DeNA新社長は総務省出身の岡村信悟氏 南場会長が7年越しで口説き落とした(有森隆)

DeNA新社長は総務省出身の岡村信悟氏 南場会長が7年越しで口説き落とした(有森隆)

新社長の岡村信悟氏(C)共同通信社

【企業深層研究】DeNA(下)

 ディー・エヌ・エー(DeNA)は4月1日、社長が交代した。最高執行責任者(COO)の岡村信悟取締役(51)が社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格。守安功社長(47)は退任し、6月の株主総会後に取締役からも退く。創業者の南場智子は代表権のある会長を続投するが取締役会議長に重心を移す。

■7年かけて口説き落とした

 社長交代は10年ぶり。岡村は東京大学大学院人文科学研究科東洋史学専攻修士課程修了後、1995年、郵政省(現・総務省)に入省。当時、大学院を出て民間企業に勤めるのは難しかった。郵便局でアルバイトしたこともあったし、国家公務員一種試験に合格したので郵政省に入った。

 2015年、総務省情報流通行政局郵政行政部企画課企画官になる。16年、南場智子に誘われてDeNAに入社した。南場は7年かけて岡村を口説き落とした。

 DeNAは横浜スタジアムを含む横浜公園一帯を野球好きでなくても楽しめる「コミュニティボールパーク化構想」を進めてきた。16年10月、岡村は横浜DeNAベイスターズ社長に就任。ベイスターズは本拠地の横浜スタジアム(ハマスタ)に対して友好的TOBを実施し、連結子会社に組み込んだ。岡村はハマスタの会長を兼務した。

 17年、関内地区にまで拡大した「横浜スポーツタウン構想」を打ち出した。この実現のためには官民連携が不可欠だ。南場は規制する側にいた岡村をヘッドハンティングして都市空間づくりのキーマンに据えたのである。岡村は19年6月、DeNA本体の取締役兼COOに就いた。

「首相官邸から地方自治体、ケーブルテレビの業界団体への出向までさまざまな形で働き、常に学び直し、多くの方の力を借りながら仕事をしてきた。人の力を引き出すことに最大の関心がある」

 岡村はDeNAの社長就任会見でこう語った。

 岡村は「数学が苦手で文学部に進んだ」が、入れ替わりに社長を退任する守安功は数学が大の得意である。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修了後、98年、日本オラクルに入った。

「面白い会社を見つけた。遊びに行こうぜ」。99年秋、オラクルの同期に誘われ、守安は同僚5人と渋谷の外れの小さなビルの一室を訪ねた。質素なオフィスにいたのは、たった5人の社員だった。

 ここは、南場智子が半年前に立ち上げたDeNAの事務所だった。「エンジニアはサービス設計にも関わるべきですよ」。近くのそば屋で守安が持論をぶつと南場は「その通り」とうなずく。

 日本オラクルから6人の若者が一斉に脱藩し、システムエンジニアとして入社した彼ら6人衆が「モバゲー」を開発し、DeNAの成長の原動力となった。

 南場は11年、後任社長に守安を指名した。17年、キュレーションメディア(まとめサイト)事業で画像74万件の著作権侵害事件が起き、急きょ、創業者の南場が代表取締役に復帰。体制を立て直した。

 20年3月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が491億円の赤字(19年同期は127億円の黒字)に転落した。ゲームソフトでヒット作が出ず、16年に解散した米子会社ののれん代やソフトの開発費など511億円の減損損失を計上したのが痛かった。

 20年4〜12月期は売上高に当たる売上収益は前年同期比13%増の1029億円、最終損益は219億円の黒字(前年同期は501億円の赤字)に転換した。横浜DeNAベイスターズのスポーツ事業はコロナ禍で無観客や入場数制限で観客動員数が大きく落ち込み赤字になったが、主力のゲーム事業は巣ごもり特需で大幅な増収増益だった。

 1年で業績を立て直し、「大胆な人事を行えるようになったことも含め、社長交代のタイミングを迎えた」(DeNAの関係者)。

 理系から文系に社長のバトンは引き継がれた。J2に昇格した「SC相模原」の株式19%を取得して経営に参画することになった。取締役2人と社員数人を送り込み、トップスポンサーとして協賛する。2月25日、Jリーグ理事会で承認を得た。サッカーがプロ野球、プロバスケットボール(Bリーグ1部のDeNA川崎ブレイブサンダース)に次ぐ大きな鉱脈に育つかどうかだ。SC相模原は大規模スタジアムの建設が飛躍へのステップになるだろう。

 SC相模原は今シーズン、FC町田ゼルビアと6年ぶりに対戦する。ゼルビアのオーナーはサイバーエージェント社長の藤田晋だ。藤田はライバルのIT企業、DeNAのJリーグ参入を受けて、「負けられないヤツが出現した」とツイッターに投稿した。

 ゲームでも大ヒットが欲しいところである。=敬称略

(有森隆/ジャーナリスト)

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