力強い雇用統計は夢か現か幻か 各市場の値動きと次のターニングポイント 前編

力強い雇用統計は夢か現か幻か 各市場の値動きと次のターニングポイント 前編

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 8月6日に公表されたアメリカ雇用統計は、農業分野を除く非農業部門雇用者数が前月比94万3,000人増と、前月の93万8,000人増に続く大きな伸びとなった。平均時給も2カ月連続で前月比0.4%増、失業率も5.4%に低下と、全てがポジティブであったが、この雇用統計を受けた各市場の値動きを確認していきたい。

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 まず、アメリカのダウ平均株価については、雇用統計を受けて史上最高値を更新した。前回の記事でも触れたとおり、経済指標の改善は株式市場にとって上昇の材料となるが、たとえ悪化したとしても金融緩和の継続が期待されるため、株式市場にとってはこちらも上昇の材料になる。

 よってここ最近までは、どのような指標であってもポジティブに捉えることができるという、非常に心地の良い状態だったといえるが、この状態が長く続くとは考えにくい。強い経済指標が続けば続くほど、FRB(米連邦準備制度理事会、アメリカの中央銀行としての組織体)によるテーパリング(金融緩和縮小)観測が加速することになるからだ。

 つまり過度に金融緩和を続けてしまうと、将来的なインフレ(物価上昇)高進リスクが増大していくため、いずれかの段階で金融緩和(利下げ)の終了から引き締め(利上げ)へ、金融政策を転換しなければならないのが常である。そのバランス調整が世界各国の中央銀行に役割だ。

 万が一、インフレ高進リスクを抑えきれない状態となれば、それが通貨安に波及し、現在のトルコで起きているようなハイパーインフレを引き起こす。2007年には1トルコリラ約100円だったものが、現在は1トルコリラ約12円と、たったの14年で貨幣の価値が10分の1となってしまったらと考えてみれば、いかに恐れるべき事態であるか想像に難くない。トルコの中央銀行は、もはや機能していない状態といえる。

 一方で、金融緩和の縮小は株式市場にとって非常にネガティブな要因である。市場に対して十分なコンセンサスを与えなれば、株式市場が暴落する可能性もある。約8年前、当時のFRB議長の唐突なテーパリング発言によって、ダウ平均株価は約500ドル下落し、翌日の日経平均株価は1,000円以上も暴落したことは、FRBのトラウマであろう。

 ハイパーインフレを起こさぬように注意しながらも、市場に十分なコンセンサスを与えなければならないという辛抱強い手綱捌きがFRBに求められてはいるが、その成否は誰にもわからない。なぜなら、これまでの金融緩和が、リーマンショックなどの金融不安への対処だったことと異なり、今回対峙する相手が世界規模のパンデミックであるからだ。(続く)

(小林弘卓)

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