現役社長が語る!ベンチャーの資金調達 (5) 企業の値段? 投資の受け方

現役社長が語る!ベンチャーの資金調達 (5) 企業の値段? 投資の受け方

画像提供:マイナビニュース

自ら会社を立ち上げ、これまでに8社のベンチャーキャピタルと事業会社2社の合計10社から、総額3億円を超える資金を調達してきた伊藤一彦氏。自社の経営だけではなく、中小企業診断士として企業支援やベンチャーキャピタルの資金調達にまつわる執筆もされています。

本連載では、現役経営者である伊藤氏が、これまでの経験をもとに、ベンチャーキャピタルからの資金調達についてリアルな現実を語ります。

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企業にも値段がある。

この企業を買うならば、いくらになるのだろうか?それが企業の値段であり、時価総額と言われる。時価総額=株価×株数となり、株価があがるほど、企業の値段もあがる。

日本で最も高い会社は、トヨタ自動車で時価総額は約20兆円となる。では、世界で最も高い会社はどこだろうか?答えは文末にて。

さて、本題に戻ると、最終回では、ベンチャーキャピタルから投資を受けると何が変わるかを具体的に伝えていきたい。

まず、投資を受けることで、大きく3つのメリットを受けることができた。

(1) お金が増える
(2)信用力が増す
(3)人脈が増える

簡単に補足していくと、

(1) お金が増える:まず、投資を受けた金額のお金が会社に増える。さらに資本金が増えることで財務体質が良くなり、銀行からの融資なども受けやすくなる。少なくとも明日の資金に困るようなことは無くなるだろう。

(2) 信用力が増す:外部の株主が入ることで取引先や金融機関からの信用力が増す。特に大手企業の関連会社であるベンチャーキャピタルから出資を受けることができると、その大手企業の信用力が自社の信用力を補完してくれることになる。今まで取引できなかったような大手企業や銀行とも取引できるようになる。

(3) 人脈が増える:投資を受けると上場をするために必要な証券会社や監査法人などとの出会いの機会が増える。さらにベンチャーキャピタルから出資先を紹介してもらえることも多い。しかも出資先は投資のために我々のことを十分な審査をしているし事業内容も熟知しているため、紹介してもらった先と商売になる確率は高い。

続いて、デメリットについても考えてみる。

正直、当社では創業のときから公私の区別をしっかりしてきたので、あまりデメリットに感じることはなかった。でも、もし会社の経費で買った車をプライベートでも使う、個人的な会食を会社の経費にする、節税対策のために役員報酬をあげる。みたいな公私混同をしていると、それはできなくなる。正確にいうと、これらはやってはならない。ただ、これらは全て投資を受ける以前に当たり前のことだと考えている。会社は社長の私有物ではない。汗水流して働いている従業員のことを考えると投資を受けていなくても公私混同はすべきではないからである。そもそも公私混同をしたい社長はベンチャーキャピタルからの出資を受けるべきではないとも言える。

また、ベンチャーキャピタルの担当者が取締役会などに出席することに抵抗を感じる社長もいる。しかし、当社では積極的に出席してもらっている。なぜなら、多数のベンチャー企業に関わっている経験豊富なベンチャーキャピタルの担当者に客観的なアドバイスをもらえて、さらに必要に応じて、取引先も紹介してもらえたりするからである。

したがって、ベンチャーキャピタルからの投資を受けるメリットは多く、デメリットは少ないと当社の経験からは言える。

しかし、以前にも書いたように、投資を受ける時に約束した期限内に、株式上場、他社への売却、経営陣で買い戻すなどの手段で現金化(出口=イグジット)しなければならないことは常に忘れてはならない。

共通の目的をもった心強いパートナーにも期限はある。

最後に、ベンチャーキャピタルと良き関係を保つための秘訣を伝える。それは、たった1つである。「良きことも悪きことも正直に話す」ただ、これだけである。良いときに報告するのは簡単である。大事なことは悪いときにも報告できるかどうかだ。悪いことは話しづらい。しかし隠していても、いつかはバレるのだ。当社では悪いことこそ、なるべく早く、正確に報告し、相談することを心がけてきた。それが信頼につながり、今の当社があると信じている。

「かっこつけず、品良く」

恩師に教わった言葉である。この言葉を心に刻み、これまで支援を受けてきた全ての方々のためにも、必ず、株式上場を実現したい。

この記事が少しでもみなさんの役に立つことを心から願っている。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

連載「現役社長が語る!ベンチャーの資金調達」をご愛読いただき、ありがとうございます。本連載は、今回をもちまして終了となります。

ご執筆頂いた伊藤一彦さま、執筆関係者さま、そして読者のみなさま、本当にありがとうございました。

■追伸
冒頭の回答であるが、世界で最も高い会社は、この連載で何度も例に出したAppleである。

○伊藤一彦

1974年大阪生まれ。1998年大阪市立大学を卒業後、日本電気(NEC)入社。ベンチャー企業を経て、2002年営業創造を設立。2012年スマイル・プラスをグループに迎える。2016年にグループ全社を統合し、BCC株式会社代表取締役社長に就任。経営の傍ら中小企業診断士として公的機関での中小企業支援をおこなう。著書「【新訂3版】バランス・スコアカードの創り方(同友館、共著)」「ベンチャーキャピタルからの資金調達〈第3版〉(中央経済社、共著)」
(伊藤一彦)

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