「今の女性は求められているものが多過ぎる」 世界で仕事をする女性経営者の想い

「今の女性は求められているものが多過ぎる」 世界で仕事をする女性経営者の想い

『fika(フィーカ)世界一幸せな北欧の休み方・働き方』の著者・芳子ビューエル氏

労働基準法が改正され、この4月より有給休暇の5日消化が義務付けられるなど、私たちの働き方は少しずつ変化している。

しかし、まだまだ私たち日本人の働き方は欧米諸国と比較しても効率が悪い。それは一体なぜなのか? その解決のためのヒントを与えてくれるのが、北欧流ワークデザイナーの芳子ビューエル氏が執筆した『fika(フィーカ)世界一幸せな北欧の休み方・働き方』(キラジェンヌ刊)だ。

本書の著者である芳子ビューエル氏は1998年にJETROから北欧に派遣されて以来、北欧諸国と日本を主なフィールドとして仕事をしてきた。現在は2つの会社を経営し、北欧家具・雑貨の大手メーカー7社の日本代理店を務めている。

今回はそんなビューエル氏に北欧流の“働き方”、そして“休み方”についてお話を聞くとともに、日本人が自分らしく働いていくために必要なことをお聞きした。

(新刊JP編集部)

・インタビュー前編はこちらから

■fikaでのコミュニケーションが自分の働き方を変える!――本書は北欧の人たちの休み方、働き方をベースに、日本人に今、必要な働き方の変え方が書かれています。その中で休み方、働き方を変えるために組織と個人、まず取り入れるべきことを一つずつあげていただけますか?

芳子ビューエル:まず組織で取り入れるときは、会社のマネジメント層やベテランの人たちがこの考え方を完全に理解していないと定着しないと思います。ところが、上の人たちほど理解できないんですよね。

ノー残業デーも、シニアの方の中には「それでも帰る順番というものがある」と考える人がいて、若手を早く帰らせようとしない。そういうところをちゃんと指摘できる人がいないといつまでたってもノー残業デーは残業デーのままです。だから、トップがまず理解して、それをマネジメント層に浸透させていくことが大事だと思います。

また、個人で取り入れる場合、まずは自分の時間を責任持ってコントロールすることからですね。そして、変えられるところを「みんながこう思っているからできない」と人のせいにするのではなく、自分が責任を持って、努力して変えていく。変えていけるところってたくさんあると思うんですよね。

この両方を進めていかない限りは、働き方も休み方も変わらないと思います。

――本書の中にある「自分ファースト」「これからの人生について考えましょう」という強いメッセージに通じるご指摘ですが、普段の忙しさの中でつい抜けてしまうなと思いました。

ビューエル:そうなんですよね。今はいろいろなことがものすごいスピードで変化する時代です。だから、会社がずっと続く保証もありませんよね。また、個人も最後までその会社に勤めているということが珍しくなってきています。

世の中がどんどん変わり、未来がどうなるか誰も分からない状況の中で、意思を持たなければ簡単に人生は流されていきます。だから、自分の人生と時間をコントロールし、翻弄されないように努力しないといけない。

――「自分はこうしたい!」と思ったときに諦めてしまう人が出てくる環境というのもあると思います。例えば協力者が見つかりにくいとか。

ビューエル:私の会社にシステム系に長けている男性がいるんですね。中途で入社をしたのですが、とても良いアイデアを持っていて、どのシステムを変えれば上手くいくとかもちゃんと分かっているんです。

だから、私が「すごくいいアイデアだからやってごらん」と言ったのですが、彼はまず上司に相談に行くんですね。それで、上司が「ダメ」というからアイデアが通らない。そういうやりとりが3度あって、最終的には私が「いいからやってみて。私が責任取るから」と言って、それで本人が実行に移したんです。

おそらく本人にとって、社長から「自分が責任取るからやってみて」って言われたのは衝撃的だったと思います。でも、それでようやく自分の中で納得できて、アイデアを形にできた。先日「これからもいろいろやってみたいと思います」と言っていましたけど、これって、普段から話しているような関係でないとできないことだと思うんですよね。

周囲を巻き込んでいくためには、日ごろからコミュニケーションをしていて、相手の考えをしっているかどうかは重要だと思います。

――そのためにfikaの時間が必要なんでしょうね。

ビューエル:上司が堅い人であればあるほど、fikaの時間で情報収集をしておくといいかもしれませんね(笑)。

ダラダラとコミュニケーションを取るのもよくないですが、コミュニケーションを取りやすい環境づくりは必要です。ただ、それをミーティングで解決するのも違っていて、ミーティングは議題があって、それについて話し合うという場です。一方のfikaはコーヒーやスイーツをつまみながら気軽に話す場。食べたり飲んだりという人間の基本的な欲求を満たしながら話すので、相手の話も受け入れやすくなる側面もあると思います。

