無印良品ソックリと話題の渋谷「300円ダイソー」 商品開発のプロはどう評価するか

渋谷にダイソーの新業態店「Standard Products」オープン 無印良品ソックリと話題

記事まとめ

  • 渋谷に100円ショップ・ダイソーの新業態店「Standard Products by DAISO」が開店
  • 価格帯は300円(税込330円)が中心で、「無印良品のパクリでは」といった声もある
  • 渋谷には、低価格帯のIKEAやフライング タイガー、AWESOME STOREなどが出店

無印良品ソックリと話題の渋谷「300円ダイソー」 商品開発のプロはどう評価するか

無印良品ソックリと話題の渋谷「300円ダイソー」 商品開発のプロはどう評価するか

両者の商品を並べると…(それぞれ左がStandard Products、右が無印良品のアイテム)

 3月26日、東京・渋谷に100円ショップ「ダイソー」の新業態店がオープンした。その名も「Standard Products by DAISO」(以下、スタンダードプロダクツ)。価格帯は300円(税込330円)を中心に、生活雑貨を展開していくという。開店初日に一部商品の品切れが報じられるなど話題を集めているが、一方で“無印良品のパクリでは”なんて声も聞こえてくる。

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《ダイソーの新業態が無印良品ぽい。》

《「渋谷のダイソー新店舗」パッと見無印良品。タオル、皿、電球、洗濯バサミ、水筒、スプレー、犬テント、キャンプ用品とか良かったかな?また行かないと》

《マークシティ渋谷にオープンする「スタンダードプロダクツ」を見に行ってきた
雰囲気、無印良品みたいね(笑)》

 スタンダードプロダクツにまつわる感想をSNSで検索すると、無印良品と比較するこうしたツイートが散見される。なかには《無印良品を丸パクリしたとんでもない店舗》なんて口さがない意見もあるが、実際のところ、どうなのだろうか。オープン初の日曜日となる3月28日、スタンダードプロダクツを訪れた。

 時刻は午前11時。前日27日には《本日入場制限をさせていただきお待たせしてしまいました》との“お詫び”がダイソーHPに掲載されていたが、この時は制限がかかるほどの混みあいではない。が、レジ前にできた5〜6人の列は常に途切れず、また一部欠品のお詫び文が店頭にも掲載されており、「小さくたためるエコバッグ」など売り切れ間近と思しき商品もあった。

 店内は風景写真などが随所に展示され、天井はダクトむき出しのレイアウト。商品が置かれる棚は木製で、どことなく無印良品の店舗を連想させる。商品理念を説明するスクリーンバナーには、《スタンダードであること。》と大文字であり、次のようにつづく。

《余計な飾りや個性は省いていく。そのかわり品質や使い勝手は、できる限り高めていく。それが、Standard Products。たとえばカトラリーには金属加工産業の町、新潟県の燕製を。(中略)ものに対する誠実な姿勢を貫くことで、お客さまに届けていきたい「ちょっといい」という実感。それが「ずっといい」になるように。私たちだからできるスタンダードを、つくり続けていきます》

 どことなく無印良品っぽさを感じさせなくもないコピーである。


■商品の違いは…


 スタンダードプロダクツから徒歩で10分ほどのところにある『無印良品 渋谷西武』店も訪れたが、こちらは人気がまばらだった。店員は「今はたまたま空いている」と説明するが、コロナの影響でおよそ1年ぶりとなったセール期間(良品週間)とは思えない人の少なさである。駅直結の渋谷マークシティ内に店舗をかまえるスタンダードプロダクツとでは、立地条件の違いもあるだろうが……。

 商品も比較してみよう。今回は「皿」「コップ」「スリッパ」そして「A4サイズのファイルスタンド」を両店で購入してみた。ここからは、バイヤーとして約730品の商品開発に携わってきた流通アナリストの渡辺広明氏の評もご紹介する。

 まず、皿である。スタンダードプロダクツは「300円平皿21cm」(税込330円、以下同)と「深皿12cm 白」(110円)、無印良品の「磁器ベージュ鉢・中」(350円)「磁器ベージュ鉢・小」(350円)。スタンダードプロダクツのものも磁器で、大皿に関してはほとんど価格差はない。

「スタンダードプロダクツはグレーなどのカラー展開があり、マットな加工が施されています。無印良品のものは、“いかにも”なシンプルさ。強度は別として、デザインは前者のほうが手が込んでいるといえるかもしれませんね。ただし、スタンダードプロダクツは中国製で、無印良品は日本製です。そこに価値を見出すか否かでしょうか」(渡辺氏)

 スタンダードプロダクツの「ダブル耐熱ガラスコップ」は330円、無印良品の「耐熱ガラス マグカップ」は390円。60円の差があるが、これは「取手」の有無だろうか。前者は240mlで、後者は360mlと容量も異なる。コップに関してはどちらも中国製だった。

