自ら「ヒーロー」に変身する社長に学ぶ「リーダーとしての振り切り方」

自ら「ヒーロー」に変身する社長に学ぶ「リーダーとしての振り切り方」

『スーツを脱げ、タイツを着ろ! ――非常識な社長が成功させた経営改革』の著者、江上喜朗さん

福岡に一風変わった自動車教習所がある。
エンターテインメント性に富んだ教習が人気で、受講者が卒業後に遊びに来ることもあるという。
しかも、その教習所には「かめライダー」なるヒーローがいる。このヒーローに扮するのが、南福岡自動車学校の代表取締役社長・江上喜朗氏だ。

「かめライダー」こと江上氏は、会社に改革を起こし、斜陽産業になりつつある自動車教習所の経営を立て直した。
そんな氏が上梓した『スーツを脱げ、タイツを着ろ! ――非常識な社長が成功させた経営改革』(江上喜朗著、ダイヤモンド社刊)は、南福岡教習所が進めた改革の一部始終が語られている。

オールドカンパニー的な経営で、ジリ貧になっていく会社を改革する経営者がするべきこととは何なのか。江上氏にお話を伺った。

(取材・文:大村佑介)

■会社の改革は、「ネジ」を外して踏み込むことが必要――江上社長は、お父様から会社を引き継いで、南福岡自動車学校の経営を担うことになったわけですが、当時、会社はどのような状況だったのですか?

江上:厳しい状況に立たされていましたが、まだ挽回できる余地は残っていました。
ただ、業界的に見ても、成り行きに任せるままでは間違いなく行き詰まる状況ではありましたね。

少子化の波もあって、過去10年の売上実績を見ても数パーセントずつ下がっていました。
さらに、何十年後かに自動運転が実用化されれば、ますます、厳しい状況になることは目に見えていました。

――そこで、何かを変えなければということ意識が生まれたのですね。そんな状況のなか生まれたの「かめライダー」だったわけですか?

江上:そうですね。ずっと「何かを変えなくては」という意識がありました。
そんなとき、大脳生理学と心理学の泰斗である西田文郎先生の「おや?」「フムフム」「なるほど」の法則というものを知ったんです。

そのなかに、何かを伝えるときに「おや、何だあれは?」という驚きや違和感とともに伝えるということが大事だ、という話がありました。
それからずっと「何をやったら、一番“おやっ?”となるだろう」と考えていて、あるときひらめいたのが「カメの着ぐるみを着てみよう」ということだったんです。
もともと、南福岡教習所のマスコットキャラクターがカメだったこともあって、言ってしまえばその場の思いつきですね。

でも、自動車学校という古い業界の社長が全身タイツを着て、道行く人に「チャオー!」って声をかけていたら、絶対に驚くでしょう?

――そうですね。街で出会ったら絶対に「何だろう?」って思いますね(笑)

江上:そうなんです。そういう意味では「何だろう?」と思ってもらえた時点で勝ちなんです。こちらの話を聞いてもらえる状況が生まれますからね。
ギャップを生んで、「おや?」と思ってもらえるにはコレしかないと考えて。勢いそのままに「かめライダー」の着ぐるみをつくって、まずは街を歩いてみようと思いました。

■「キャラクター」と「経営者」の共通点――実際に、街を歩いて手応えはあったのですか?

江上:手応えというか、気づいたことはありました。
こちらが羞恥心を持っていると、「何アレ?」となって、相手も拒否感や警戒する傾向が強くなるんです。でも、「チャオー!」って言いながら、羞恥心を振り切ってやりきると、意外と人は振り向いてくれたんです。

これは、経営でもそうだと思うのですけど、人に対して及び腰になっていると、言いたいことも言えずに負けてしまいますし、伝わらないですよね。
そういう相手には、一歩踏み込むくらいだと踏み込めきれない。そこを三歩くらい踏み込んで、「チャオー!」と言えるくらいまで、完全にネジを外して踏み込んでいかないと。

――面白いですね。キャラクターでいる事と経営の心構えに相通じるところがあった。

江上:そういう意味では、何かを変えようと思うなら気後れせずに、「こっちの色に染めてやろう!」というくらいの勢いが必要なんだと思います。

そうやって、振り切って「かめライダー」の活動を続けていくうちにした、徐々にメディアでも取り上げてもらったり、ご当地ヒーローグランプリに出たりするようになりました。その甲斐あって「かめライダー」はもちろん、教習所の名前も知ってもらえるようになりました。
今は、さらに「プーリーさん」と「よりともさん」という脱力系キャラクターも売り出しています。

――そうやって、「かめライダー」を皮切りに会社の改革を進めていったわけですが、改革をするということは、既存の状態を壊していくことになりますよね。その点は最初から意識されていたのですか?

江上:それまでのビジネスモデルのままで、合理性を高めるとか集客を効果的にするといったことだけで経営していくことは限界だろうと感じていました。
そこで新たなビジネスモデルや企業理念をつくって、既存の状態を壊すことは必要だろうと考えていました。

(後編に続く)

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