言い換えれば、世界各地を旅して周り、活躍していくストーリーラインで何とか視聴者を引き寄せているということでもある。乗り物に例えれば、登場人物の掘り下げといった物語に深みを出す「揚力」がほとんどない飛行機をエンジンの力任せで何とか飛ばせているようなものだ(もっともそれはミサイルなのではないかという言い方もできるが)。肝心の出力がなくなってしまえば、そのまま失速してしまう。

11話で軽快な物語展開が停滞……。 しかし人物像や恋愛描写の掘り下げも行われず

これが現実のものとなってしまったのが、11話だった。それまで主人公達は世界各地を旅して周り、各地の問題を解決したり仲間を増やしたりと順風満帆な活躍をしていた。ところが、11話では急にそういった動きが停滞する。一度行ったところならどこでもワープできる主人公の魔法も相まって、一つの話の中で舞台が多く切り替わるのも爽快感の一つであった。だが、この11話では砂浜と空に浮かぶ古代遺跡の2つしか登場しなかった。まさに、風がやんでしまったというところだろう。

場面転換による動きの数が少なくなる分、1話24分という尺は会話など人物の掘り下げにあてがわれることになる。先の飛行機の例えで言えば、機体にちゃんと揚力があり、エンジンが弱まっても滑空できるかという部分だ。

物語の流れをもう少し整理したい。飛行機のエンジンにあたる部分、これをメインプロットとしよう。これは、主人公が世界各地で活躍して回るというストーリーラインにあたる。中には将棋の話が登場するなど、そもそも筋になっているのかと思う部分もないわけではないが、一応この異世界には古代文明が存在していたという伏線は随所に張られていた。

この伏線が回収されたのが11話だった。古代に作られた人形ロボットのキャラクターが登場し、この世界には高度な古代文明が存在し、その遺跡が世界各地の空に浮かんでいることが明示され、ここで一つの線が収束する。そしてその場所は主人公の持つスマホをもってしても特定できず探すしかないことから、ようやく物語の目的が示されるアツい回になる……はずだった。

対するサブプロット、飛行機の揚力にあたる部分では主人公のハーレム的恋愛模様、すなわち主人公は誰と結婚するのかという流れがあった。11話前半でそこまでの場面転換が収まったことで、後半はこの「主人公は誰が好きなのか」という部分に急遽スポットが当たる格好となった。だが、ここまでの物語で人物像を深く描いてこなかったツケがここで露呈してしまう。主人公が恋愛にあまり関心がないのはともかく、主人公に恋する女性達の心情をここまできちんと深掘りしてこなかったがために、視聴者にとって恋愛描写が虚無感の塊にしか機能しなかったのだ。言わば、恋愛描写="虚無パート"となってしまった。

さらに最終話となる12話では4人のヒロイン全員と婚約する形で描かれ、物語が終わっている。中身も動きもない恋愛模様を数十分も突きつけられたことで、「異世界スマホ」は"虚無アニメ"としての地位と名誉を不動のものにしてしまったのだ。

古代遺跡の設定が判明し、もっと広い世界を旅するのか。こう胸を躍らせた視聴者は少なくないはずだ。それがここまで中心に描いてきたメインプロットの部分だからだ。だが、どういうわけか「異世界スマホ」は11話でメインプロットとサブプロットが逆転し、そのまま物語を終えてしまった。冒険譚が"虚無パート"に上書きされてしまった形だ。

このままでは「異世界スマホ」は"虚無アニメ"として未来永劫のものとなってしまう。果たして、冒険活劇を主題にした2期はあるのだろうか。

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