コンビニ「24時間営業」紛争 オーナー語る“2年間休みなし”“手取り20万円”の実情

コンビニ「24時間営業」紛争 オーナー語る“2年間休みなし”“手取り20万円”の実情

24時間戦っています

■24時間営業で不便が生じた「コンビニ」紛争の明日(1/2)


 かつて不夜城といえば特別な場所だったはずが、24時間営業の小さな不夜城は、いまや全国に5万数千を数えるという。それで便利になっただけならいい。そこが紛争の拠点となり、コンビニエンスの名に反して不便が生じているとしたら。しかも明日は見えず……。

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 セブン-イレブンの「開いててよかった」というコピーの登場は、1970年代。言葉通りの実感とともに記憶している人が多いようだが、今では「開いて」いないのは論外、許されざることなんだそうである。

 そう思わされる事態が顕在化したのは、2月19日付の「弁護士ドットコムニュース」で、セブン-イレブンのフランチャイズ(FC)加盟店が営業時間を短縮し、本部と対立している、と報じられたのがきっかけだ。なにが起きているのか。東大阪市にあるくだんのセブン南上小阪店に説明してもらうのが早いだろう。

「本部に伝えたうえで2月1日、それまでの24時間営業を、朝6時から深夜1時までに切り替えました。すると地区担当者から通知書が届き、そこには“契約書に抵触しており、このまま時短営業を続けると契約解除になる”ということが書かれていました」

 そう語るオーナーの松本実敏さん(57)に、そこに至る経緯を尋ねた。

「大学が近いので学生バイトでやりくりし、昼も授業がない4年生に入ってもらって回していました。ところが去年、4年生が5人卒業してしまい、5月にはマネージャーだった妻もがんで亡くしました。この8カ月で3日しか休んでいません。ここ2年ほどは人手不足が深刻で、新しく入ったバイトも深夜勤務が多いとすぐ辞めてしまう。僕が朝8時から夜8時まで仕事し、翌日も同じシフトで働くつもりでいたら、遅番のバイトが来られなくなり、僕が夜10時から朝6時まで働き、その後も朝8時から12時間働いたことも」

 さすがにキツいので、時短に踏み切ったという。2月7日、本部との話し合いが持たれたそうだが、

「すでに7日間、契約違反の時短営業をしたので、契約解除するといわれ、1700万円と書かれた紙を見せられて、このくらい賠償金が発生すると告げられました。ところが『弁護士ドットコム』で報じられると、本部でサポートするから24時間営業に戻してください、と伝えられて」

 それでも納得がいかない点が多く、2月27日には、

「営業時間短縮をオーナーが選択できるようにしてほしい、という要望書を社長宛てに持っていきました」


■本部だけが儲かる仕組み


 コンビニエンスとは「便利」とか「重宝」といった意味なのに、事態はなにやら正反対の様相である。もっとも、さる弁護士は、

「FC制度はそもそも、自分の意思でこのビジネスを選んだオーナーと、経営ノウハウを提供する本部との、対等の契約に基づいています。その契約で24時間営業が義務づけられている以上、違反すれば違約金を求められるのは当たり前」

 と突き放すが、松本さんは反論する。

「町の小さな酒屋さんなど、商売を続けようと思ったら、いまはコンビニを経営するしかありません。契約書を交わす段階では、オーナー側が“365日、24時間など無理”と言うと、本部側は“オーナーを助ける制度があり、旅行に行く方も多い”と説明する。でも、いざ契約すると、ヘルプ制度はほとんど使えません」

 さらに、コンビニは本部だけが儲かる仕組みで、

「オーナーは、生かさず殺さず年貢を課される、江戸時代の百姓みたいです」

 と言って、続ける。

「売上から仕入れ値を引いた粗利に対し、平均60%ほどのロイヤリティがかかり、残ったお金から人件費や消耗品をやりくりします。水道光熱費は、セブンでは8割を本部が負担してくれますが、袋代やお箸代も加盟店持ちです。こうして経費が引かれて残ったお金から、さらに保険料や税金を引いたのが手取りです」

 では、手取りは具体的にいくらか。松本さんは、それには口を閉ざすので、セブンの別のFCオーナーに匿名を条件に尋ねた。

「毎日、夫婦で12時間以上店に立ち、ほぼ休みなく働いて、売上こそ月千数百万円ですが、ロイヤリティや人件費を支払うと残るのは30万から40万円。そこから保険料や税金が引かれ、手取りは20万から30万円です。とにかく人件費がきつい。東京都の最低賃金は、2018年に985円になりましたが、08年は766円でした。上昇分はすべてわれわれの負担増です」


■「避難する最後の人に」


 むろん、どのコンビニも同じではなかろうが、また別のセブンのオーナーも、

「2年ほど、休みなく睡眠5時間で毎日働き、過労で1週間ほど入院してしまいました。こうして私と妻がフルで働いても、2人合わせてギリギリ中小企業の社員くらいの儲けです」

 と吐き捨てる。『コンビニオーナーになってはいけない』の共著者でジャーナリストの北健一氏が補う。

「夜中にアルバイトから電話があれば対応せざるをえず、電話に脅えて寝られないという声も聞きます。加えて人手不足で、深夜は割増し賃金を払っても人が集まらず、オーナーか家族が入るしかない。また各本部は、コンビニが社会のインフラ機能を担っていると説明します。間違いではないですが、驚いた話も。大雨が降ると氾濫しやすい川の近くのコンビニのオーナーが、本部社員から“洪水のときは地域から避難する最後の人になってください”と指導されていて、川が危険水位に達して消防団が避難を促したとき、逃げるのを拒んだというのです」

 それはともかく、なぜ利益が出にくいかというと、

「本部と加盟店では損益分岐点が異なり、夜間だけ切り取った加盟店側の収支は、人件費がかさむため多くの店で赤字。一方、本部は粗利が少しでも上がれば利益が出るわけです」(同)

 コンビニ加盟店ユニオンの吉村英二副委員長も言う。

「駅前でも終電がなくなれば人は減るので、深夜、利益が出ている店は、私が知るかぎりほとんどありません。しかし、今回の南上小阪のオーナーさんのように、短時間営業に踏み切れる人は稀。オーナーの多くは、本部に許してもらえず、泣く泣く廃業しています」

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年3月14日号 掲載

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