あなたの会社は大丈夫? 「ダメな働き方改革」の実例

あなたの会社は大丈夫? 「ダメな働き方改革」の実例

あなたの会社は大丈夫? 「ダメな働き方改革」の実例(*画像はイメージです)

働き方改革が叫ばれ、企業が対応に乗り出したところにコロナ禍が直撃し、テレワーク化の波が一気にやってきた。ただでさえ残業時間の削減や有給休暇の取得率改善に取り組んでいるさなかに、自宅で働く社員の労務管理をどうするかが問われ、テレワークにマッチするように既存の評価制度の見直しも必要になる。働く方も大変だが、会社も大変だ。

ただ、「働きやすさ」は会社にとって最高の武器にもなる、としているのが『働きやすさこそ最強の成長戦略である』(大槻智之著、青春出版社刊)だ。社員一人ひとりが働きやすい環境を整えることは、巡り巡って会社が成長するための原動力になる。

■「仕事量は減らせないが残業時間は減らせ」が社員を苦しめる

労働をとりまく環境が変わっても、成長を遂げる企業には一つの共通点があります。それは例外なく、労働者と使用者の関係性が良好なことです。(P220より)

この関係性を良好に保つためには、時代の変化とともに変わっていく「働きやすさ」を会社側が感じ取って、アップデートしていくことが求められる。しかし、社会的に求められている働き方を表面的に導入しただけでは、意味がないどころかかえって働きにくくなってしまうケースも。社員の働き方の実態や部署ごとの仕事の性質などを含めて、自社に合った働き方を考えていく必要がある。

たとえば働き方改革の流れで話題になることが多くなった「長時間労働の是正」を見ても、取り組む会社は多いが「やりたいが特にアイデアがない」ケースもある。こういう会社でありがちなのが、 「仕事量は減らせないが残業時間は減らせ」 という無理難題が会社の上層部から降りてきて、上司はそれをおうむ返しするように「早く帰れ」と言うだけのパターンだ。

これでは「顧客に迷惑はかけられない」と考える部下が悩まされるだけ。業務の効率化などの取り組みがないまま早く帰ることを強いても働きやすさからはかけ離れてしまうし、長時間労働の是正にもつながらない。

残業はしているのにタイムカードは定時で打刻したり、業務評価の基準に残業時間の上限が盛り込まれた結果、自分の評価を上げるために残業時間を過少申告する事例もある。実体を伴わない「長時間労働の是正」は、会社がコンプライアンス違反に問われる危険があるばかりか、評価制度を形骸化させてしまう可能性もある。

■テレワークの必需品 コミュニケーションツールで起きたパワハラ

また本書では、会社が新しく導入したツールが思うような効果を上げず、結果的に社員の負担になってしまうケースも紹介している。

コミュニケーションの円滑化のためにチャットツールやLINEを導入する会社がコロナ前から増えていたし、コロナ禍でテレワークになった会社にとってはこれらのツールは必須だろう。

ただ、役職や立場を超えて発言できる便利さの一方で、運用ルールを決めておかないと厄介なことになるのもこれらのツールの特徴だ。たとえば社長が何かを書き込んだ時に、みんなが一斉にスタンプを押したり「さすがです」「勉強になります!」と書き込むため「自分も何か書かないと」と気に病んだ経験がある人は少なくないではないか。場合によってはハラスメントだと感じる人もいるかもしれない。

社内のコミュニケーションをLINEグループでとっていたある会社では、上司が複数の部下に意見を求めた際に「既読スルー」をして意見を表明しなかった部下に対して、「俺に賛同しろとは言わないが、何か意見を書けよ」「おい、既読しているなら返事しろよ」などとメッセージを送りつづけた事例がある。

部下がどう返事をしたものか悩んでいるうちに、上司は「全く協調性がない」「何も意見を言わないような人間は俺の部下にいてほしくない」と部下を誹謗中傷するような書き込みを始め、最終的にその部下をグループから外してしまった。上司からの圧力で、LINEの着信音自体に恐怖を覚えるようになってしまった部下は、メンタル不全に陥り、休職してしまったという。

便利な一方で、運用ルールがないと上下関係が文字として剥き出しになる怖さがあるコミュニケーションツール。「勤務時間外は使わない」「事務連絡以外は使わない」「個別のやりとりはしない」などのルールを決めた上で利用するのが大切だ。

働き方改革は決して、単に労働時間を短くしたり、在宅勤務を認めたり、優遇や免除の制度を作ることではない。特定の環境でも能力を発揮できるように環境を整備し、社員を離職させないことこそ、本当の働き方改革だと本書の著者である大槻智之氏は言う。

性格も背景も考え方もさまざまな社員がそれぞれに余計なストレスを抱えることなく力を発揮できる環境を整えれば、それはいずれ必ず会社の業績アップとなって返ってくる。では「働きやすさ」とは何なのか。それを実現するには何をすればいいのか。本書は実例を交えてその具体的な手順と方法を教えてくれる、格好の教材だ。

(新刊JP編集部)

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