「回らない回転寿司」がブーム!? “特急レーン”導入でこんなにあるメリット

■元気寿司がトップランナー


 国語辞典の『大辞林』(三省堂)は、「形容矛盾」の具体例として「丸い三角」と「熱い冷水」を挙げている。では「回らない回転寿司」はどうだろうか?

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 回転寿司の大手チェーンで、「皿に載った寿司が、レーンで回転しない店舗」が増加傾向にあるという。そこで大手5社の動きを表にまとめてみた。ご覧いただきたい。

 くら寿司だけは“脱回転”の動きが鈍いようだ。しかし残りの4社を見てみると、アプローチの方法は2種類あることが分かる。経済担当の記者が解説する。

「『はま寿司』、『かっぱ寿司』、『元気寿司』の3社は、一部の店舗で回転レーンを廃止し、来店者に直接、寿司を運ぶレーンに切り替えています。回らないので『特急レーン』や『ストレートレーン』と呼ばれていますが、タッチパネルで注文し、寿司の載った皿が自動的に目の前まで運ばれてくるのが一般的です」

 普通の寿司屋とは違い、職人に声をかけるわけではない。ここが1つのポイントだろう。「本物の寿司屋は敷居が高い」と考える層は、依然として少なくないのだ。

「一方の『スシロー』は、従来型の店舗は回転レーンを存続させています。それとは別に子会社に“回らない回転寿司”を経営させており、こちらはレーン自体が存在しません。都内に店を構える『杉玉』は居酒屋に軸足を置き、『スシローコノミ』は持ち帰り寿司とイートインの折衷に近い業態です。やはり普通の寿司屋とは一線を画しています」(同・経済担当記者)


■業界も消費者も成熟


「回らない回転寿司を食べるのなら、普通の寿司屋に行けばいいのに」と首を傾げる向きもあるだろうが、やはり“回らない回転寿司”と“普通の寿司屋”は、似て非なるものであることが分かる。

 消費者にとっても「回らない回転寿司」のメリットは多い。気軽に店を訪れ、タッチボタンを押すだけで、「自分のために握られた寿司」を味わうことができる。仏頂面の寿司職人に気を遣う必要もない。

 会社側はコスト削減が期待できる。元気寿司が自社の来店客を調査したところ、全注文のうち、回転レーンの寿司が取られた比率は僅か15%だったという。85%は客が自分で注文した寿司なのだから、回転分は人件費でも原材料費でも無駄が多いことが明白だ。

 フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は「今後は“回らない回転寿司”の比率が増していく可能性が高いでしょう」と予測する。

「回転寿司は1970年代に最初の興隆を迎えますが、寿司という“ご馳走”が目の前を流れる興奮が人気の理由でした。それから半世紀が経ち、業界も成熟期を迎えました。消費者側も、様々な場面に応じて回転寿司を“利活用”する経験値を手に入れたと思います」

 先日、千葉氏が夕方に大手チェーンの回転寿司を訪れると、店内は高校生のカップルが目立っていた。そして彼らは寿司を手に取ることはなく、もっぱらスイーツを食べていたという。

「今の若い人は、回転寿司をファミレスのように使うのかと感心しましたが、よく考えれば、大人も変わりません。多忙な時のランチタイムなら、ぱっと回転寿司に入り、回転レーンの皿を素早く食べて勘定するのがベストでしょう。一方、休日の午後なら、自分で注文した寿司を落ち着いて味わいたいと思うはずです。駅前や繁華街の店舗なら回転レーンは存続し、ロードサイドや住宅街の店舗なら特急レーンだけのタイプが増えていくと見ています」(同・千葉氏)

 近年は「グルメ回転寿司」と呼ばれる、地方発で高級志向のチェーン店も成功を収めている。大手チェーンにおける“脱回転寿司”は、「グルメ回転寿司は高額すぎるけど、自分もお好み寿司を楽しんで見たい」という層に歓迎されているようだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月14日 掲載

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