バフェット氏に引導? バリュー投資の終焉と緩和バブルの副作用 (完)

バフェット氏に引導? バリュー投資の終焉と緩和バブルの副作用 (完)

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 最後に取り上げておきたいのが、経済過熱感への懸念を示した発言である。バフェット氏は経済状況を「red hot(過熱している)」と発言したが、ジャネット・イエレン財務長官やパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が最もセンシティブになっているのが、経済過熱感によって引き起こされるインフレだ。これは紛れもなく金融緩和の副作用である。

【前回は】バフェット氏に引導? バリュー投資の終焉と緩和バブルの副作用 (5)

 イエレン財務長官は元々、「ヘリコプター・ベン」の異名が付けられたベン・S・バーナンキ氏の後継に選ばれたFRB議長であった。バーナンキ氏が「ヘリコプター・ベン」と名付けられたのは、2008年のリーマンショックを発端とした金融危機を受けて、ゼロ金利政策や量的緩和対策などの大規模な金融緩和を実施したためである。市場に大量の紙幣をばらまくことで経済を刺激し、リーマンショックからの回復を試みた。

 これらの政策を経て、アメリカの経済は当然ながら回復したものの、重要なのは大規模な金融緩和からの脱却であった。金融緩和の終了は金融引き締め(テーパリング)への移行であるが、経済全体へのダメージは相当に大きい。

 日本のバブル崩壊は、急激な金融引き締めが起因であったが、「バーナンキ・ショック」と称された株式市場の暴落は、将来的な金融引き締めに関する発言が引き金となっており、市場関係者は金融引き締めにはセンシティブなのである。

 そして、バーナンキ氏が行った大規模な金融緩和から、金融引き締めへの移行という重大な役務を担ったのがイエレン氏であった。イエレン氏は、市場との会話を丁寧に行いながら、ゆっくりとテーパリングへ舵をきっていった。結果として、特に大きな混乱はなく、FRBは段階的な金利の利上げに成功したのである。

 しかしながら、そんなイエレン氏が、5月4日に「経済が過熱しないように幾分かの利上げが必要である」と発言したことには驚かされた。元FRB議長のイエレン氏が財務長会に就任し、そのイエレン氏と軌を一にするパウエル現FRB議長のコンビによって、金融緩和は当面の間、継続すると思われていたからだ。

 緩和バブルによって高騰したビットコインは、イエレン氏の発言に先立つ4月16日に価格の上昇が頭打ちとなっていたが、5月1日のバークシャー社株主総会における「red hot」というバフェット氏の発言に続き、5月4日のイエレン氏の発言を経て、今度は全世界の株価が頭打ちとなっている状況だ。

 コロナ禍によって、世界が新しい時代に移り変わろうとしており、バリュー投資の成果が疑問視されていることは間違いない。しかしそれは、バフェット氏への引導ではない。バフェット氏は、コロナバブルによって緩和マネーがあふれ続けることで、企業が本来持つ実力だけではなく、金融資産の価値すら失わせることにつながりかねないことに、気付いているはずだ。だからこそ手じまいをし、今は静観を続けているのである。

 未曾有のコロナ禍と、未曾有の金融緩和を経た今後の株式市場の動向は、まさしく神のみぞ知るのかもしれない。そして、「投資の神様」と呼ばれたウォーレン・バフェット氏の判断が正しかったかどうかについても、数年後には明らかにされているはずだ。

(小林弘卓)

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