業務のIT化。急な変化に「ついていけない」人が出てきたときの対処法

業務のIT化。急な変化に「ついていけない」人が出てきたときの対処法

『御社にそのシステムは不要です。』著者の四宮靖隆氏

昨今、政府が「DX」(デジタルトランスフォーメンション)を推進するなど、世の中は「IT化」「デジタル化」の流れが加速している。

企業にとってIT化は非常に重要だ。変化の速い現代において、成長のスピードを上げるために業務改善による効率アップは必要不可欠であり、残業削減や利益の拡大にもつながっていく。しかし、「IT化」といってもどうすればいいのか分からない、予算面で難しい部分がある、そういった不安な声も一方で上がる。

今回はそんな中小企業の不安に対して丁寧に応えてくれる本『御社にそのシステムは不要です。』(あさ出版刊)について、著者であり株式会社ジョイゾー代表取締役社長の四宮靖隆氏にインタビューを行った。後編ではIT化を進める際に出てくる「ついていけない人たち」との接し方やコストの考え方について聞いている。

(新刊JP編集部)

・インタビュー前編を読む

■業務のIT化。急な変化に「ついていけない」人たちの対処法

――業務改善のためにIT化を進めると、IT化のスピードについていけない社員も出てくると思います。そのスピード感についてはどのように考えればいいのでしょうか。

四宮:会社によって違う部分はありますが、スピードを出すところと緩めるところのバランスは見るべきだと思いますね。導入スケジュールもそうですし、実際に運用する人に対しても。

――例えば、コロナ禍でテレワークが一気に進んだ会社もあると思いますが、その一方でテレワークへの移行が速すぎて精神的な負担になっているという人もいます。

四宮:テレワークの場合ですと、何も準備をしていない中で一斉にテレワークが始まって、さらに勤怠管理のツールはこれですとか、チャットはこれ入れますというように、次から次へと新しいツールが入ってくると、それは戸惑いますよね。

もちろんそのスピード感に適応できるならいいんですけど、そうではない会社もあると思います。その場合は、まず少しずつ導入していくということが大事になるのですが、その中でも一番大事なことは、なぜこのツールを導入するのかということをちゃんと伝えることだと思うんですね。

テレワークの導入も、大半の企業ではテレワークすること自体が目的化してしまっているように思います。なぜ会社としてテレワークに移行するのか、その先にある目的をしっかり伝えるということをしないと、納得感を得られないまま進めることになってしまいます。

――説明がないと、無理やりテレワークを押し付けられたという感覚に陥ってしまいます。

四宮:準備もちゃんとできていないのに、となりますよね。導入されたツールを覚えるのも面倒ですし、会社が何に向かっているのか分からないという感情を抱いてしまいます。

――本書の中でIT化への抵抗勢力について触れられていますが、IT化を推し進めることに従わない人も出てくると思います。そうなると業務改善が進みにくくもなりますが、そうした人たちにツールを使ってもらうようにするためにはどうすればいいのでしょうか。

四宮:いろいろなパターンがあると思いますが、そもそもなぜ抵抗する人たちが出てくるのか、それを見極めることが大事だと思います。パソコンを使うのに慣れていないから嫌なのか、新しい作業が増えるから嫌なのか、自分のやり方を変えられることが嫌なのか、そこには抵抗する理由があって、それによって対策は変わってきます。

例えば、パソコンをあまり使ったことがなくて抵抗しているのであれば、実は攻略はそんなに難しくありません。単純にしばらく横に座って一緒に画面を見ながら教えてあげるんです。ただし、代わりにやってあげてはいけません。とにかく本人たちにやらせてみる。上手くできないのは当たり前ですが、じれったい気持ちを押さえながら、とにかく見守りましょう。

成功体験を感じてもらうことはすごく大事で、普段パソコンを使っていない人って、パソコンを使うことにすごいハードルの高さを感じているんです。でも教えてあげると意外とできたりして、できたことに喜びを感じ、どんどん自分で操作し始めるようになることも多いです。

――同じように、業務改善を目的にツールを取り入れても、なかなかすぐに成果が見えにくいこともあると思いますが、成果が出てきて「業務が楽になった」という成功体験を得ると一気に進みそうですね。

