「デブは出世できない」を現場で見た人の証言

「デブは出世できない」を現場で見た人の証言

『「稼げる男」と「稼げない男」の健康マネジメント』の著者、水野雅浩さん

突然だが、アメリカ社会で出世できない人には、いくつかの共通傾向があるらしい。
例を挙げれば、肥満、喫煙、低身長、歯のケアが不充分……といったものだ。

『「稼げる男」と「稼げない男」の健康マネジメント』(明日香出版社刊)の著者である水野雅浩さんは、リーマンショックが起きた2008年当時、香港にいた。そして、そこでまさに「肥満」を理由に会社を解雇されたとおぼしきビジネスパーソンを多数見かけたという。

日本社会においても、同じような傾向が今後強まる可能性があるとしたら、私たちはどのように備え、毎日を過ごせばいいのだろうか。今回は水野さんご本人にお話を聞いた。

■ファストフードの常連客だった金融マンを襲った悲劇――本書のメインテーマは「健康マネジメント」ですが、まずは、水野さんが健康の重要性を強く意識するようになったきっかけからお話いただけますか。

水野:いくつかありますが、香港で日本食のレストランに勤務していたときの経験が大きかったです。

そのレストランは香港で最も有名な金融ビルの目の前にあったのですが、店内で働きながら、道路を隔てた向こう側の金融ビルに入っていくビジネスパーソンを見ていたら、大きく分けて2パターンの人たちがいることに気づいたんです。

まず、ファストフードチェーンの袋を持ってビルに入っていく肥満気味な人たち。もう1パターンは、私が勤めていたレストランに頻繁に来る、スリムで肌ツヤの良い人たち。

言うまでもなく、ファストフードに比べて日本食は断然ヘルシーです。「何を食べるか」によって、健康面にかなりの差が出る可能性がある。そう気づかされたことは、大きな契機となりましたね。

――なるほど、頭で理解するだけでなく、そのような現実を目の当たりにすることは大きいかもしれません。ただ、水野さんが当時の職を辞してまで、「健康」をテーマとした取り組みを始めるようになった理由はそれだけだったのでしょうか?

水野:いいえ、この話には続きがあります。そのころ、ちょうどリーマンショックが起きまして。

私は当時、レストランの営業活動のため、現地で開催される異業種交流会に積極的に参加していたのですが、ある交流会へ行ったとき、会場で「ファストフードの袋を持って金融ビルに出入りしていた肥満気味の人々のうちの一人」を見かけたんですよ。

海外では「健康にもを配れない人には仕事を任せられない」と考える人たちがいます。もちろん100%断言はできませんが、この考えに則れば、彼は肥満を理由に会社をクビになったのかもしれません。彼は交流会の場で必死に売り込みをしていました。

当時の私にとって、こうした光景を目の当たりにしたことは、かなりインパクトがありました。

――「スリムで肌ツヤの良い人たち」はクビにならなかったのでしょうか。

水野:そうですね。実際、現地の知り合いから聞いたところによると、彼らの多くはリーマンショック後、クビになるどころか、逆に会社の再建を任されたそうです。

――これまでのお話は海外に関するものでしたが、ここ数年の日本国内を見ていて、「健康」への意識変化は見受けられますか?

水野:変化はあります。日本企業の動きを見ていて、明らかに「健康経営」に舵を切っているところと、そうでないところとに二極分化し始めているように感じます。

たとえば、ある大手製薬企業では、社長自ら朝7時に出社し、始業前に社員と一緒にヨガをして、朝食を摂っています。そして8時になると、全社員が仕事に取りかかる。当然、残業はありません。

なぜこのような働き方が可能になるのかといえば、経営者が「社員が健康であればあるほど、パフォーマンスが上がる」ということに気づいているからです。「健康経営」の典型例といえるでしょう。

――「健康であるほど、パフォーマンスが上がる」という話は大いに頷けます。ただ、今ご紹介いただいたケースのように会社側に社員の健康への理解があればベストですが、そうでないケースも少なくないと思います。個人でできることとして、何か手軽にできて、早く効果を実感できる健康マネジメントの方法があれば教えてください。

水野:まずは就寝前に5分間、「スローラジオ体操」を取り入れてみるのがおすすめです。

今、多くのビジネスパーソンは「睡眠の質の低さ」に悩まされています。睡眠は身体を休め、日中の疲労を回復させるためのものですが、本来の機能を果たせていないんですね。

働く人にとって、仕事をしている時間というのはアドレナリンが絶えず出ている状態。ですが、寝る直前までテレビやパソコンやスマートフォンの画面を眺めていると、こうした緊張状態を解くことができません。

結果、寝ようと思ってもなかなか寝つけなかったり、寝ても寝ても疲れがとれないということになってしまいます。

つまり、質の高い睡眠をとるためには、身体を「緊張モード」から「休息・回復モード」へと切り替えることが必要なんです。その意味で、前身の筋肉をゆるめるためのストレッチになるスローラジオ体操は有効だといえます。

個人差はありますが、取り入れて1日、2日もすれば効果を実感できるでしょう。
(後編へ続く)