HISが上場以来初の上期赤字…人件費圧縮で生き残りかける

HISが上場以来初の上期赤字…人件費圧縮で生き残りかける

海外旅行需要は激減(成田空港)/(C)日刊ゲンダイ

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 新型コロナウイルス禍が旅行関連ビジネスに与える厄災の大きさを改めて見せつけた格好だ。エイチ・アイ・エス(HIS)は先週、今年3月時点で売上高7750億円、営業利益17・0億円としていた2020年10月期業績予想を取り下げると発表した。8月1日付で実施する計画だった持ち株会社体制への移行も来年11月に先送り。当面はコスト削減など収益基盤の立て直しに専念する。

 同時に発表した上期(19年11月〜20年4月)決算は最終損益が34億円の赤字(前年同期は49億円の黒字)に転落した。上期赤字は上場以来、初めて。新型コロナ禍で渡航制限や外出自粛などが世界中で広がり、3月下旬以降「得意」の海外ツアーがほとんど中止に追い込まれたためだ。国内旅行取扱高も4月は前年同月比95・7%減。訪日旅行も同99・8%のマイナスと「ほぼ壊滅状態」(関係者)に陥った。

 新規感染者数は世界的にはいまだ増え続けており、米国などでは第2波の襲来も取り沙汰されている状況。このため下期以降の需要回復も「望み薄になった」(同)とみて、通期の業績予想を「未定」へと「事実上、下方修正」(市場関係者)する。

■低採算店80〜90を閉鎖

 実施するコスト削減策は人件費圧縮が中心だ。一般社員の夏季賞与を見送るほか、役員報酬をカット。来春の新卒採用も取りやめる。また広告宣伝費の抑制や「(営業店などの)家賃の減額交渉も進める」(幹部)。店舗自体も国内外合わせて527店のうち向こう1年以内に低採算店80〜90店を閉鎖する方針だ。

 HISの4月末時点の現預金は1243億円。旅行の前受け金の返金を余儀なくされたこともあり、この半年間で948億円目減りした。足元の資金繰りに懸念は生じていないものの、コロナ禍の長期化に備えて新たな借り入れも検討する。すでに三井住友銀行など3行との間で330億円のコミットメントラインを設定したとしている。

 HISは6月下旬に西新宿から今春竣工した虎ノ門の新ビル「神谷町トラストタワー」に本社を移転させたばかり。コロナ禍によってその出はなを大きくくじかれる形となる。

(重道武司/経済ジャーナリスト)

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