生まれ変わった姫路城! 外国人入城者数が3.6倍になった、そのワケとは【後編】

生まれ変わった姫路城! 外国人入城者数が3.6倍になった、そのワケとは【後編】

画像提供:マイナビニュース

●ARを導入し築城当時の城内を再現
世界文化遺産・姫路城。2009年から5年間、大天守部分の修理が行われたが、その工事中の様子を間近で見学できる施設「天空の白鷺」が人気を博した。さらに改修後もARアプリを導入するなど来城者が楽しめる仕掛けが随所に散りばめられ、訪日外国人の数は改修前に比べ3.6倍になったという。マイナビニュースでは関係者への取材をもとに、“平成の大修理ドキュメント”を2回にわたってお届けする。前編はこちら

後編は、グランドオープン後の姫路城の運営・管理について、関係者に話を聞いた。

○ARを導入し築城当時の城内を再現

姫路市よりグランドオープン後の運営・管理を委託された乃村工藝社。

まず着手したのが「展示の見直し」だ。改修前は、天守閣内に鎧や火縄銃、文献など多くの展示物が並んでいたが、グランドオープン以降はそうした展示物のほとんどを撤去。そのねらいについて、姫路城運営事務所の浅賀所長は「城の構造上の特性を理解して安全対策を練るとともに、築城当時の姫路城の姿を再現し、文化財としての価値およびその保存・継承の意義を伝えるためです。従来のガラスケースと比べると建物への負荷も少なく、見学者の動線も確保できます」と語る。実際、展示物を撤去したことにより混雑緩和につながり、以前に比べだいぶ回遊性がアップしたという。

それら展示物を撤去した代わりに新たな展示方法として導入されたのが、最新技術のAR(拡張現実)である。その名もARアプリ「姫路城大発見」。現存しない建物も、3DCGにより当時の姿が再現されている。

●文化財だからこその気配り
「大天守や西の丸櫓郡内を含めた姫路城敷地内城の15カ所に設置された“サイン”に携帯端末をかざすと、映像や解説文が映ります。これにより、口頭のガイドでは説明しにくいポイントもフォローできるようになりました。子供から大人まで、姫路城のもつ“文化力”を楽しみながら学べる展示になっています」(浅賀氏)

平成の大修理に続き、このARアプリの開発に携わったのが、乃村工藝社のデザイナー、奥田氏だ。「現実の三次元空間に3DCGを合成し、築城当時の姫路城の姿や城下町の風景を見ることができます。一方、城兵が火縄銃を撃つシーンなどの再現映像もあり、要塞としての城の役割も学べます」

城内には無料Wi-Fiも完備しているため、アプリのダウンロードも簡単。その上、外国人がネットで検索した飲食店を訪れるなどまちなか全体の回遊性向上にもつながった。奥田氏によれば、これらの施策が反響を呼び、現在は他の自治体からの問い合わせもあるのだとか。

また、城内の照明にもこだわりが。「姫路城は文化財なので、建物内で電気工事ができません。漏電が起きれば火災にもつながってしまいます。そのため、従来の蛍光灯より発電量が少ないオリジナル充電式の行灯型LED照明を開発。江戸時代の重厚な空気感を再現しました」(奥田氏)

楽しみながら学べる展示が話題を呼び、改修後早々に観光客が殺到。そこで、ホームページで混雑状況や整理券配布状況をライブカメラでリアルタイム発信する「姫路城大入実況」を開設するなど、来城者の安全を最優先しながら、その満足度向上を目指している。

●訪日外国人観光客へのアプローチ
○訪日外国人を積極的に誘致 パンフレットも19言語に対応

AR導入などの仕掛けが功を奏し、修理後の2015年には日本の城郭入場者で過去最高となる286万人を記録した姫路城。「世界文化遺産をひと目見たい」という訪日外国人の数も、改修前に比べ3.6倍に膨れ上がっている。

その背景には、海外への積極的なプロモーション活動がある。浅賀所長によれば、改修後にはファムトリップによるインバウンド誘致も行ったという。ファムトリップとは、ターゲットとする国から、旅行会社やメディア、ブロガーを招待し、特定のエリアや企業の情報をPRする視察旅行のことだ。

「姫路城が外国の方に人気のポイントのひとつに、外観の美しさも挙げられると思います。特に欧米の方たちからは『“白い城”は自分たちの美的感覚に合う』という感想をよく聞きますね。また、中国人の“爆買い”が体験型観光にシフトしたことも、訪日外国人増加の要因のひとつかと思います」(浅賀氏)

増え続ける訪日外国人対策として、姫路城のパンフレットは日本語を含め20言語に対応。さらにスタッフ入社時には英語の研修を行うなど、引き続きインバウンド対策に力を注ぐ。

「姫路市の経済波及効果は424億円で、特に宿泊・飲食サービス、運輸部門で効果額の半分以上を占めています」(春井氏)

かつての匠たちの技術に敬意を表しながら、ARなど現代の知恵を駆使して生まれ変わった姫路城。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
(平井万里子)

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