外国人取締役が一気に増加、ソフトバンクグループの人事は何を意味するか

外国人取締役が一気に増加、ソフトバンクグループの人事は何を意味するか

画像提供:マイナビニュース

●新任取締役5人は全員外国人
ソフトバンクグループは6月21日に株主総会を実施し、米スプリントCEOのマルセロ・クラウレ氏や英ARMのCEOであるサイモン・シガース氏など5人が、新たに取締役として就任することが承認された。この人事には同社の戦略が大きく反映されているが、それは一体何なのだろうか。

○スプリントとARMのCEOが取締役に

昨年、英半導体設計大手のARMを約3.3兆円で買収する一方で、昨年度には利益1兆円を達成するなど、大胆な戦略で成長を続けているソフトバンクグループ。同社は6月21日に株主総会を実施し、新しい取締役11名の選出がなされた。

その内容を見ると、代表取締役社長の孫正義氏や、代表取締役副社長でありソフトバンクの代表取締役社長を務める宮内兼氏など従来の取締役に加え、新たに社外取締役の2人を含む、5人の取締役が新任。退任する取締役が1人であることから、4人の取締役が追加されたこととなる。

過去にもソフトバンクグループの取締役を務めていたゴールドマン・サックスのマーク・シュワルツ氏を除くと、いずれも新しいメンバーとなるようだ。1人は米スプリントCEOのマルセロ・クラウレ氏。マルセロ氏は元々携帯電話の卸売事業を展開していたブライトスターのCEOであったが、ソフトバンクグループ(当時はソフトバンク)が2014年に同社を買収した後、経営が危機的状況にあったスプリントのCEOに就任。スプリントの再建に大きく貢献した手腕を買われてソフトバンクグループの取締役に選任されたといえそうだ。

そしてもう1任人はARMのCEOであるサイモン・シガース氏。サイモン氏はARMの生え抜きのCEOであり、ソフトバンクグループへの売却を決断した人物でもある。数あるソフトバンクグループ傘下の事業の中でも、孫氏はいまARMに最も高い関心を寄せており、ARMが今後ソフトバンクの戦略の主軸になると考えている。そうしたことからARMでの実績をソフトバンクグループの今後の戦略に役立てるべく、取締役に選任されたといえそうだ。

ソフトバンクグループはこれまでにも、アリババCEOのユン・マー氏など、グループ内で実績を残した人物を取締役に起用するケースはいくつか見られたことから、両氏の就任は順当だと言える。むしろソフトバンクの戦略が大きく現れているのは、他の2人の取締役である。

●ソフトバンク・ビジョン・ファンドの位置づけ
○高まるソフトバンク・ビジョン・ファンドの存在感

その理由は、両者ともに、昨年設立を発表した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に関係する人物だからだ。1人はラジーブ・ミスラ氏で、ドイツ銀行などで投資事業などを手掛けた後、2014年にソフトバンクグループの傘下企業に参画。資金調達で多くの実績を残し、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの立ち上げでも責任者として指揮を執ったとされている。

そしてもう1人は、サウジアラビアの政府系ファンドで取締役を務めている、社外取締役のヤシル・アルルマヤン氏。そもそもソフトバンク・ビジョン・ファンドは、サウジアラビアの政府系ファンドと共同で発足させた投資ファンドであり、その関係者が社外取締役に入るということは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドがソフトバンクグループ全体の事業で大きな位置を占めようとしていることを見て取ることができる。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは今年5月に初回クロージングを完了し、約10.3兆円を集めたと発表している。その出資者にはサウジアラビアの政府系ファンドのほか、アップルやクアルコム、フォックスコンやシャープなどが含まれており、非常に大規模な投資ファンドとなっている。今後同社は大規模な投資や買収は自社が直接負担するのではなく、このファンドを通して実施するとしている。

そして孫氏はこのファンドを通じて、「同志的結合による企業連合を作りたい」とも話している。ソフトバンクグループは、ボーダフォンの日本法人(現在のソフトバンク)やスプリントなどの通信事業に関しては、自社で直接経営に参画し、積極的にテコ入れを図って再建を進めるケースが多く見られた。だが実はそれ以外の事業に関しては、孫氏が直接経営に乗り出すのではなく、経営自体はそれぞれの企業に任せるケースが多い。

買収・出資した企業を系列化して抱え込むのではなく、緩いつながりによって経営の自立性を保つことによってアリババなどの成功を生み、それが急成長の原動力にもなっていることから、ソフトバンク・ビジョン・ファンドでも同様の投資スタイルを世界的に展開し、事業拡大につなげる狙いがあるといえよう。緩いつながりであれば売却などもしやすく、自社が負うリスクが小さいということも、こうした戦略の裏にはあるといえそうだ。

●ヤフー宮坂氏の退任が意味すること
○ヤフー宮坂氏が退任、国内事業への関心は弱まる

そしてソフトバンクグループは、緩いつながりによって世界的な企業連合体を構築することにより、グローバル企業として継続的に成長できる体制を作り上げることを目指している。そのことを同社では、「Softbank 2.0」として表しており、ソフトバンク・ビジョン・ファンドもSoftbank 2.0の実現に向けた取り組みの一環となっている。

では今後、ソフトバンクグループはファンドを通じて、どのような企業への出資を進めようとしているのだろうか。具体的には同社が成長分野として挙げている、IoT、AI、ロボットの3分野が主体になると考えられる。

ARMの買収もIoTの拡大に向けた一環といえるだろうし、6月にはロボットの研究開発を手掛けているボストン・ダイナミクスを買収し、話題となっている。それゆえ今後も、これら3分野に関して先端テクノロジーを持ち、成長性が見込めるベンチャー企業などへの出資を世界的に進めていくといえそうだ。

一方で退任する取締役からは、ソフトバンクグループがどの分野に対して注目を失っているのかが見えてくる。今回の株主総会では、ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏が取締役を退任しているが、ヤフーはソフトバンクグループの国内におけるインターネットサービスの中核を担う企業でもある。

それだけに宮坂氏の退任からは、ソフトバンクグループが国内事業への関心に成長を期待しなくなってきていることが見えてくる。既に孫氏は、成長が停滞してきている国内携帯電話事業に対する関心を大きく落としているが、ヤフーもスマートフォンへの対応や、2013年の「Eコマース革命」で弱みだったEコマース事業の改善を進めて以降、業績の大きな伸びは見込みづらくなってきている。国内事業は次の投資につながるキャッシュフローを生み出す源泉として業績の安定化にとどめ、今後はファンドによる投資を主力事業として海外で成長を拡大させたいというのが、同社の新たな方針といえそうだ。
(佐野正弘)

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