■「自分自身が腹をくくらなきゃ」と思った瞬間――ビューエルさんがスタッフさんと1対1で行っているfikaも、どんどんスタッフの方が話をしてくださるそうですね。

ビューエル:毎週水曜日の朝に私の家にスタッフを呼び、1対1で話します。仕事の話をしたがるスタッフもいますが、だんだんと人生観や結婚観の話になってきたりしますよ(笑)。その話が普段考えないことを考えるきっかけになることもあるようです。

――社長の家に行くというのは緊張しそうですが…。

ビューエル:そういうスタッフももちろんいますが、部屋の中に2人しかいなくて、お茶と美味しいものを食べながら話していると、どんどん話題が膨らんでいくんです。また、「自分はこういうことを考えているんです」と話すスタッフには、「すごくいいアイデアだから実践してみる?」って促します。すると、急に実現できる可能性が膨らむじゃないですか。そういうプロセスは何度見ても面白いですよね。

やはり仕事は自己実現が大事で、それができなかったらやる意味はないと思います。

――そんなビューエルさんがこれまで見てきて「すごいな」と思う人を教えていただけますか?

ビューエル:私の会社に入ってきた普通の女性たちが、入社時に「私は結婚したら仕事をやめます」「子どもを妊娠したら退職します」と言っていたのに、100%復職して今もバリバリ働いている姿を見て、「本当にすごいな」と思います。彼女たちはどんどん進化しているというか。

そういう会社になったきっかけとなった人がいるんです。それが、Sさんという女性社員。29歳で「営業がやりたい」と転職してきたのですが、ずっと総務の仕事をしていて、「本当に営業できるのかな」と思うくらいの子でした。でもすごく熱意を感じて営業の仕事をさせてみたら、地道な努力で数字をあげていくわけですね。

そんな彼女が妊娠をしたとき、私が子育てをしながら仕事をしてきたのを見てきたこともあって、「できるところまでやってみます」と言ったんです。それで最初の子どもを生んで、その後復職を果たしました。その時に私も「腹をくくらなきゃ」と思い、子育てしながら働く女性が働きやすい企業に変えていかなきゃと決意したんですね。

Sさんは2人、子どもを産みましたが、子育てをしつつ今も営業として売上を上げてきます。それって本当にすごいなと。そして、ちょっとしたきっかけと周囲からの援助でこんな風に人間は変われるのか、キャリアを積んでいくことができるのかと思いました。

――前に行く人の背中を見て、自分もこうしたいと思えるのは理想的な環境だと思います。

ビューエル:さらに、そのSさんを見ているから、皆も続いていけるわけですよね。

――ビューエルさんご自身は人生に悩んだときに何を大事にして決断をされてきましたか?

ビューエル:これは「自分の魂が喜ぶこと」ですね。自分の心の平安が一番大事だと思っています。自分の中で何が本質的に幸せか考えて選択をするといってもいいでしょう。

――まさに本書の「自分ファースト」というか。

ビューエル:ただ、誤解していただきたくないのは、「自分ファースト」は自己中のススメではないということです。自分だけが良ければいいということではありません。そうではなく、まず自分が助からないと、他者を助けることはできません。そういう意味で、自分を大切にすることは必要だと思います。

――本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

ビューエル:この本は主に30代から50代の女性の方に読んでほしいと思って書きました。

今の女性は求められているものが多過ぎるように思うんですね。上の世代の人たちは「そろそろ結婚したほうがいいんじゃないか」「子どもを産まずに仕事ばかりしていて」といろいろなことを言います。欧米化とともに世の中が変わって、キャリアを追求したい女性が増えている中においても、まだ古い価値観は根強く残っていて、いろんな要請が女性に向けられています。

もちろん少子化は問題ですが、そんなに多くのことを一人の人間に要求しても、できないと思うんです。そこは外国人労働者受け入れなどの対応策を講じるべきであって、すべてをやれと言っても不可能です。

そんな中で、自分にとって何が一番大切なのか判断基準を持って「自分ファースト」でいこう、と。30代から50代の仕事をしていこうと思っている女性たちに贈りたい言葉として使っています。

また、北欧の働き方、休み方については働き過ぎな男性にとってもプラスになるポイントがたくさんあるので、ぜひ読んでみてほしいですね。

(了)

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