夢とは小さな「たい」の積み重ね。「カツカレー食べたい!」から始めよう

夢とは小さな「たい」の積み重ね。「カツカレー食べたい!」から始めよう

心屋仁之助氏(撮影/干川修、撮影協力/ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)

かつてはテレビ番組「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)で芸能人のディープな悩みを鮮やかに解決してお茶の間の人気を独占、その後も講演会やセミナーで全国を飛び回る傍ら、みずから作詞・作曲したオリジナルアルバムを精力的に発表し続けている。そして2017年には武道館単独ライブまでも実現し、現在、その著書は累計部数450万部に達する心屋仁之助氏。
こうして自らのビジョンを次々に実現し続ける心屋氏が、このたび新刊『心屋流 ちょっと変わった夢の叶え方』(学研プラス刊)を刊行した。

前回の配信では、「夢がある人」と「夢がない人」の2タイプを心屋式のユニークな分類で定義して、それぞれが自分らしくラクに生きる方法を語ってもらった。
では、そもそも我々にとって「夢」とはいったい何なのか? そして本書が提唱する“ちょっと変わった叶え方”とはどんなものなのか?
(構成/福島結実子 撮影/干川修)

・前編はこちらから

◆「私、カツカレー!」から始めよう――今回お話を伺って、夢がない人は、無理して見つける必要はなくて、夢がないまま平和に生きればいい。そう言っていただけると、「夢は何?」と聞かれても「うーん、今はないな」って平気で言えるような気がしてきました。

心屋:それはよかったです。

――ただやっぱり、「夢=生きがい」という気がしてしまって、夢があったほうが人生、楽しそうだし、充実しそうだなとは思います。今までのお話を聞いてきて、そもそも「夢」って何だろう? という疑問も浮かんでしまったんですが。

心屋:夢とは「たい」です。「したい」「行きたい」「会いたい」「見たい」「聞きたい」「食べたい」……の「たい」という「好奇心」なんですよね。生きがいレベルの夢が欲しいという人は、こういう小さな「たい」をつかまえずに、大きな「たい」をつかまえようとしてるんですね。でも本当は、まず自分の小さな「たい」を感じて、叶えてあげることが大事。

――本当に小さなことでいいんですか?

心屋:たとえばカフェで、みんながミルクティを頼んでいるとき、自分だけロイヤルミルクティって言いづらい。「じゃあ、ミルクティでもいいか」って、そこでちょっと自分を押し殺すんですね。でも、そういう自分の本当の気持ちを叶えられない間は、大きな夢も生まれないし、叶うこともないでしょう。

――小さな「たい」が、大きな「たい」につながっている、と。

心屋:そういうことです。「ミルクティよりロイヤルミルクティがいいな」「目の前にナイフとフォークが並んでるけど、お箸で食べたいな」「みんなはお茶だけ頼んでいるけど、お腹が空いているからカツカレー食べたいな」ってね。だったら我慢せずに「ロイヤルミルクティにする」「お箸ありますか?」「私、カツカレー!」って言えるようになること。我慢しようと思えば我慢できてしまう、小さな欲求を満たすことが大事。

――まわりのみんなはお茶だけのつもりなのに、自分はカツカレーというのは勇気がいりますね(笑)

心屋:今はそうでしょう(笑)。でも、「カツカレー食べたいな」という小さな「たい」に正直になると、大きな「たい」も素直に感じられるようになります。前にも言ったように、「ふーん族」(※前編参照)の人は、あまり自分を主張しないし、心がなだらかで、「めっちゃいい!」「めっちゃ嫌だ!」っていう起伏があまりありません。それで平和に生きられればいいんだけど、誰でも日々、小さな欲求はあるはず。それは我慢しないほうがいいんです。

――「ふーん」と言っているなかに、「まあ、これでもいいか」って我慢していることがあるかもしれないんですね。でも自分は自分だから、そう考えるのでいいんだって思えたら、小さな「たい」も大事にできそうです。

心屋:うん。で、そうなるためにはひとつ、覚悟しなくちゃいけないことがあります。それは「あなたって変な人ねえ」って言われる覚悟。裏を返せば、「私は空気読めないし、ちょっと変なんですよ」っていうのを、世間に認識させてしまうということ。そうなると、「私、カツカレー!」って言ったときに「わ、出た〜!」って歓声が上がったりして、喜ばれるようになる(笑)

――そうなったら、もっとラクですね!

