「脱・自前」で日本企業は変わるか セブンイレブンがダイソーの商品を売る深い意味

■変革を拒む「タコツボ社会」


 ホンダは4月5日、米ゼネラル・モーターズ(GM)と新たな電気自動車シリーズを共同開発し、2027年以降に全世界で展開すると発表。コンビニ大手のセブンイレブンでは、100円ショップで知られるダイソーの日用雑貨の販売をスタートさせ、6月までにほぼ全店で導入する見通しだ。さらに、東急不動産ホールディングスは3月、コロナ禍で業績が低迷する子会社の東急ハンズ(東京・新宿)を売却し、主力であるオフィス開発や再生可能エネルギー事業に注力する方針を示している。

 興味深いのは、こうした業種も業態も異なる企業の動向を報じるニュースで、同じ表現が繰り返し用いられていることである。それは「自前主義からの脱却」に他ならない。

 これまでの日本の企業では「自前主義」、すなわち、他に頼らず独力でまかなう仕事のやり方が美徳として捉えられてきた。だが、そうした価値観こそが、縦割り組織やセクショナリズムをもたらす「タコツボ化」に繋がり、変革を拒む日本社会の組織や仕組みを生み出しているのも事実だった。

 そして現在、世界中を混乱に巻き込んだコロナ禍によって、多くの企業が自分の力(自前)だけで乗り切ることの限界を痛感し、そこからの脱却を模索する流れが顕著になっている。


■“自分の強み”を見極め、さらに伸ばしてゆく


 長年にわたって多くの民間企業や行政の組織変革に携わってきた、デロイト トーマツ グループ執行役の松江英夫氏は、今月20日に発売された著書『「脱・自前」の日本成長戦略』(新潮新書)のなかで、次のように述べる。

〈日本の多くの企業や行政組織は、新しいものを取り入れて変革するよりも、過去から現在までのやり方を踏襲することを優先しがちです。また、外部の多様なメンバーと交わり、何かを“生み出す苦労”よりも、内部のメンバーのみで抵抗を少なく物事を進める“やりやすさ”を選びがちで、結果として組織全体が内向きになる傾向にあります〉

 松江氏によれば、“脱自前”は、「内向きなタコツボ社会」から抜け出し、〈他者との連携をオープンに推し進めることによって、“自分の強み”を見極め、さらに伸ばしてゆくための新しい関係を構築すること〉を目指しているという。さらに、具体的なアプローチとして、「3つの視点」を提示する。それが「(1)分解する」「(2)デジタルを活用する」「(3)外と組む」である。

■「飲食店の二毛作」が可能に


 その一例として松江氏が挙げるのは、飲食事業を手掛けるスパイスワークスの取り組みだ。コロナ禍で時短営業を要請された飲食店は、夜間の売上が減少。ランチ営業で収入減を補おうにも、居酒屋ではランチ用の食材の仕入れや、メニュー作りのノウハウがない。

 そこでスパイスワークスが始めたのは、従来から取引のある生産者から食材を一括して仕入れ、飲食店にランチ用のレシピや販促品をパッケージにして提供するサービスだった。

〈今までは飲食店といえば、「仕入れ、商品開発、調理」までを一貫して“自前”で行うスタイルが一般的でしたが、この取り組みは「仕入れ+商品開発」を代替するプレイヤーを組み込むという“脱自前”です。この一連の動きによって、「飲食店の二毛作」が可能になったのです〉

 つまり、バリューチェーン(仕事を進めるための全体工程)を分解し、外のパートナーと組むことで新たなビジネス機会を創出したわけである。冒頭で取り上げた、ホンダとGMの提携強化や、セブンイレブンの店舗におけるダイソー商品の展開についても、同様の分析が可能だろう。


■本業の再定義


 さらに、こうした「視点」に根差したアプローチを進めると、企業側に新たなメリットがもたらされるという。

〈全体の仕事を分解し、デジタル活用、外部プレイヤーとの連携を積極的に検討することで、本来の自らの強みであり、将来の成長に繋がるコア領域である“本業”の姿が見えてきます。こうした“脱自前”による“本業の再定義”には大きな意味があります〉

 先述の東急不動産による東急ハンズ売却などは、まさに本業の再定義という観点から下された決断だろう。松江氏は“脱自前”の必要性についてこう主張している。

〈過去の日本の成長を支えてきた自前主義をすべて否定するつもりはありません。しかし、これから日本が成長するうえで、足かせになっている仕組みや価値観を今一度見直す必要があると強く感じています。「自前主義に裏打ちされたタコツボ社会」から“脱却”して、日本らしい変革を加速することが、今求められているのです〉

デイリー新潮編集部

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