Googleの提唱する働き方改革成功のポイント/ワークスタイル変革EXPO

Googleの提唱する働き方改革成功のポイント/ワークスタイル変革EXPO

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 Google Cloud 事業本部長 塩入賢治氏

【記事のポイント】
▼何のために働き方改革を行うのかを明確にせよ
▼イノベーションは一人の力では起こせない
▼立場を超えてアイデアをぶつけ合う
▼ツールで短縮できた時間を使って、新しいアイデアを生む環境を作る
▼変化のプロセスを成功させるためには、社員全員が参加することが重要

 2017年7月26日〜28日、東京ビッグサイトで開催された「総務・人事・経理ワールド2017」。総務・人事・経理部門向けの7つの専門展が同時開催となる展示会として、防災・セキュリティ、省エネ、人事支援、働き方改革支援、財務会計などの製品・サービスが一堂に会するイベントだ。展示会では750社もの企業が出展、また多数のセミナーが開催された。

 今回の記事では、イベントのうち「ワークスタイル変革EXPO」で開催された、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 Google Cloud 事業本部長である塩入賢治氏によるセミナー「『ITのものづくり』最先端の現場から学ぶ、イノベーションを生み出す働き方とは」から、あらゆる業態にとって有益となるであろう働き方改革成功のポイントを抽出する。

■「ワークスタイルイノベーション成功のための3つの柱」とは

 このところ様々なメディアで耳にする「働き方改革」。しかし一口に働き方改革といってもどこから着手すればいいのか分からなかったり、見当違いの方向に向かってしまうようでは意味がない。そこでまず「何のために働き方改革を行うのか」を明確にしておかねばならない。Googleでは働き方改革によって「イノベーションを生み出すことに時間を使いたい」と考えており、それを実現するためには「文化」「ツール」「プロセス」の3本の柱が必要だと塩入氏は話す。

 まず最初の「文化」だが、そもそもイノベーションは一人の力では起こすことができない。多様な人材によって構成されたチームが必要であり、そのチームの力を最大限に活かすことによってはじめてイノベーションを起こすことができる。そのためには自律的な働き方を実現するための文化が必要だ。

 ではその文化はどのようにして築いていけばよいのだろうか。塩入氏によるとGoogleでは「サイコロジカルセーフティ(心理的安全性)」「チームのメンバー間での相互信頼」「チームの役割や目標が明確」「自分にとっての仕事の意味を実感できる」「自分の仕事をインパクトがあると思える」の5つの文化を重視していると語る。

 例えばGoogleでは新しいサービスを作るときに、まず誰かが「Googleドキュメント」に関連するアイデアを書き出すことから始まる。そのドキュメントをインターネット上で関係者に共有することで、次々にアイデアが広がっていくのだそうだ。またインフラ等に問題が発生した場合もすぐに専用の「Googleドキュメント」に関係者がアサインされ、瞬時に障害を共有するとともに、関係者全員の知識や経験をフルに使って対応にあたることができるそうだ。もちろんそこでは新しいアイデアが生まれることも珍しくないという。

 このようにGoogleでは「会議室にこもって関係者だけで議論する」という古い慣習を捨て、5つの文化をもとに「世界中から立場を超えてアイデアをぶつけ合う」という新しい慣習を作り上げている。これこそがイノベーションを生み出すために必要な「文化」といえるだろう。

■業務の生産性を上げるツールの使い方

 一般的な企業がクリエイティブな業務に割いている時間はどのくらいかご存知だろうか? 実に業務全体の5%しかクリエイティブな時間にあてておらず、残りの95%は定型業務だという。これではイノベーションを起こすことは難しいだろう。

 そこでワークスタイルイノベーションのための2本目の柱として登場するのが「ツール」だ。Googleといえば検索エンジンだけでなく、「Gメール」や「Googleカレンダー」など様々なアプリケーションツールを提供していることでも知られている。実はこれらのツールは単に提供されているだけでなく、機械学習の導入や無駄の解消など常に改良が加えられているのだ。

 コンサルティング業務などを手がけるPwC Japanグループでは、これまで使用していたアプリケーションをGoogleの法人向けアプリ「G Suite」に移行した結果、一週間あたりの定型業務を9時間節約することに成功、浮いた9時間をクリエイティブな業務にあてることができるようになったそうだ。


 また任天堂初のスマートフォン用ゲームとして注目を集めた「Super Mario Run(スーパーマリオラン)」にもGoogleのツールが一役買っている。ご存知の通り「スーパーマリオ」は任天堂のビッグタイトルゲーム。そこにモバイルゲームの大手であるDeNA、そしてGoogleが加わって開発が行われた。それぞれの本社が遠く離れている3社を支えたのがGoogleのツールだ。チャットツールである「Googleハングアウト」や「Googleドキュメント」を活用することでインタラクティブにミーティングを行うことが可能となり、ミーティングのための移動コストや時間を大幅に削減することができたそうだ。

 塩入氏は「使うツールは何でも良い。ツールによって短縮できた時間を使って、新しいアイデアを生む環境を作れるかどうかが大事」と強調した。

■社員と共に変化していくことが、プロセスをゴールに導く

 ワークスタイルイノベーションのための最後の柱は「プロセス」だ。多くの人は急激な変化に拒絶反応を起こす。いくら「文化」や「ツール」を整えても、それを社員に浸透させなくては全く意味がない。社員に「文化」や「ツール」を浸透させていくためには、ケアをしながら適切に取り込んでいくことが必要だと塩入氏は話す。

 例えばコンビニエンスストア大手のファミリーマートでは、業務過多と人手不足が重なり店舗スタッフの一人あたりの負荷が増え、「お客様さまの気持ちに一番近い存在になる」という基本理念が実現できていないことが問題となっており、「時間を節約し、基本理念を実現するための改革」に迫られていた。

 まずアンケートツールである「Googleフォーム」を使い、全社員にアンケートを実施。その結果、役員と現場では会社の現状認識にずれがあることが判明、またファミリーマートの強み・弱みの解釈にも違いがあることが分かった。そこで役職や部署を超えたメンバーが文化改革のためのワークショップを開催したり、「G Suite」を使い働き方改革の実証実験を実施したところ、これまで業務にかかっていた時間を大幅に短縮することに成功したそうだ。

 最後に塩入氏は、変化のプロセスを成功させるためのポイントとして「何のために変化をするのか、軸となるゴールを明確にすること」「トップダウンで一方的に押し付けるのではなく、社員を巻き込み全員でカルチャーを作ること」「社員がやりたいと思うことを小さく始めること」の3点を挙げた。

 ワークスタイルイノベーションに必要な「文化」「ツール」「プロセス」のいずれも、トップの独断で一方的に進めては社員の反感を買うばかりで効果が薄い。それよりも社員を積極的に参加させる環境を作り、共に改革を進めていくことこそが、働き方改革成功のためのポイントといえそうだ。



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