心屋:しかも、みんながお茶している目の前でカツカレーなんか食べたら、みんな匂いにやられて「私もカツカレー食べようかな」「私はキーマカレー」なんて言い出すかもしれない。自分が正直になれば、周りの人もちょっとずつ正直になって、その場の幸福感が底上げされる可能性もあるんです。

◆夢は叶ってもいいし、叶わなくてもいい――そんなふうに小さな「たい」を大事にしていると、いつか自分が解放されて、大きな「たい」も見えてくるのでしょうか?

心屋:そうですね。大きな夢とは、日々の「たい」を叶えて楽しんでいるうちに、結果的に、勝手に湧き上がってくるもの。それも「叶わなくちゃダメ」ではなくて、「なんかこんなことになったら、おもしろくない?」っていう感じです。

――おもしろがるというのが、すごく大事なポイントなんですね。

心屋:きっと「挫折が怖いから夢を持たない」っていう人も多いでしょう。「叶わない夢を持つくらいなら、夢がないって思っていたほうがラクだ」と最初から自分を低く見積もって、諦めてしまっている。でも、おもしろがっていれば、挫折が怖くなくなって、ポワンと夢を持っていられるんです。叶ったらおもしろいし、叶わなくても別にいいか〜って。

――夢は叶わなくてもいいけど、叶ってもいい。さらに気持ちがラクですね。

心屋:あと、もう1ついえるのは、「夢を叶えるんだ!」って思って、その夢だけを見て一直線に走るより、「どっちでもいいや」って思って日々、おもしろがっていたほうが、びっくりするくらい大きなことが叶う場合もあるんです。

――夢を描くことで、かえって叶うことが狭まるかもしれないんですか?

心屋:そう。10の夢を実現させようと思ったら、10の夢を叶えるための行動しかしないでしょう。本当は20の夢でも30の夢でも実現できるかもしれないのに、夢によって自分のポテンシャルに天井を設けてしまっているということです。
たとえば本を書き始めたころ、僕にとっては20万部というのが大きな夢でした。でもあるとき、「もう、なんぼでもええわ」って思ったら一気に売れ始めて、現時点で累計450万部にもなっている。20万部の夢からしたら、450万部なんてほとんど宇宙レベルで、努力しようにも、どうしたらいいかわかりませんよね。20万部にこだわって、そのための努力をしていたら、たぶん、ここまでは達しなかったんじゃないかな。

――夢っていうのは、自分が想像できるなかで最高のことだから、逆に言えば、それ以上のことは実現しづらい、と。

心屋:そういうことです。そもそも「20万部は売れたい」と思ったのは、「あの同業者が20万部くらい売れているから、あの人くらいになれたらいいな」っていう、自分の目に映る小さな世界のなかで描いた夢だったから。

――その20万部の枠がとれたことで、それをはるかに超えることが叶ってしまったんですね。それにしても450万部とは驚異的な数字ですが、「もう、なんぼでもええわ」というのは、どういう心境ですか?「諦め」とも違う感じがするし……。

心屋:「売れてから幸せになるんじゃないんだ」ということです。売れても売れなくても、本すら出していなくても、幸せに生きている人がたくさんいる。だから、「何かを達成した」ということで自分の価値を計らなくていいんだって思えたんですね。
結果が出ても出なくても自分は素晴らしいし、満たされていいし、幸せになっていい。そのうえで結果が出たらめっちゃ楽しいし、うれしいな〜という。このスタンスになったら「もう、なんぼでもええわ」って思えて、そこからギュンッて伸びたんです。

◆「がんばる時代」から「楽しむ時代」へ――そういうスタンスになれたきっかけはあったんですか?

心屋:2つあって、1つは断食です。それまでは、自分は「欠けている」って思っていたから、実績を足して、足して、そうやって価値がつくられていくと考えてました。食に関しても「欠けている、何かが足りない」と思っているから、ついつい食べてしまって昔は太ってたんです。でも足し算って、終わりがなくてずっと苦しいんですよね。それが一定期間、食を断ってみたことで、「あれ? 足さなくてええんやな」「あ、そもそも“ある”やん」って素直に思えたんです。断食をきっかけに自分を「引き算」で考えられるようになって、引いていった末に、本来の自分に戻ったという感じ。

――そうやって「素の自分」になったら、逆に可能性が花開いたんですか?

心屋:そういうことだと思います。たぶん、それまでは、足し算をすることで、逆に自分の可能性を鎧や武器でカチカチに押し込めていたんじゃないかな。それをパカッて割ったら、本来の自分がブワッと出てきたという気がします。

――足そうとがんばるなかで、素の自分の力を押し込めてしまっている……。そういう人が大半なのかもしれません。そして、もう1つのきっかけというのは?

