ビール人気復活の起爆剤となるか? キリンが仕掛けるクラフトビール

ビール人気復活の起爆剤となるか? キリンが仕掛けるクラフトビール

画像提供:マイナビニュース

●マンネリ化するビール
近年、ビール人気が低迷している。いくつか理由が考えられ、思いつくものを挙げると以下のとおりだろう。

まず、若者のビール離れ。もちろん絶対にやってはいけないことだが、バブル期によくみられた「一気のみ」といった習慣が少なくなり、ちびちびと飲むお酒に人気がシフトしている。また、缶チューハイといった酒類の台頭も大きい。居酒屋チェーンで誕生したチューハイが、缶入りというカタチで売られ、缶ビールの市場を大きく蚕食した。さらに、昨年に施行されたビールの安売り規制も影響しているだろう。
○マンネリ化してしまった日本のビール

ただ、もっともビール人気にかげりをもたらしたのは、マンネリ化だと思う。「アサヒスーパードライ」や「キリン一番搾り」といったブランドが力を持ちすぎ、「どれを飲んでも同じ」というイメージがまとわりついた。日本酒やワインなら、自分の好きな銘柄を見つけて飲むという楽しみがあるが、ビールにはあまりそうした愛好家はいない。出された缶ビールやジョッキを、あまりコダワリなく飲むのではないだろうか。

クラフトビールの可能性を語る、キリンビールの山田精二氏

そうしたビールのマンネリ化に風穴を開け始めているのがクラフトビールだ。クラフトビールは20年ほど前に流行した“地ビール”とイメージを重ねるとわかりやすい。小規模な醸造所で造られ、伝統的な製法が用いられる。この小規模というのがポイントで、全国各地にクラフトビールメーカーがあり、そしてそれぞれ味が異なる。つまり、これまでどこに行っても一律の味だったビールに個性が生まれ、好みの味を見つけるという楽しみが増えたのだ。

●生産地域を前面に押し出す戦略
各ビールメーカーは、ビール人気の復活のためクラフトビールに力を入れ始めている。なかでも積極的なのがキリンビールだ。

クラフトビールはアメリカで流行したが、日本ではキリンビールが率先して参入し始めた。そしてクラフトビールの醸造や各地のクラフトビールを提供する「スプリングバレーブルワリー」を2015年に開設。そこから一気にクラフトビール戦略が加速する。

そもそもスプリングバレーブルワリーは、キリンビールのルーツともいえる存在。横浜で大衆向けビールを醸造し、やがて麒麟麦酒となり、そして現在のキリングループとなった。つまりだ、横浜を拠点とした地ビール、いいかえるとクラフトビールメーカーが巨大化したともとれる。ただこれはキリンに限ったことではない。アサヒやサントリーは大阪を拠点にスタートしたし、サッポロに至っては発祥の地が社名になっているほどだ。
○多様化する食に合わせたクラフトビール

さて、ハナシをキリンに戻そう。クラフトビールに関して同社は積極的だと前述したが、もうひとつ注目したい戦略がある。それは地域性を前面に押し出していることだ。その根幹を担っているのが「タップ・マルシェ」シリーズ。このシリーズは2017年4月にスプリングバレーブルワリーやグランドキリン、ヤッホーブルーイング、ブルックリン・ブルワリーでスタートしたが、同年5月に常陸野ネストビールを加えた。

そして2018年5月から6月にかけて、伊勢角屋麦酒の「ベールエール」「ヒメホワイト」、Far Yeast Brewingの「東京ホワイト」「東京IPA」の販売を開始する。これによりクラフトビールの多様性が増した。

そのねらいは明らかに嗜好にあったビール選びという楽しみを浸透させることだろう。先述したようにビールには選ぶ楽しみが乏しかった。だが、食の多様化が進むにつれ、ワインや日本酒のようにフードペアリングを楽しむために、ビールも多様化させたい。「とりあえず“生”」という、昭和から続いているビールの習慣を変えられるか……。今後の展開を注視したい。
(並木秀一)

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