自動運転初の死亡事故で進路は変わる? ウーバーの現在地と行く先

自動運転初の死亡事故で進路は変わる? ウーバーの現在地と行く先

画像提供:マイナビニュース

●事故直前に本社を取材、現地で感じたこと
自動運転車初の死亡事故を起こしてしまったウーバー。ライドシェアの生みの親である同社は近年、空飛ぶタクシーへの参入を発表するなど多分野への進出を目論んでいる。ウーバーは何を目指すのか。事故の影響はあるのか。直前の米国での取材結果を踏まえながら現在と未来を考えた。

○日本では正体が把握しがたいウーバー

先日の自動運転車の死亡事故で再び名前を聞く機会が多くなったウーバー。2009年創業の同社は、自家用車のドライバーと安価な移動を求めるユーザー(同社ではライダーと呼ぶ)をマッチングするスマートフォンのアプリを開発。ライドシェアというサービスを「発明」し、多くの追随者を生んだ。

しかし、多くの日本人がその名を聞いたことがあるにもかかわらず、多くの日本人は利用したことがない。タクシー業界が「危険な白タク」と称して導入に強硬に反対しているからだ。現時点では東京でのハイヤーによるサービスと、京都府や北海道の過疎地での地域輸送に限定されている。

つまり、日本にいる限りウーバーの正体を把握することは難しい。そう思っていた矢先、米国で本社および自動運転実験を取材する機会に恵まれた。例の事故が起こる2週間前のことだった。
○ウーバー本社の雰囲気は

筆者はまず、西海岸にある本社に足を運んだ。といっても、グーグルやアップルが本拠を置くシリコンバレーではなく、サンフランシスコのダウンタウンである。現在は新たなヘッドクォーターの建設を計画中というが、既存のビルの数フロアを本社とするスタイルもまた、ウーバーらしいと感じた。

オフィスに入ると雰囲気の良さに圧倒される。各自のデスク以外に多彩なシェアデスクやフリースペースがあり、リラックスした空気感。こうした環境からイノベーティブなアイディアが生まれるのだろう。

プレゼンテーションでは、昨年180日をかけて実施したライドシェアドライバーに対する改善、ライドシェアとは対照的に我が国でも急ピッチで浸透しているフードデリバリーサービスのウーバーイーツの説明のほか、初めて耳にする事業についての説明もあった。

●空飛ぶタクシーも研究中、営業飛行はいつ頃?
○パーキングにも目を向けるウーバー

初めて聞いたのは「シティプランニング」というテーマで紹介された事業で、具体的には公共交通のリサーチやコンサルティングだった。現時点で35都市を手掛けたそうで、その中には筆者も利用経験のあるジョージア州アトランタの地下鉄も含まれていた。ロンドンの地下鉄では昨年秋から金・土曜日限定で深夜運転が始まっているが、これのリサーチも担当したそうだ。

同社は駐車場にも目を向ける。日本ではパーキングシェア、つまり個人や企業が所有する駐車場を、使用しない時間に他人に貸し出すサービスが普及しつつある。これに対して、ウーバーはライドシェアを活用。自動車は98%の時間を駐車場で過ごしているとのことで、マンション居住者や商業施設利用者のウーバー利用費を補助することで、駐車場利用者を減らそうとしている。
○空飛ぶタクシーも自動運転もモビリティの一部

昨年、その構想が発表となったウーバー・エレベートも興味深かった。垂直離着陸が可能な電動小型飛行機を用いて短距離移動を提供するもので、自動車では渋滞などによって90分かかる距離をわずか9分でこなすという「空飛ぶタクシー」の一種だ。機体メーカーなどと研究を進めており、2020年に実証飛行を行い、2023年に有料での営業飛行を予定しているという。

ウーバーはこの小型飛行機を大量供給することで、ライドシェア並みに安価な移動として提供していきたいという。空中でも渋滞が起きるのではないか、空が暗くなるのではないかなど懸念材料もある中、どのように空のタクシーを実現していくかには興味を引かれる。

ウーバーはモビリティシーンを広い視野で見つめ、多くの人々がより快適で便利と感じる社会を作るべく、多角的にプロジェクトを進めているのである。自動運転もそのひとつだ。こちらについては、東海岸に近いピッツバーグでプレゼンテーションを受けるとともに、後席で体験もした。

●自動運転の完成度は高いと感じたが
○事故だけでなくクルマ自体も減らす自動運転

ここにはATC(アドバンスド・テクノロジー・センター)と呼ばれる自動運転部門が置かれており、2016年に研究施設がオープンした。ATCでは自動運転のメリットについて、交通事故を減らすとともに、シェアリングとの組み合わせで自動車自体の台数を大幅に減らし、都市空間に余裕をもたらすことを挙げた。

取材当時はピッツバーグ、サンフランシスコ、フェニックス、カナダ・トロントの4都市で200台以上が走り、2016年1月からの2年間の累計走行距離は320万キロと、ひとりの人間が一生で走る距離の数倍をこなしていた。

今回は2人のオペレーターが乗るボルボの自動運転車で15分ほど市内を走った。外観は屋根上のセンサーで自動運転車とひと目で分かるものの、運転マナーは自然で、制限速度を守り、赤信号では一時停止し、信号のない交差点は車列が途切れるまで待って通過した。

なので、2週間後に一報を聞いたときは驚いたが、事故が起こったことは事実である。ウーバーが今後、自動運転事業をどうするかは分からない。しかし、今のウーバーが少し前までのウーバーとは違うことは断言できる。
○タクシー業界との関係にも影響? 変わるウーバー

同社では創業者のトラビス・カラニックが昨年、社内問題などが原因で辞任した。新たにCEOに就任したエクスペディア出身のダラ・コスロシャヒは、トップダウンからボトムアップへと企業風土を一新すると表明した。

変化はすでに現れている。例えばライドシェアは、世界各地でタクシー業界との軋轢を生み出したが、一部の国ではタクシーとの協業という新しいスタイルを構築。日本でも同様のスタイルでの参入を目指したいとしている。

自動運転の分野は、グーグルから独立したウェイモをはじめ競合が多い。企業の論理として、競争には勝たねばならない。しかし、事故が起これば今回のように人命を失うこともある。ウーバーはCEOの交代と今回の事故を契機に、ユーザーやオペレーターの気持ちを第一に考えた進化を目指していくのではないか。個人的にもそんな方向性を望みたい。
(森口将之)

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