背水の陣のジャパン ディスプレイ、生き残りの鍵は「車載」と「有機EL」

背水の陣のジャパン ディスプレイ、生き残りの鍵は「車載」と「有機EL」

JDI"スマホ依存"脱却目指す

背水の陣のジャパン ディスプレイ、生き残りの鍵は「車載」と「有機EL」

画像提供:マイナビニュース

●大規模投資が重しに、市場環境の変化に合わせられず

「ジャパン ディスプレイ(JDI)にとって、これが最後のチャンス。日本のディスプレイ会社6社が集まってできたのがこの会社。日本の底力を見せるチャンスでもある」――。

8月9日に行われたJDIの経営方針説明会。6月21日付けで同社 代表取締役会長 兼 CEOに就任した東入來信博氏が発表した大規模な構造改革は、がけっぷちにある日本のディスプレイ産業の生き残りを賭けた挑戦となりそうだ。

○4期連続赤字が濃厚、「第二の創業」で構造改革

官民ファンドの産業革新機構を筆頭株主に、日立製作所と東芝、ソニーの液晶事業を統合して2012年4月に誕生したJDI。さらに生い立ちを遡ってみれば、セイコーエプソンや三洋電機、パナソニック、キヤノンといった日本企業の液晶ディスプレイ事業を統合してきた経緯がある。

2012年度と2013年度は最終黒字化していたものの、2014年に東証一部上場を果たしてから3期連続で最終赤字を計上している。2017年度も赤字は免れないとみられており、フリーキャッシュフローも赤字のまま、一度も黒字化していない。

東入來氏は「過去の大規模投資による固定費が膨張し、フリーキャッシュフローの赤字に至った。反省すべき状況にある」と分析しながら、「負のスパイラルに陥っていた」と話す。

ピーク需要にあわせて大規模な戦略投資を行ったものの、ボラタリティ(価格の変動性)が大きな分野への投資であったことから、市場環境の変化でリターンが生めなかった。そのため、フリーキャッシュフローの累積赤字が拡大し、減損処理、構造改革の繰り返しに陥っていた。

需要に合わせた経営リソースの取捨選択ができていなかった結果と言えるが、東入來氏も「目先のP/L(損益計算書)を考えると、『(構造改革を)やる』という判断ができなかったためだ。規模が拡大すれば変動費の削減で解決すると考えていたのかもしれない」と指摘する。

だが、今回は固定費の削減に初めて取り組む。目先の利益を気にせずに、「安定した収益体質を作ることが最も大事なこと。2017年度中にやり切る」(東入來氏)とし、「これがラストチャンス。利益をしっかりと確保できる会社を目指して、第二の創業に挑む」と決意を口にする。

○スマホ依存体質の脱却で収益安定化

JDIの構造改革は、大きく3つの柱がある。ひとつは、スマートフォン集中体制からの脱却だ。

2016年度実績でスマホ向けの売り上げ構成比は81%。これを2019年度に70%、2021年度には55%まで引き下げる。一方で事業拡大を狙うのが「車載」と「産業機器」「新規事業」で構成するノンモバイルビジネス。これらに経営リソースをシフトし、特に車載ディスプレイを収益構造の軸として位置づける。なお、新規事業が何にあたるのか、詳細こそ明かさなかったものの、2019年度に100〜200億円規模の売上を目指すという。

"スマホ依存"こそ脱却する意思を示すJDIだが、スマホ向け事業を縮小するわけではない。

「JDIは、高精細で低消費電力、狭額縁などで世界をリードするLTPS技術を持っている。また、来年から再来年にかけては18:9のFULL ACTIVE液晶パネルが立ち上がる。さらに、蒸着方式の有機ELパネルも高付加価値化を進め、2019年度より量産、収益に貢献することになる」(東入來氏)

●固定費削減のスリム化、有機ELシフトで「最後の戦い」へ
三本柱の2つ目は、「筋肉質な企業体質」への転換。

具体的には石川県・能美工場における生産を今年12月に停止。パナソニックとソニーの有機EL事業を統合した連結子会社「JOLED」による印刷方式の有機ELの生産にライン転換する意向だ。同時に、有機ELパネルの試作ラインを石川の第4.5世代の生産設備から、茂原の第6世代の生産設備へと移行する。

また、海外製造子会社の統廃合やEMSの活用、減損会計の適用といった固定費削減を進める。10月からは社内カンパニー制の導入によって顧客カテゴリー別に体制転換し、同時に海外で3500人、日本で240人の人員削減を行う。これらの施策によって、2017年度の特損として約1700億円を計上し、年間固定費で約500億円の削減を目指す。

東入來氏は、「2016年度には8300億円だった損益分岐点売上高を、2019年度に6500億円まで引き下げ、営業利益で400億円以上、営業利益率5%、フリーキャッシュフローで300億円以上の達成を見込む」と語る。逆算すれば、2019年度の売上高は8000億円の規模になる(2016年度は8844億円)。

また、みずほ銀行と三井住友銀行、三井住友信託銀行の3行より、1070億円の融資を受けて運転資金を確保したほか、今後はグローバルパートナーとの出資を含む提携により、財務体質、経営体質を強化する。「グローバルパートナーとの提携は、実行は先になったとしても、2017年度中には目処をつけたいと考えている」(東入來氏)。

○有機ELシフトも、韓国が先行

三本柱の3つ目は、前述の「有機EL」だ。

東入來氏は「有機ELなくして、スマホビジネスの将来なしと判断している。有機ELに集中することに迷いはない」と断言する。構造改革によって設備投資額こそ半減させるものの、研究開発費は拡大する考えで、2016年度実績の147億円を大幅に上回る250億円を2017年度に費やし、有機ELへのシフトを進める。

一般的にあまり知られていないが、有機ELには「蒸着方式」「印刷方式」という2つの製造方法があり、JDIはどちらも研究開発を進めている。

蒸着方式はスマホ向けに開発しているもので、2019年度より量産を目指す。一方の印刷方式はJOLEDによるもので、PCやタブレットといった中型サイズで量産化を目指している。有機ELの高コントラストといった特徴を生かして医療分野などの新領域へ提案を進めており、これが2019年度に利益貢献が見込める下地となっているようだ。「JOLEDを持つことが、JDIにとっての強み。蒸着方式と印刷方式の双方をカバーしたOLEDのリーディングカンパニーを目指す」(東入來氏)。

液晶パネルはLGやサムスンなどの韓国勢、BOEや天馬といった中国勢が力を持ち、有機ELパネルではLGがテレビ、サムスンがスマホでそれぞれの市場を独占、先行している。日本のディスプレイ事業の生き残りを賭けた最後の戦いは、構造改革の迅速な遂行なくして始まらない。

残された時間がないことは、東入來氏がもっとも理解している。だからこそ、6月の就任からわずかの期間で構造改革を取りまとめ、その成果を2017年度中に出すという即効性を重視した。破壊と創造を両立させて進める構造改革の成果は、銀行や出資を受ける予定の"グローバルパートナー"にとって、必須条件とも言える。「ひとつの遅れも許されない」という危機感がJDIの赤字体質を変えるのか、注視したいところだ。
(大河原克行)

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