
日本貨物鉄道に株式上場の野望 「レールゲート」全国展開が成長投資の目玉か
2021年01月14日 17時06分 日刊ゲンダイDIGITAL
2021年01月14日 17時06分 日刊ゲンダイDIGITAL
2021年01月14日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITAL
JR貨物の真貝康一社長(C)共同通信社
将来の株式上場を“野望”に掲げる日本貨物鉄道(JR貨物)が事業基盤強化に向けて積極投資に乗りだす。
大型物流施設の建設や老朽設備の更新などに、2021年度からの10年間で総額4020億円を投資。19年度までの過去10年間と比べて倍増させる方針だ。
4020億円のうち2250億円は老朽化した施設や機材の維持・更新に充当。残り1770億円を新規事業など成長投資に振り向ける。
成長投資の目玉となりそうなのが「レールゲート」の全国展開だ。貨物駅構内で複数の企業がテナントとして入居できる物流施設で、今年2月に東京貨物ターミナル駅に第1号物件が竣工。22年にはその隣接地と札幌にも建設するほか、今後、仙台、横浜、大阪などでも施設を整備する。鉄道貨物輸送にはこれまで荷主が貨物駅構内にそれぞれ個別の物流施設を持つ必要があり、「利便性が問われていた」(関係者)。
また食品や医薬品などを運べる定温貨物列車を新設。自社用地開発だけでなく、首都圏中心にオフィスビルなど外部物件取得も進めて不動産事業を拡大していく計画だ。
JR貨物は旧国鉄以来の赤字体質を引きずり、業績低迷が続いてきた。しかしトラック運転手の人手不足や環境負荷の低減に向けた「モーダルシフト」が追い風となり、16年度に鉄道事業が部門別業績開示を始めて以来、初の営業黒字(5億円)に転換。首脳陣の口から「上場」の2文字が漏れるようになった。
■国交省は「時期尚早」
もっとも事実上の株主である国土交通省は「現時点での上場議論は時期尚早」(幹部)との立場だ。新型コロナ禍で20年度は営業赤字への逆戻りが予想されている上、23年度までは国の財政支援が続くなど経営基盤がなお脆弱なためだ。
アボイダブル(回避可能)コストルール問題の解消にもメドが立っていない。
線路を持たないJR貨物が、旅客6社に支払っている線路使用料が特殊な算定基準で超低額に抑えられている問題で、鉄道事業の黒字化は、いわばそのルールの恩恵の下に成り立っている。これに解決の道筋をつけなければ「上場は困難」(事情通)というわけだ。
積極投資が、果たして一連の隘路から抜け出す起爆剤となるのか。視界はまだ開けていない。