モスバーガーが11年ぶりの通期赤字 新業態で高級バーガー路線も苦しい未来か

記事まとめ

  • モスバーガーが19年3月期決算で純損益9億円の赤字となり、11年ぶりの通期赤字となった
  • モスバーガーの退潮は、店舗経営者の高齢化による店舗減少が原因との指摘もある
  • 新業態店舗を開店して高級バーガーを展開していくが、未来は苦しいという

不振「モスバーガー」を苦しめる構造的な問題、高級店舗も救世主にはならず?

赤字の原因は食中毒に非ず


 共同通信は6月13日、「モス、横浜で新業態店舗 7月開店、高級バーガー」(電子版)の記事を配信した。

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《モスフードサービスが、1000円台の高級なグルメバーガーをメニューに加え、カフェを融合させた新業態の店舗を7月に横浜市で開店する方針であることが13日、分かった。ハンバーガーを軸とする新型店舗は2015年に東京都内に開店した「モスクラシック」以来、4年ぶり。来月にも詳細を発表する》(註:全角数字を半角数字にするなど、デイリー新潮のフォーマットに合わせた、以下同)

 昨年からモスは苦境に喘いでいる。例えば同社の公式サイトには《事故のご報告とお詫び》という記事が現在も掲載されている。

《2018年8月、長野県のモスバーガー2店舗において、腸管出血性大腸菌O121による食中毒事故が発生し、同時期に関東・甲信地域のモスバーガー計19店舗をご利用の28名の方が感染されるという事態が発生いたしました。発症されたお客様とそのご家族の方々には、多大なる苦痛とご迷惑をおかけいたしましたこと、心より深くお詫び申し上げます》

 18年7月27日に3175円だった同社の株価は、食中毒事故が発生してから下落を続けた。今年19年6月26日は2350円。約26%の下落率だ。

 5月には全国紙も赤字転落を伝えた。例えば朝日新聞は見出しに《モスバーガー11年ぶり赤字 2019年3月期》と打った。

《19年3月期決算は純損益が9億円の赤字になった。通期の赤字は11年ぶり。昨年8月に発生した食中毒でフランチャイズ店の売り上げが落ち込み、補償金として11億円の特別損失を計上したことが響いた。

 売上高は662億円で前年比7・2%減。既存店の来客数は今年2月まで17カ月連続で前年割れが続いていた。中村栄輔社長は「赤字になった責任を受け止めている」。3月は既存店の来客数が前年同月を上回り、回復の兆しもみえるという。20年3月期決算は純損益で10億円の黒字を見込む》

 5月の既存店・対前年同月比データを見てみると売上高は98・5%、客数は98・4%、客単価が100.1%という数字になる。昨年9月には既存店の売上高が84・9%まで落ち込んだ。確かに“回復の兆しもみえる”のかもしれない。

 だが、フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は「食中毒を原因とする報道は表面的で、他に大きく影響しているものがあるのではないでしょうか」と疑問を投げかける。

「モスの退潮は、店舗経営者の高齢化が本当の原因だと見ています。例えば公式サイトに『店舗数の推移』というコーナーがあります。これによると国内店舗は15年3月期には1405店あったのが、19年3月期には1319店と減少しています。数にして86店舗。後継者がいないことから店を畳んだケースが考えられます」


■高級路線も厳しい未来?


 別の広報資料を見ると、15年の1405店のうち、FCは1348店。率にして95・9%と、モスバーガーはFC率が高い。

 しかもモスが1000店舗を達成したのは91年のことだ。それから28年が経過している。確かに店舗経営者が“高齢化”していても不思議はない。

「バブル景気だった頃、日本の外食産業は“数こそが力”でした。店舗数を増やし、右肩上がりの成長を続けることが経営の根幹でした。そういう時代にフランチャイズというビジネスモデルは、うってつけだったと思います」(同・千葉氏)

 加盟者募集の公告を打つと、脱サラを目指す会社員が押し寄せる。本部で研修を積んで出店に漕ぎ着ければ、それなりの収入が約束される――こうした“Win-Winの関係”が、かつての日本には存在した。

 だが近年になり、FCというビジネスモデルは急速に輝きを失いつつあるという。なぜなのだろうか。

「2000年代に入り、日本では少子高齢化が加速。外食産業は“成長の限界”に突き当たります。消費者の絶対数が減ったわけですから、右肩上がりの成長は不可能。更に消費者が要求するサービスのレベルも高くなりました。その結果、知名度の高い外食チェーンであっても、単に店をオープンするだけでは売上が伸びない、という時代になったのです」(同・千葉氏)

 とあるFCチェーンでは、加盟者を募集して研修・教育を行っても、90%は“退学”を余儀なくされるという。本部が「FC店で自立できるように」と厳しいカリキュラムを課すと、それほどの脱落者が生まれてしまうということだ。

 近年、FCチェーン展開を行っている外食産業大手は、「レベルの高い店舗経営を行い、飲食店の実情を熟知している同業他社にFCを委ねる」というケースが増えてきているという。

 具体的には「いきなり!ステーキ」や「焼肉ライク」のFCを幸楽苑が、串カツ田中のFCを愛知と東京で居酒屋やカフェを経営するDREAM ONが展開しているという具合だ。

 流通業界に詳しい記者は「これらは確かに成功例ですが、近年FC展開に着手して、店舗数の少ない状態にあるから可能だという点は重要でしょう」と言う。

「居酒屋『鳥貴族』もFC展開を行っていて、全店舗数の3分の1強が相当しますが、これは元社員などを経営者として育成した“のれん分け”の一種です。モスでも似た制度がありますが、店舗数を拡大するだけのものには至っていないようです。既存のオーナーの高齢化による閉店を押しとどめることは難しく、今後、モスの店舗網が縮小するのは不可避だと考えられます」

 そこで冒頭の「高級バーガー路線」に期待が集まるというわけだ。客数が減少するなら、客単価を上げる路線で新境地を切り開くという道が考えられる。単なる値上げは消費者の反発を招くが、高付加価値を実現するための値上げなら納得してくれる。

 モスの高級化路線は、店舗経営のセオリーに従った、極めてオーソドックスな経営判断のように見える。だが前出の千葉氏は「報道でも指摘されていますが、モスが4年前に始めた高級路線である『モスクラシック』は決して成功しているとは言えません」と指摘する。

「モスクラシックでハンバーガーをオーダーするとパティを目の前の鉄板で焼きます。手作り感の高い、良質なサービスを提供しようとしているのは間違いありません。ただ従業員には、モスバーガーより工程数が多い、複雑なオペレーションが求められています。大規模チェーン展開に向く業態ではありません」

 日本のフードサービス業は市場の縮小に直面しながら、“業態の多様化・高品質化”も求められている。看板メニューにあぐらをかいていると、あっという間に転落してしまう。サイドメニューを常に見直すなど、提供する商品のクオリティを高め続けなければならないのだから大変だ。

 FC展開をしている大手も変わらない。これからの時代、FCオーナーは、経営ノウハウに熟知するなど、真のプロフェッショナリズムが必要とされる。本部の看板頼みでは生き残れない。

 FC本部も同じだ。かつて本部にとってFCオーナーは「ロイヤリティを払ってくれるお客さま」だったが、そんな時代は過去のものになった。現在、本部とFCオーナーは経営上、お互いが仕組みとして向上するための重要な“パートナー”という位置づけだ。

 モスのFC路線は今後、どんな未来を加盟店に提示するのだろうか。それは日本の外食産業においてFCの存在意義と、改革の道筋を示す可能性がある。そのために関係者の大きな注目を集めているのだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月4日 掲載

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