業界の大御所に聞く「アニメビジネスの可能性」 【矢島雅弘の「本が好きっ!」】

業界の大御所に聞く「アニメビジネスの可能性」 【矢島雅弘の「本が好きっ!」】

業界の大御所に聞く「アニメビジネスの可能性」 【矢島雅弘の「本が好きっ!」】

みなさん、こんにちは! ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

僕がパーソナリティを務めるインターネットラジオ『矢島雅弘の「本が好きっ!」』。第18回のゲストは『おそ松さんの企画術〜ヒットの秘密を解き明かす〜』(集英社刊)の著者、布川郁司さんでした。

布川さんは『魔法の天使クリィミーマミ』『幽☆遊☆白書』『NARUTO ナルト』『BLEACH』『おそ松さん』など、各世代に愛される名作アニメを数多くつくってきた株式会社ぴえろの取締役最高顧問であり設立者。アニメ業界に携わる方にとっては、まさに雲の上の人といえます。

■クリエイター業とプロデューサー業を兼ねるのは難しい

1947年生まれの布川さん。日本はハード産業を中心に経済成長を遂げたものの、そのハード産業が不振に陥っている今、ソフト産業のモノの売り方・作り方を知ることが重要だと述べ、自らの経験をもとにアニメ作品の売り方やチームの作り方、ひいてはヒットの秘訣を教えてくれます。

そんな布川さんに今回お聞きしたのは、アニメのプロデューサーというお仕事の面白さ。

布川さんは本書の中で作画や脚本などを手掛けるスタッフをクリエイター、企画や管理を手掛けるスタッフをプロデューサーと呼び分けて語っていらっしゃいました。

布川さんによれば、アニメ業界を志す人の中にはやはりクリエイター志望の人がとても多いのだそうです。

布川さん自身もアニメーターとして業界に入り、演出家、プロデューサー、経営者とキャリアを進めてきました。その経験から布川さんは「自分には、クリエイターとプロデューサーを兼業するのは難しかった」と振り返ります。

ぴえろの第一作『ニルスのふしぎな旅』で演出とプロデュースを兼ねた布川さんは、演出家としてのこだわりから第2話のとあるシーンで大量のセル画を使用し、制作予算が膨れ上がり、自社スタッフから「経営に専念して下さい」と叱責されたとのこと(笑)。

ただし、この布川さんのクリエイター気質は、業界内で「良い絵を描くスタジオだ」と高評価を得て、次の仕事につながったという、予想外の成功にもつながったそうです。

■アニメ作る視点と、アニメを売る視点。2つの視点を身に付けよ

インタビュー中、布川さんはプロデューサーという仕事を、営業プロデューサーと制作プロデューサの2種に分けて教えてくれました。

ざっくり言ってしまえば、営業プロデューサーとは作品を各種媒体やタイアップ企業に売り込み、その企画を手掛ける人。制作プロデューサーは制作工程の管理やクオリティ面の管理を手掛ける人のことです。

布川さんいわく、制作プロデューサーの面白さは、チームを作るところにあるとか。当時若手だった押井守氏を初のTVアニメの監督に抜擢したことエピソードなどを交え、「この人に作品を任せよう」という管理面、人材育成面での面白さがあるそうです。

もう一方の営業プロデューサーについては、昔と違い、TV局に作品を売り込む以外のアニメの売り方が多様になっていること、さらには今後の可能性を語って頂きました。

一例を上げれば、今のアニメにはTVの視聴率だけではなく、作品自体のライツビジネスで利益を上げる方法があり、話題となった「おそ松さん」では視聴率こそ一桁台だったものの、数多くのタイアップで莫大な利益を上げることができたと言います。

そして、この「おそ松さん」人気を支えたものこそが、これまでの作品づくりで培ってきたファン層の分析や、企画段階でのギミックやチーム選び、営業面での展開だったそうです。

アニメを作るという視点から、アニメを売るという視点。日本が世界に誇るコンテンツを手掛けてきた大ベテランのノウハウは、ソフト産業に従事する人にとって大きな価値があるはずです。

(文/ブックナビゲーター・矢島雅弘)

 ◆   ◆   ◆

【矢島雅弘の「本が好きっ!」】
ブックナビゲーター・矢島雅弘による書評ラジオ。毎回、話題の本の著者が登場して、本について掘り下げるインタビューを届ける。
オーディオブック配信サービス・FeBeにて無料配信中。http://febe.jp/honga