 ちなみにこれらワレモノに関しては、無印良品は店員が梱包材に包んで渡してくれる。一方、スタンダードプロダクツは古新聞が手渡され、サッカー台で自分で包むことになる。この辺りは100円ショップのダイソーと同じルールである。

 価格差が大きかったのが、スリッパ。スタンダードプロダクツの「ソフトスリッパ」は330円で、無印良品の「綿天竺・落ちワタ入りルームシューズ」は1290円(無印良品にはより廉価な499円のスリッパ商品もあるようだが、今回は見つけられなかった)。

「無印良品はオーガニックコットンを使用していますから、そもそも素材からして違います。ただ、それを抜きにしても、作りには大きな差を感じますね。スタンダードプロダクツは縫製が甘く、すぐにへたりそうです。これを買うなら、普通の100円ショップのスリッパでもいいのでは。こうしたアパレル系の商品には、やはり無印良品に一日の長があるかもしれません」

 スタンダードプロダクツを始め、最近“ちょっといい日用品”に取り組み始めたダイソーには、研究改善の余地があるということだろうか。比較商品にはないものの、渡辺氏はスタンダードプロダクツの「アカシアフォーク&スプーンセット」(330円)に注目する。

「アカシアの天然木を使った調理器具です。アカシア食器は普通のダイソーでも300円商品として取り扱いがありました。フォークは先の処理が甘く、いかにも木を切って作りましたという仕上げ。無印といわずとも、ニトリの木製カトラリーのほうが、質は高いでしょう。私の見立てでは、ダイソーという会社は、これまであまり多くの品質クレームを受けてこなかったのではないでしょうか。100円均一で買った商品はすぐ壊れたり、質が悪くても『そういうもんだよね』で納得できる節がある。ところが、スタンダードプロダクツではそうはいきません。“ちょっといい”のブランドを打ち出していくとなれば、求められるハードルは上がる。今後は、質と値段のバランスを100円より高い価格帯で追及する、その経験が求められますね」

 最後にファイルスタンドだが――こちらは共に日本製で、モノがモノだけに、見た目の大きな違いはない。が、スタンダードプロダクツは330円であるのに対し、無印良品は490円である。何個か買いそろえて使うであろう商品だけに、ここは前者に利がありそうだ。

 いかがだろうか。ネットで指摘されている”スタンダードプロダクツは無印商品の真似”という意見にも、納得できる気がするが……。


■似せたのではなく、似ちゃった?


 渡辺氏は「真似というのはちょっと違うと思います」として、次のように続ける。

「販売価格を抑え、かつ“ちょっといい”を打ち出し、そして万人に受ける日用品を売る……これらの条件を満たすと、どうしてもシンプルなものに行きついてしまうのだと思います。だからスタンダードプロダクツは、結果的に無印良品に似てしまった。見方をかえれば、無印良品は自身のシンプルさが“アダとなった”といえるかもしれませんね。いま、渋谷は“日用品戦争”の様相を呈しており、低価格帯の日用品を販売する、IKEAやフライング タイガー コペンハーゲン、AWESOME STOREも出店しています。これらには北欧テイストやアメリカンなど、個性的な世界観がある。裏をかえせば人を選ぶ、デザイン代にもお金がかかる世界観です。これらの店の商品とスタンダードプロダクツは競合しないわけで、もっとも影響を受けるのは、やはり無印良品でしょうね」

 無印良品は、昨年10月に衣料品、今年1月には雑貨の価格見直しをはかったばかり。世界観が近い、より安い価格帯のライバルが現れた形だ。「もともと無印良品は“ブランド料”を値段に載せすぎなんですよ」(アパレル関係者)なんて声もあるが、今後はどのように戦っていくのだろうか。

「ダイソーが参入してくるかどうかはさておき、無印良品も同じ路線でより安く売るライバルの登場を予測していたのでしょう。ブランド価値をより高める先手を打っています。一昨年、銀座にホテルを開店した(MUJI HOTEL GINZA)のも、ブランドを深化させる取り組みでしょう。また、先日『東京有明』店を訪れた際には、暮らしのすべてを無印良品で揃えられるようにする、多様化の方向性を感じました。ここは昨年12月に有明ガーデン内にオープンした店舗で、お米や野菜を扱い、カレーパンが売りのベーカリーも備えています。戸建住宅まで売っていて、コンセプトは『百貨店を超える“百八貨店”』。今後は1980年から続くブランドを、より強く打ち出していくのだと思います」

 スタンダードプロダクツについてもはこんな意見だ。

「100円ショップの歴史が長いダイソーには、これまでの商品開発の過程で“もうちょっと高く売れるなら実現できるのに”というアイデアが溜まっていたはずです。今後は、そうした商品もどんどん登場していくはず。そうなると、今のような“無印良品に似ている”方向性からは、いい意味で離れていくかもしれませんね」

デイリー新潮取材班

2021年3月31日 掲載

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