日本政策投資銀行はタガが外れたのか?「ワタミ」の実質メインバンクに(小林佳樹)

日本政策投資銀行はタガが外れたのか?「ワタミ」の実質メインバンクに(小林佳樹)

ワタミが展開する「三代目鳥メロ」/(C)日刊ゲンダイ

【プロはこう見る 経済ニュースの核心】

「これは本来、日本政策金融公庫の案件なのではないでしょうか。日本政策投資銀行には飲食・宿泊事業の審査ノウハウがあるとは思えないんですが……」

 政府系金融機関OBがこう心配するのは、日本政策投資銀行が居酒屋最大手のワタミに対して決めた劣後ローンなど100億円規模の資金供与だ。劣後ローンは、通常のローンよりも返済順位が低く、企業の資本を補う効果がある。半面、銀行側から見ればリスク度の高い融資となる。「政投銀はワタミの実質的なメインバンクになったようなものだ」(メガバンク幹部)と言っていい。

 政投銀は官邸の意向を受けて3月末からコロナ禍で特に深刻な影響を受けている資本金10億円以上の飲食・宿泊などの事業者向け金融支援策を開始した。劣後ローンの供与はその中心となる施策で、金利は当初の3年間を民間金融機関よりも低い年1%に設定し、4年目以降も最大同3%に抑える。

「民間金融機関が提供する劣後ローンは通常、年4〜5%の金利であることから、まさに破格な大盤振る舞いだ」(前出の幹部)

■民間金融機関との協調融資原則

 注目すべきは、この支援策に合わせて、政投銀の基本とされてきた「民間金融機関との協調融資原則」の適用が停止されたこと。「政投銀は今後、民間の金融機関が敬遠するリスクの高い案件についても単独で融資できるようになる。政府系金融機関としてのタガが外れたようなもの」(前出の幹部)と危惧されている。飲食・宿泊などの甚大な影響を受ける事業者には従来の「民業圧迫回避」の原則を棚上げして、政府系金融機関単独で資金を流し込もうとしているわけだ。

 さらに、「今年1月に従来の縦割りで分けた営業部隊とは別に、業種をまたいで提案する渡辺一社長直轄の新組織を立ち上げ、企業の相談に幅広に対応している」(政投銀関係者)という。

 また、政投銀は3月末に飲食・宿泊業向けの支援ファンドを立ち上げ、中堅・大企業が発行する優先株を引き受ける。優先株は議決権がないかわりに配当が高い株式だ。企業にとって調達コストは高いが、経営の自由度は保たれる。コロナ禍を前に、まさに何でもありの世界に突入し始めている。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

関連記事(外部サイト)

×