世田谷区と千代田線の結びつきを強める小田急

世田谷区と千代田線の結びつきを強める小田急

画像提供:マイナビニュース

●ダイヤ改正で千代田線直通系統見直し

多摩線と千代田線を直通する、現在の平日日中の急行。JR東日本の電車も、小田急線内まで乗り入れる

3月17日に実施される小田急電鉄のダイヤ改正は、代々木上原〜登戸間の複々線化工事完成によるもの。これにより、朝夕ラッシュ時の混雑率低下やスピードアップなど、さまざまな改善が実施される。列車体系も大幅に変わり、従来の「遅い」「混む」というイメージの解消を、同社は図っている。

注目すべきポイントはいくつもあるが、ここでは、代々木上原を接続駅とする、東京メトロ千代田線への直通列車に焦点を当て、その狙いとするところを考えてみたい。特に通勤ラッシュ時間帯以外の、平日日中、土休日のダイヤにおいて、意図するところが明らかなのである。
○多摩線から運転されている現在の千代田線直通

現在(ダイヤ改正前)、平日日中や土休日における、小田急線と千代田線の直通列車は、小田急多摩線の唐木田発着の急行が主力である。1時間あたりの運転本数は3本だ。一部の列車は、さらにJR常磐線柏・我孫子方面にまで直通しており、小田急、東京メトロの電車に加え、JR東日本の電車も充当されている。

なぜ多摩線〜千代田線直通が主であるかと言うと、小田急多摩センターなど、同じ新宿をターミナルとする京王相模原線と競合する駅が複数あることが要因ではないかと思われる。多摩ニュータウン方面と新宿との行き来は、所要時間や運賃などから京王が有利であるため、千代田線方面に「活路」を見出していたと考えられる。

ただ、この急行。前身である多摩急行時代から乗車率は高くはなかった。特に快速急行が停車しない向ヶ丘遊園や登戸から新宿へ向かう客が敬遠しがちで、新宿発着の急行に利用客が集中する傾向があった。

●千代田線直通は向ヶ丘遊園・成城学園前発着に
千代田線直通列車は、複線のまま残っていた下北沢駅付近の「ボトルネック」が解消されることによって、今改正で大幅に増発される。ただし、運転区間が変わる。

従来の多摩線唐木田発着の列車は、種別は急行、運転本数は毎時3本のまま新宿へ振り向けられ、新宿〜唐木田間の運転となる。これによって、新宿発着の優等列車が増強される。京王への対抗という面もあろうが、やはり、日中も変わらない新宿への大きな需要に応じたと見られる。

それに対し、向ヶ丘遊園発着の「準急」も毎時3本新設され、こちらが千代田線へ直通するようになる。さらに土休日に限り、成城学園前発着の準急が毎時3本加わり、成城学園前〜代々木上原間における千代田線直通準急は毎時6本となる。つまり、基本的に複々線区間内にのみ、千代田線直通が走ることになるのだ。

○各停用の線路を走る準急

準急の停車駅は、向ヶ丘遊園、登戸、狛江、成城学園前、祖師ヶ谷大蔵、千歳船橋、経堂、下北沢、代々木上原と千代田線内の各駅だ。注目されるのは、現在は各停しか停車しない狛江、祖師ヶ谷大蔵、千歳船橋にも停まること。これらの駅は複々線のうち、外側の各停用の線路にしかホームがない。

つまり準急は、特急、急行などが走る内側の線路ではなく、各停と同じ線路を走るということだ。各停用と急行などの優等列車用の線路を分離し、お互いが干渉することなくスムーズに走れるようにすることが、複々線化の主な狙いである。内側の線路には、快速急行などが日中も多数運転されるため、これ以上、列車を入れづらいという側面もあるが、敢えて各停用の線路に準急を走らせてまで、千代田線直通列車の停車駅を増やすという点に、小田急の狙いが透けて見える。

●世田谷区と狛江市がターゲット
小田急の新宿〜向ヶ丘遊園間は、おおむね東京都世田谷区と狛江市内を通っており、成城学園前を代表格に、戸建てを中心とする高級住宅街のイメージが強い。もともと東京都心に近く、開業時から人口も多かったため、駅も多めに設けられており、駅間の距離も短い。

東京メトロ千代田線の沿線には、日比谷や大手町といったビジネス街があり、通勤目的地として、小田急沿線からの大きな直通需要がある。世田谷区や狛江市はもちろんだが、朝夕ラッシュ時には本厚木、町田方面からの直通も設定されている。

さらに、初めて地下鉄線内に乗り入れた特急ロマンスカーとして話題になった「メトロさがみ」などもある。ダイヤ改正後は「メトロモーニングウェイ」「メトロホームウェイ」などとして増発されるが、2008年に登場した際、同社の特急としては初めて、千代田線直通列車の一部が成城学園前に停車したのだ。大手町〜成城学園前間は特急で30分ほどしかかからないが、通勤定期券の発行区間、発行枚数などから勘案して、小田急は座席指定制特急への通勤客の需要をつかんでいたと見られる。
○買い物客を取り込む施策

今回のダイヤ改正で設定された、平日日中、土休日の準急は、ラッシュ時以外でも、世田谷区などと千代田線沿線を行き来する大きな需要があることを示している。土休日に増発されることなど、ターゲットは住宅街から都内へ出かける買い物客であることが鮮明だ。

確かに、千代田線沿線には表参道、赤坂など、特に女性に人気があるエリアが連なる。大手町は近年、ショッピングゾーンとしても注目されている。さらに進んで、根津、千駄木は、谷中も含めて「谷根千」と呼ばれる人気観光エリアに成長した。

これらはいずれも、高級あるいはトラディショナルというイメージでくくることができるエリアだ。世田谷の住宅街との親和性は高い。それゆえの、今回の直通列車増強である。
今後、沿線住民の相対的な高齢化が進むことは明らかだ。しかし、東京都心に近いエリアは、若年層を中心に郊外からの回帰や人口の流入も見られるという。末永い利用客の獲得のため、遠方だけではなく、今回「足元」をも固める策を取ったと見ていいだろう。
(土屋武之)

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