なぜ楽天は民泊事業に参入するのか

楽天が民泊事業に参入、強力なライバル少なくスタートダッシュで業界トップ目指す

記事まとめ

  • 楽天はLIFULLと共同で子会社を設立し、日本国内における民泊事業に参入する
  • Airbnbなどが人気を集める一方で、観光地では違法民泊も問題になっている
  • ソフトバンクやLINE、グーグル、フェイスブックといったネット企業は参入する様子なし

なぜ楽天は民泊事業に参入するのか

なぜ楽天は民泊事業に参入するのか

画像提供:マイナビニュース

楽天がなぜ民泊に?
楽天はLIFULLと共同で子会社を設立し、日本国内における民泊事業に参入する。Airbnbなどが人気を集める一方で、観光地では違法民泊も問題になる中、このタイミングで楽天が民泊事業に参入するのはなぜだろうか。

○日本最大級の民泊サービスを目指す

楽天とLIFULLは共同で「楽天LIFULL STAY株式会社」を設立した。これは、6月9日に成立した「住宅宿泊事業法」(いわゆる民泊新法)を受けて設立された民泊サービスの専業会社だ(厳密には楽天とLIFULLが51:49の出資比率で設立した「RAKUTEN LIFULL PTE LTD」の完全子会社)。

同社は観光庁長官に住宅宿泊仲介業者としての登録を受けた上で、民泊を貸したい人と借りたい人を結びつけるプラットフォームを提供する。具体的には「Vacation Stay」(仮称)というサイトを設立し、そこを通じて各種サービスを提供することになる。具体的なサービスの開始は民泊新法が施行される来年1月以降を予定している。

楽天の山田善久副社長執行役員によれば、現在日本各地では空き家の増加が社会問題化している。また同時に海外からの訪日外国人旅行客の増加により、宿泊施設不足が深刻化している。そこで空き家の有効利用手段として、民泊事業に脚光が当たるわけだ。

現状でもAirbnbなどの民泊サービスが訪日外国人を中心に人気を集めているが、法的にグレーゾーンな物件が多かったり、近隣住人との摩擦なども問題になっている。たとえば京都市は、2016年に同市を訪れた観光客のうち、およそ110万人が違法な民泊を利用しているという推計値を算出している。安全や衛生といった観点からも、違法民泊の撲滅は重要な課題なのだ。楽天LIFULL STAYは前述のように、住宅宿泊仲介業者として正規に登録される予定であり、発表会の席でも安全・安心を強調していた。当たり前のことではあるが、「合法・安全・安心」が楽天LIFULL STAYのサービスのキーワードということになるようだ。

●ニーズはどこにあるか
○楽天とLIFULLの役割は?

今回の事業において、楽天とLIFULLにとってのメリットはどのようなものがあるだろうか。まず楽天は会員数9000万人という強力な顧客基盤を持っており、これを生かして楽天LIFULL STAYに顧客を紹介できる。楽天には楽天スーパーポイントによる経済圏があり、利用者は民泊の利用を通じてポイントを貯めたり利用できる。日本における民泊事業の利用者は93%が日本人によるものと言われており、楽天の巨大な顧客基盤の持つ影響力がいかんなく発揮されるだろう。海外のユーザーに対するアピールについては、海外の民泊事業者をパートナーにして、パートナーを介して紹介する手法を考慮しているとのことで、おそらく日本に進出していない民泊事業者と提携すると考えられる。

また、ネット上の旅行・宿泊事業において大きな影響力を発揮できる機会を得るとともに、ユーザーの行動データについても新たな知見を得ることになる。ご存知のとおり今後は行動データなどのビッグデータが重要な役割を果たすと言われており、そこに新たな要素を増やせるチャンスになるわけだ。

なお、楽天にはすでに「楽天トラベル」という旅行サービスもあるが、当面は連携は考えていないという。民泊事業は楽天経済圏において、空き家問題や宿泊経済の新たなスタイルを提案するという位置付けになるという。

一方のLIFULLは800万件以上という不動産・物件情報を保有しており、さらに不動産情報サービス「LIFULL HOMES」の加盟店舗は全国で2万4000件を超える。新規の物件開拓についても強力なネットワークがあるわけだ。仮に登録物件の5%が民泊へ転用されたとしても40万件の物件が現れることになる。Airbnbの場合、日本での物件数はおよそ5万件と言われており、いきなり数倍の規模で対抗できることになるわけだ。

また、民泊新法では、都道府県知事に届出をした住宅宿泊事業者が、年間180日を上限に民泊サービスを提供できるようになる。このとき事業者には衛生確保や騒音防止のための説明、苦情対応、宿泊者名簿の作成・備え付けなどが義務付けられる。貸す側の責任と準備の手間が増えたわけだ。個人で家や部屋を貸したいという人がいても、こうした義務が障壁になるケースも多いだろう。そこで楽天LIFULL STAYのような仲介業者が介在することで、単に民泊サービスの提供者と利用者のマッチングのみでなく、民泊を提供したい人への運用支援や代行といった活動も可能になるわけだ。

●楽天が目指すポジション
○ライバルのいないうちにトップを目指す方針か

民泊新法の成立により、旅行・不動産業などが民泊事業への興味を示している。例えばウィークリーマンション大手のレオパレス21が民泊事業への参入を検討していると報道されている。またAirbnbやHome Awayといった既存の民泊・バケーションレンタル業も民泊新法の成立を歓迎するコメントを発表している。

しかし一方で、たとえばソフトバンクやLINE、あるいはグーグル、フェイスブックといった現行で楽天同様に大きなユーザー基盤を持つネット企業は、この分野にあまり積極的に参入してくる様子がない。強いて言えば、ソフトバンク系でYahoo! JAPAN傘下の一休.comに、古民家や町家などを丸ごと貸し出すバケーションレンタルがある程度だ。

もちろんこうした企業が今後半年の間に参入を表明する可能性がないわけではないが、強力なライバルが少なく、スタートダッシュで差をつけられるという事実は、楽天LIFULL STAYにとって有利に働くのではないだろうか。楽天とLIFULLの目論見通りに行けば、来年には数十万件の物件を抱えた民泊サービスが登場することになる。これにより既存の旅館業も含め、どのような影響が見られるのか、大変興味深い。
(海老原昭)

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