四宮:そうですね。業務改善って効果がすぐに出にくいこともあって、最初は覚えなければいけない作業が増えて、余計に大変になっただけと思われることもあります。

そういうときは経営者が出てきて、なぜそのツールを入れるのか、そのツールを取り入れることによってどう変わるのかしっかり説明することが大切です。ここをシステム化さることで、今までやっていた作業をしなくてもよくなると残業も減るよ、と。そして、IT化を進めることで作業効率が上がって、会社の利益も上がっていく。そうすれば、従業員の皆さんの給料にも反映されてくるし、業務量も減ってストレスなく働ける環境が作れるようになる。こうしたことをきっちり話していくことが大事なんだと思います。

――システム導入は多額のコストがかかるというイメージがありますが、コストを抑えられる方法というのはあるのですか?

四宮:システム導入にコストがかかると思っている方ってすごく多いのですが、実は前提の考え方が違うんです。システムを導入することはコストではなく、投資と考えるべきです。

なぜコストと考えるのかというと、これまでのシステム導入は「守りのシステム」という捉えられ方をされていたからです。自ら課題を発見してどんどん改善していくという「攻めの業務改善」ではなく、経理をする上で会計のシステムを入れないといけないというような形で、システム導入が行われていました。

ただ、今は攻めの業務改善としてシステム導入を進めていただく時代ですから、コストではなく投資として予算を確保していただくことが大事なのかなと思います。

――そう考えると、中小企業でシステムを導入するとなると、規模感も含めて経営者の意思決定が大きくなりますよね。どれだけそこに投資するのかも含めて。

四宮:そこは重要だと思います。ただ、お金というところで言えば、投資の視点で考えることはもちろん大事だけど、実際いくらかかるのか、どれくらいかけるのか、投資とはいえ失敗のリスクもあります。受託で社内サーバーを用意して開発をしてもらって、それを運用するというタイプですと、最初に数百万、場合によっては数千万のお金が発生するので、そこにリスクを感じるのは当然です。

だから、いかにクラウドサービスを上手く活用するかというところも必要になってきます。クラウドのメリットは基本的にサブスクリプションなのでいつでもやめられるし、乗り換えも可能なところです。また、クラウドサービスを使うことで社内で管理しなければいけなかったサーバーの運用費用をなくすことができますので、そのような見えにくい費用を削減できると考えても、クラウドの方が金額面でメリットが大きいのではないかと思います。

――会計システム一つとっても色々なサービスがありますが、クラウドのサービスの選び方にコツはありますか?

四宮:一番良いのは、クラウドサービスを使った開発や運用に長けている業者に最初に支援に入ってもらうことだと思います。今、弊社のような特定のクラウドサービスに特化したSIerが多くいますので、そういったところにまずは相談し、そのクラウドサービスのメリット・デメリットを把握し、自社の業務課題を解決できるツールなのかどうかを判断します。

逆に良くないのは、機能のあるなしだけで判断してしまうことです。機能としてはあるかもしれないけれど、その機能は自社が本当に求めているものなのかは意外と分からなかったりするんです。だから、機能の〇×表を見てシステムを入れてしまうのは避けたほうがいいですね。

――では、最後に本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

四宮:まずは、中小企業の経営者の方々。そして、実際に業務改善を進めていく現場の方々にもぜひ手にとってほしいです。あとは私たちと同業の方々。SIerの方々にもぜひ読んでいただきたいです。そして、自社のビジネスモデルが間違っていると思ったら、この本を見直すためのきっかけにしてもらえれば嬉しいですね。

――同業者の方々に向けて、という部分は意識して書かれたのですか?

四宮:はい。4章の『「システム作り」と「業者」はどう選べばいいのか?』でどういう業者を選べばいいのかというところを書かせていただきましたが、これはSI業界全体への自戒を込めています。この本を通してSI業界の意識を変えていければと思って書いていますので、ぜひ読んでみてください。

(了)

※SI:システムインテグレーション。コンピューターやソフトウェア等を組み合わせて利便性の高いシステムを作ること。
※SIer:システムインテグレーター。顧客のシステムインテグレーションを請け負う会社や人。

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