ネットベンチャーの旗手逮捕 生き方変えられず転落の道へ

ネットベンチャーの旗手逮捕 生き方変えられず転落の道へ

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「ネットベンチャーの旗手」の転落――。警視庁組織犯罪対策4課が5月8日、破産手続き中の室内装飾品販売会社「ラポール」の決算を粉飾、融資金をだまし取ったという容疑で逮捕した黒木正博容疑者(53)を、こう紹介したマスメディアは少なくなかった。

 黒木容疑者が会長を務めていた音楽配信会社「リキッドオーディオ・ジャパン」は2000年1月、東証マザーズ上場記念パーティーを都内のホテルで開き、小室哲哉、つんく♂、浜崎あゆみ、SPEEDらをゲストに迎えて壇上に立った。この頃が絶頂である。

 だが、当時から黒木容疑者とアングラ経済との関係は深かった。筆者と黒木容疑者との関係はその頃に始まっているが、きっかけは山口組系大物仕事師の紹介で、パーティーから9カ月後に事件化する、右腕の社長が引き起こした監禁・恐喝事件の相談だった。

 ソフトな語り口と明晰な頭脳。慶応の学生時代から起業していただけに事業経験は豊富で、人脈もアイデアも持ち合わせており、何より「ジジ殺し」で年上に可愛がられた。

 その資金調達力と経営能力で、“正業”に軌道修正すればいいのに、監禁事件後にリキッド社が凋落し、黒木容疑者は“ワケあり”の企業や土地に、暴力団系のホットマネーを提供する仕事師となる。

 そういう意味で、ネットバブルがピークだった00年から今日まで、「表と裏」の橋渡しをするグレーゾーンの人、暴力団排除条例でいう「共生者」だった。ただ、当時と今で大きく違うのは、人も企業もコンプライアンス(法令順守)重視を余儀なくされること。

 黒木容疑者の活躍の場は次第に減った。マネーゲームに利用される「ハコ」と呼ばれる業績不振企業、都内一等地にありながら権利関係が複雑でなかなか地上げが進まない土地など、特定の案件で事件屋が競うようになり、黒木容疑者はリスクを恐れずに参戦、その名を聞くことが多かった。

 コンプラ重視の世相によって、反社の市場規模はネットバブルの10分の1、その前の1980年代後半のバブル時代の100分の1となった印象である。ホットマネーの供給先である暴力団資金が、暴排条例以降の強力な締め付けで細った。

 それだけに暴力団及びその系統の金融業者にとって黒木容疑者は、「フロント」として得難い存在。黒木容疑者もそれ以外の生き方はできなくなっており、塀の上を歩くのを承知で、うまくいった時の快楽が忘れられずに取り組んだ。

 今回、粉飾決算で手にしたのは二十数億円。逮捕されなければ、笑いが止まらない“仕事”である。結果は失敗だったが、それが、時代が変わっても生き方を変えられなかった男の末路、というしかない。

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