早くも販売開始された“五輪選手村マンション”、「晴海フラッグ」最大の弱点は

 展望台からレインボーブリッジや東京タワーが見渡せ、中央区観光協会より夜景八選に選ばれた晴海ふ頭公園。近くには豊洲新市場、有明テニスの森公園が見える。

 その晴海ふ頭に隣接する、東京ドームの3・7倍となる約18ヘクタールの広大な敷地に23棟のマンションが立ち並ぶ。来年の東京五輪・パラリンピックの選手宿舎を改修して建設するマンション群、晴海フラッグである。

 23棟のうち、今回分譲されるのは、14〜50階建ての19棟(50階建てタワーは2棟)で4145戸である。賃貸は4棟で、1487戸。都心では“史上最大の分譲”と注目されているが、完成は4年後。約1万2000人が住むことになるという。

 その晴海フラッグの第一期購入受け付けが7月26日より始まる。売出し戸数は600戸超。販売価格は、5000万円台から1億円以上。4月に開業したモデルルームは、窓からレインボーブリッジが見られる映像もあるという。モデルルームへの入場は予約制だが、すでに約4500組が来場し、予約登録者は約2万2000人にものぼったというから、関心は極めて高いようだ。果たして、この物件は“買い”なのだろうか。

「僕は、お勧めできませんね」

 と語るのは、マンション問題に詳しい住宅ジャーナリストの榊淳司氏。

「最寄り駅は、都営大江戸線勝どき駅ですが、徒歩で20分は遠すぎます。また、この2、3年で勝どき駅の拡張工事を行いましたが、それでもキャパオーバーです。私は実際、朝のラッシュ時間にこの駅を使ったことがありますが、ものすごく混んでいますよ。駅のまわりにタワーマンションがどんどん建っているからです。そんなところに、新しく23棟もマンションができたら、駅は機能しなくなるでしょう」

 交通混雑の解消のため、東京都は環状2号線を使い晴海フラッグと新橋駅を約10分で結ぶBRT(バス高速輸送システム)の運行を計画している。ピーク時に1時間で20便程度(乗客2000人)を運行するというが、

「2台が連結したBRTでも、輸送力不足です。まだ、計画は立ってはいませんが、シャトルで東京駅まで結んだりしないと、問題は解決しないでしょうね。このままでは、不動産としての価値は低いと言わざるをえません」


■1棟まるごと売れ残り


 晴海フラッグの(タワー2棟を除く)1戸当たりの平均面積は約84平方メートル。都内のマンションは約63平方メートルなので、少々広めと言える。

「面積が広いので、坪300万円ほどと単価を抑えています。晴海フラッグの近くにある、もっと駅よりのマンションでは坪400万円弱ですから、割安感はありますが、果たして売れるかどうか。第一期販売分で600戸超ということですが、マンション販売では、第一期が一番売れるものです。私の経験からいえば、約4100戸のうち、1000戸ほどは売ってくると思っていました。これは販売主が弱気になっている証拠。第一期の販売で即日完売くらいの売れ行きでないと、完成の4年後に売れ残る可能性もあるとみています」

 この晴海フラッグ、海が見えない部屋なら、坪200万円台半ばというから、さらに割安感がある。が、湾岸マンションはそもそも供給過剰で、売れ残りも多いという。

「晴海では、住友不動産が昨年秋に400戸ほど売り出したマンションがあるのですが、相当数が売れ残っています。晴海フラッグは、五輪が終わって3年後の完成ですが、今年10月の消費税増税で確実に景気が悪化します。五輪後も景気が下降する可能性が十分考えられますので、マンションの売れ行きにも影響がでてきますよ。最悪の場合、1棟まるごと売れ残りなんて事態も起きかねません」

 晴海フラッグを販売するのは、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、住友不動産など大手10社だ。

「大手デベロッパーは、正直言って、マンション供給過剰で液状化の危険もある湾岸地域ではもうマンションを建てたくないというのが本音です。ところが、都から格安な値段で土地を購入できたから開発に着手したわけです。選手村もつくるわけですから補助金もでます。五輪の後、建物は外殻だけ残して内装をすべて作り直すことになります。坪300万円で売れれば、ボロ儲けですよ」

 晴海フラッグでは、学校から商業施設まで、すべて備わっているという。

「幼稚園や保育園、小中学校が敷地内にあり、大型商業施設もできますから、街としては完結しているので、敷地内から出なくても生活ができます。また、燃料電池車用の水素ステーションも設けるそうです。完成したら、最先端の街になるでしょうね。まあ、10年くらいそこで暮らす分には問題ないでしょうが……」

 問題は、10年後。中古物件となったときだ。

「マンションを購入したい人が、第1条件にあげるのが、駅から近いかどうかということ。ですから、駅から遠いというのは、やはり致命的ですね。場所も不便となれば、中古だと、見向きもされません。将来的に価格がかなり下落する可能性が高いですね」

 転売目的の物件としての価値はあまりなさそうである。とにかく、他より安くマンションを購入したいという人にはオススメの物件のようだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月26日 掲載

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