MVNOの整理淘汰が進む試練の2018年、注目される楽天の動向

MVNOの整理淘汰が進む試練の2018年、注目される楽天の動向

画像提供:マイナビニュース

●失われていくMVNOの勢い
2016年までは大手キャリアから顧客を奪い、破竹の勢いで急成長してきたMVNO。だが2017年に入るとその流れが一転。大手キャリアの顧客流出防止策強化によって顧客獲得が難しくなり、ついには経営破たんするMVNOも現れた。今年からは急増したMVNOの淘汰が加速するなど、MVNO同士の生き残りに向けた戦いが加速する可能性が高いが、一方でMVNOからキャリアになることを表明した楽天の動きも注目される。
○大手キャリアの反撃で破たんするMVNOも

2017年は、MVNOにとって大きな転機となった年といえるだろう。なぜなら、それまで格安な通信料で大手キャリアから顧客を奪い、順調に契約数を伸ばしてきたのが、一転して思うように契約数を獲得できなくなってしまったからだ。

その理由は、MVNOへの顧客流出に危機感を募らせた大手キャリア側が、顧客流出阻止のため低価格のサービスを大幅に強化したからである。ソフトバンクは低価格ブランドのワイモバイルを強化し、NTTドコモは「docomo with」や月額980円の「シンプルプラン」など、より安価に利用できる料金プランの充実を図ってきた。

そしてKDDIは、MVNO大手のビッグローブを買収して傘下のMVNOを増やし、さらに「auピタットプラン」など安価な料金プランの充実を図ることにより、グループ外への顧客流出阻止を徹底している。そうした大手キャリアの施策が大きな影響を与え、MVNOへ流出する顧客が大幅に減少したのである。

MVNOの停滞ぶりはさまざまな数字から見ても明らかだ。MVNO大手のインターネット・イニシアティブ(IIJ)が発表した、2017年度第2四半期決算の内容を見ると、個人向けMVNOの「IIJmioモバイル」の四半期の契約純増数が6000人にまで減少している。2016年度第2四半期の純増数を見ると、6.4万契約も増加していたことを考えると、純増数の伸びはおよそ10分の1にまで落ち込んでしまっていることが分かる。

さらに大きな衝撃を与えたのが、「FREETEL」ブランドでMVNOとして通信事業を展開していたスマートフォンメーカー、プラスワン・マーケティングが、昨年12月に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、経営破たんしたことだ。同社の通信事業は11月に楽天が買収したことで受け皿となり、契約者がある日突然サービスを利用できなくなるという最悪の事態は免れている。

しかしながら同社は有名タレントを起用するなどして積極的な販売拡大を進め、MVNOとしても大手に迫る勢いを見せていた。それだけに同社の経営破たんは、MVNOの落ち込みを示す象徴的な出来事として、驚きを与えたことは確かだ。

●生き残るMVNO、生き残れないMVNO
○再編を見据える上でも注目されるIIJのフルMVNO化

MVNOにとっては非常に厳しい年となった2017年だが、大手キャリアのMVNOに対する危機感は強い。大手キャリアによる市場寡占を懸念する総務省が現在、新しい有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を実施しており、その結果によっては大手キャリアに対して再び何らかの指導がなされ、MVNOが再び有利になることも考えられる。だが総務省の大ナタがない限り、この傾向は今年も続くと考えられ、限られたパイを奪い合うMVNO同士の競争が一層激化することは必至だ。

その先にあるのは、MVNOの淘汰と再編であることは言うまでもない。そもそも700以上存在するMVNOが全て生き残り、キャリアと対抗し得る勢力になるというのは困難なことだ。かねてより言われている通り、かつてのインターネットサービスプロバイダーと同様、増え過ぎた事業者の整理淘汰が急速に進み、いくつかの企業やグループに集約される動きが、今年は急加速するのではないだろうか。

では、どういったMVNOが勝ち残ると考えられるだろうか。1つは、やはり企業体力のあるMVNOであろう。MVNOの多くは資本力が弱く、プラスワン・マーケティングもベンチャー故の資金力のなさが、結果的には破たんへとつながっている。それだけに、企業体力がある、あるいはMVNO以外の事業基盤を既に確立している企業が、MVNO再編の軸となる可能性が高いといえそうだ。

そしてもう1つは、他社との差異化要素を持つMVNOだ。MVNOは大手キャリアのネットワークを借りており、しかもその大半はNTTドコモのネットワークである。同じ料金で同じネットワークを借りていることから、元々差異化要素があまりないのだ。それゆえ他社と明確な差異化を図ることができたMVNOは、唯一無二の存在として生き残ることができる可能性が高い。

そうした意味でも今年注目されるのが、IIJのフルMVNO化である。同社は2016年に、NTTドコモと加入者管理機能の連携を申し込んでおり、2017年度の下期、つまり今年の3月末までにはフルMVNOとしてサービスを提供するとしている。

フルMVNOとなるには高い技術力と多くの投資が必要だが、一方でSIMを独自に発行できるなど、MVNO側のサービスの自由度が大幅に高まるメリットがある。IIJはフルMVNOによるサービスを、主として法人向けに提供する予定だが、将来的にはコンシューマー市場に向けたサービスとして展開することも考えられる。それだけに、同社のフルMVNO化の成否は、今後MVNOの差異化を進める方向性の1つとして注目されるところだ。

●楽天の動向に注目
○MVNOからキャリアへの転身を表明した楽天はどうなる?

そしてもう1つ、MVNO、ひいては今後の携帯電話業界の動向を占う上で大いに注目されているのが、楽天の動向である。楽天は昨年12月14日、総務省が既存の4G向けとして、新たに実施する予定の1.7GHz帯と3.4GHz帯の割り当てを申請し、キャリアとして携帯電話事業に参入することを表明したのである。

楽天はMVNOとして「楽天モバイル」を運営しており、プラスワン・マーケティングから買収した通信事業と合わせて140万を超える契約を獲得。MVNOとしては既に大手の一角を占める存在となっている。だが大手キャリアからネットワークを借りている立場上、昼間に速度が落ちやすいなど、大手キャリアと比べればネットワーク面で多くの制約がある。そうしたことからか、楽天はMVNOとして事業拡大するのではなく、自らキャリアになるという選択を打ち出したのだ。

だが回線を借りるだけでサービス提供できるMVNOと、自ら基地局の場所を借り、鉄塔などを敷設して充実したインフラを整備する必要があるキャリアとでは、全く別次元とも言うべき事業面でのハードルが待ち構えている。楽天は2025年までに最大6000億円の資金調達残高を見込んでいるが、大手キャリアは1年でその程度の金額をインフラに投資しているだけに、決して十分な額とはいえない。

それだけに、これからゼロベースでインフラを敷設し、大手キャリアに対抗し得る存在となるのは非現実的だとの見方が多数を占めている。そうした見方を覆し、明確に成功し得るプランを提示できるかどうかが、楽天には大きく問われている。

電波割り当ての申請は今年実施されると見られているだけに、楽天のキャリア化に関する動向は今年1つの山場を迎えることとなる。今後の業界全体の動向を占う上でも、楽天には大きな注目が集まることとなりそうだ。
(佐野正弘)

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