心屋:『奇跡のリンゴ』という本です。肥料も農薬も除草剤も与えず、完全な自然農法でリンゴを育てている、ある男性のドキュメンタリーですね。木の周りは草ぼうぼうで、純粋に土から栄養を得るしかない環境で育てると、その木本来の力が出て立派なリンゴがなるんです。これは人間も同じで、放っておいても本来ある力で実を成すことができるんだ、そういうポテンシャルをもって、みんな生まれてきてるんだって思いました。

――その2つのきっかけが、450万部という、ものすごい結果につながったんですね。

心屋:断食に行ったのが2011年で、初めて「解決!ナイナイアンサー」に出たのが2012年。そこから本が年間で150万部も売れだしたんです。そんな売れ行きは想像さえしたことがなくて、「何か知らんけど、結果そうなった」という感じでした。

――「今のままの自分でいいんだ」という気づきも大切ですね。それが小さな「たい」を大事にする、満たすという、先ほどのお話にもつながっているように思えます。大きな夢がないなら、ない自分のままでいい、ただ小さな欲求を満たすことを積み上げよう、という。

心屋:それができるようになったら、ずーっと幸せでいられます。「夢を叶えるぞ!」ってがんばっていると、どうしても、その過程は苦しいものになりがちです。結果、夢が叶ったとしても、喜びを感じるのはその瞬間だけで、今度は、転落する恐怖を味わうことになりかねません。そういう生き方がいいか、日々の小さな「たい」を大事にすることで、つねにほんわか幸せでいる生き方がいいか……。それは好き好きだけど、何か知らんうちに大きなことが叶ってしまうのは、ほんわか幸せタイプのほうかなと思います。

――日々、楽しんでいると、より大きな幸せがやってくるかもしれない。

心屋:今年は残念な結果だったけど、2018年まで箱根駅伝を4連覇した青山学院大学の駅伝チームは、楽しむことを第一に据えた「ワクワク大作戦」で有名になりましたね。昨年夏の甲子園で準優勝した金足農業高校も、「楽しむ」というのが1つのコンセプトになっています。かつては血のにじむような努力と根性論が当たり前だったスポーツ界も、こういう例が出てくるようになってうれしいし、世の中が「がんばる時代」から「楽しむ時代」に変わってきていることの表れかなと思います。

――「今」を楽しむ。そのなかに、おもしろがれる「夢」もある。考えただけで幸せな気持ちになります。

心屋:生来、夢をがむしゃらに追いかけたい、努力したいというタイプの人は、そういう生き方をすればいいと思う。そうじゃない人は、日々、小さな欲求を満たし、楽しみながら、平和に生きていこう。そのなかで「あ!」というものに出会ったら、それをおもしろがってみよう。そんな感じでいいんです。

――では最後に、今の心屋さんが「こうなったら、おもしろいだろうな〜」と思っていることは何ですか?

心屋:引き続き「歌」ですね。国内ではすでにたくさんライブをやらせてもらっているけど、「海外でも歌えたら、おもしろいだろうな〜」というのが、近々、オーストラリアで叶います。今度は「アメリカでできたら、おもしろいだろうな〜」かな。

――「心屋仁之助・アメリカ公演決定!」のお知らせ、楽しみにしています。ありがとうございました!


(撮影協力/ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)

■心屋仁之助(こころや じんのすけ)プロフィール

心理カウンセラー。個性を生かして性格を変え、自分らしく生きるための手助けをする「性格リフォームの匠」として、テレビ出演でも話題になる。
大手企業の管理職として働いていたが、自分や家族の問題がきっかけとなり、心理療法を学び始める。現在は京都を拠点として、全国各地でセミナー、講演活動やカウンセリングスクールを運営。その独自の「言ってみる」カウンセリングスタイルは、たったの数分で心が楽になり、現実まで変わると評判。現在、個人カウンセリングは行っていないが、スクール卒業生により全国各地で心屋流心理学のセミナーやボランティアでのグループカウンセリングが広く展開されている。
著書の累計発行部数は450万部を突破。公式ブログ「心が風に、なる」は、月間1000万アクセスを記録する人気ブログ。
公式ホームページ「心屋」で検索 https://www.kokoro-ya.jp/
公式ブログ「心が風に、なる」 https://ameblo.jp/kokoro-ya/


『心屋流 ちょっと変わった夢の叶え方』
心屋仁之助著、学研プラス刊

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