天使か悪魔か? 成長戦略実行計画案に盛り込まれたSPACの再検討 後編

天使か悪魔か? 成長戦略実行計画案に盛り込まれたSPACの再検討 後編

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 アメリカにおいて仕組みはすでに存在していたものの、2019年までは少なかったSPACの利用は、コロナ禍で急減に伸び始めている。2020年4月から6月に上場した企業数は60企業で、従来型IPOが24件のところSPAC利用のIPOが36件、7月から9月に上場した企業数は152企業で、従来型が82件、SPAC利用が70件と、従来型とSPAC利用が、ほぼ同等数に増加していった。

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 その後、10月から12月になると、上場した186企業のうち、従来型が57件に対しSPAC利用が129件、2021年1月から3月では、上場した389企業のうち、従来型が91件に対しSPAC利用が298件と、明らかにSPAC利用のIPOが従来型のIPOを凌駕し始めているのだ。

 もちろん、コロナ禍後よりSPACが急増した理由は、これまで従来型のIPO市場が好調だったからであり、あえてSPACを利用する必要性が無かったからである。しかし、コロナ禍によって状況が一変した。経済が大きなダメージを受けた一方で、アメリカにおいては大規模な財政出動が行われ、コロナバブルといわれるほどの状態でもある。

 つまり、コロナ禍から脱却して経済が正常化する前に、緩和バブルの元で、いかに短期間でコストをかけずに上場をしようという思惑が見え隠れするのである。実際に、「テスラ」を想起させて上場した「ニコラ」の暴落など、まるで詐欺まがいの上場も紛れ込んでいるのだ。ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーが「SPACは厄介者」「SPACは文明を愚かに、モラルを堕落させる」と批判したのも頷ける。

 しかしながら、従来型のIPOについて、個人投資家に購入のチャンスが巡ってこないという不平等な状況もある。つまり、個人投資家にとっては、IPOの公募を受ける機会が宝くじ並の抽選率であるのに対し、証券会社に近い富裕のみが、優先的に公募を受けることができるという現実があるのだ。これは日本でも起こっていることであろう。

 つまり、そんな不平等な状況に嫌気がさし、コロナバブルで力を得た個人投資家たちによって、SPAC利用が促進されているという側面を忘れてはならない。今や個人投資家が機関投資家を打ち負かすほどの勢力であることは、先日のアメリカ「ゲームストップ社」の株価騒動で証明された。仮想通貨バブルもしかりである。

 それでは日本ではどうかといえば、アメリカほど個人投資家の盛隆は無い。そこにあるのは、デジタル化に遅れてAmazonやGoogleなどの外資企業に席巻される憂き目を見逃せない経済産業省が、日本でもスタートアップ企業やベンチャー企業から第2のGAFAを送り出したいという強い思いにある。だからこその成長戦略実行計画案への盛り込みなのだろう。

 しかし、その目の前には、闇雲に上場をさせることを良しとしない金融庁が立ちふさがっている。従来のIPO型の上場であっても、粉飾などによる上場廃止が頻発している日本においては、そう簡単に審査をくぐり抜けさせるわけにはいかないという言い分である。

 果たしてSPACは、日本の経済成長を促進させる天使となるのか、日本の株式市場を狂わす悪魔となるのか。今後のSPAC検討の行方については、十分に注目しておきたい。

(小林弘卓)

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