苦境の日高屋が「ちゃんぽん専門店」をオープン、リンガーハットの独壇場を切り崩せるか

日高屋、新業態の「ちゃんぽん菜ノ宮」昨年オープン リンガーハットの独壇場崩せるか

記事まとめ

  • 「日高屋」を展開するハイデイ日高は、「ちゃんぽん菜ノ宮」を昨年12月にオープン
  • 「日高屋」の既存店の業績は芳しくなく、売上げが100%を割っている
  • 外食でちゃんぽん屋と言えば「長崎ちゃんぽん リンガーハット」が独壇場になっている

苦境の日高屋が「ちゃんぽん専門店」をオープン、リンガーハットの独壇場を切り崩せるか

日高屋」を展開するハイデイ日高(本社/埼玉県さいたま市、代表/高橋均)が新業態として「ちゃんぽん菜ノ宮」(以下、菜ノ宮)を昨年12月にオープンした。場所は、JR大宮駅西口から徒歩15分ほどの国道17号線のロードサイドだ。95%が駅前立地という同社にとっては珍しいことだ。その狙いは?

■「働き方」改革で「ちょい飲み」が減少


 まず、「日高屋」の現在の動向について述べる。

「日高屋」の既存店の業績は芳しくなく。2020年2月期(2019年3月〜2020年2月)では、19年3月度から11月度まで前年同月比で100%を割り込んでいる。

 2020年1月10日付の『日経MJ』の「2020トップに聞く」というコーナーでハイデイ日高の高橋均社長がインタビューに答えていた。この既存店の動向についてこう述べている。

「働き方改革によって、ちょい飲み需要が減少して、夜11時以降の入店客数がガクッと減った。ほとんどの店で営業時間を短縮している。都心のオフィス街立地に強かったが、働いた後に立ち寄るサラリーマンの需要が減っている」

 売上げが100%を割っている要因をこのように認めており、その対策として消費増税があった10月には、「餃子(6個)」(税込230円)の価格を据え置いてのぞんだ。

「これによって餃子が18年11月と比べて売上が2割近く伸びた。このほか生ビールなどの定番メニュー4品の価格据え置きは客数回復に効果があった」

 実際、19年11月の既存店売上高は前年比-0.2%にまで回復。「低価格に挑戦したことが売上回復の要因」ということになるだろう。

 先の記事の中で「菜ノ宮」をオープンしたことに関してはこう答えている。

「得意としてきた駅前立地、低価格、長時間営業のビジネスモデルは転換期を迎えてきている。専門性のある業態を展開していく。昨年のちゃんぽん専門店に続き、今年中に中華そばの専門店と餃子の専門店を開く予定」

「餃子は若い人や女性に人気のメニューになっている。これまで取り込めなかった女性が食べやすいメニューの開発も進めていく。安いだけでなく、おいしさで付加価値を高める」

■「日高屋」が一都三県にこだわるワケ


 外食で「ちゃんぽん屋さん」と言えば「長崎ちゃんぽん リンガーハット」(以下、リンガーハット)の独壇場だ。ここで「リンガーハット」と「日高屋」を比べてみる。

「リンガーハット」は2019年2月末に686店、同社ではほかにとんかつの「とんかつ濱かつ」など112店舗を展開し、総店舗数で約800店となっている。そこで売上高は約470億円で営業利益率は6.3%(2019年2月期)、1店舗あたりの年商は5875万円となる。

 一方の「日高屋」は同じ2019年2月末に約420店舗で売上高420億円、営業利益率は11.3%、1店舗あたりの年商は1億円となる。

 数字上では「日高屋」の方が「リンガーハット」よりも生産性が高い。

 店舗の布陣で比べると、「リンガーハット」は全国展開しているのに対し、「日高屋」は関東圏のみで、しかも東京都211店舗、埼玉県108店舗、神奈川県70店舗、千葉県49店舗(2019年年12月末)とほとんどが一都三県である。

 なぜ日高屋は関東圏に集中しているのか。その理由は高い売上高が見込める立地であることに他ならない。そして、工場が埼玉県行田市の1カ所のみにあるからだ。

 そこで現在のクオリティを維持しながら全国展開を進めるのであれば、工場を他のエリアにつくる必要がある。地縁のないエリアに進出することは非常にリスキーだ。そこで、既存のエリアにこだわりながら、既存の日高屋の商品の生産ラインを活用して、工場の稼働率を上げる、という作戦に出たものと筆者は考える。

■「ちゃんぽん」メインにメニューを絞り込む


 初めて「菜ノ宮」を訪ねたのは12月下旬。店名の「菜ノ宮」とは、「野菜がたっぷり」というアピールだろうが、意味が分かりにくい。「ちゃんぽん日高屋」の方が浸透しやすいのではないか。ただしここで「日高屋」を名乗ってしまうと、新鮮味に欠けると考えたのだろうか。

 店頭にあるアルバイトの募集告知で「日高屋」のグループ店舗であることが分かった。上に大きく「Web募集!」とあり、「日高屋バイト 検索」で気付いた。それにしても「オープン時給手当300円UP」というのは高額だ。

 11時〜22時の勤務時間で「高校生」「一般」ともに通常1020円〜がオープン手当付きで「1320円〜」。深夜(22時〜翌1時)に至っては通常1275円〜にオープン手当が付いて「1575円〜」となっている。今日の人材集めにはこれほどの時給が必要ということだ。

 店内は木材をイメージした薄い茶色を基調にしたデザイン。席は整然と配列されていて各テーブルに1つずつタブレットの端末が置かれている。カウンター席は1人客と想定しているから、タブレットは1人分の距離を保ちながら整然と並んでいる。

 ちゃんぽんのメニューは「豚骨ちゃんぽん」660円(税込、以下同)、「味噌ちゃんぽん」690円、「醤油ちゃんぽん」690円、「ピリ辛豚骨ちゃんぽん」730円。ほかに「皿うどん」790円、「餃子(5個)」200円、「ミニ丼(昆布生姜)」155円、定食として「ニラレバ炒め」定食780円、単品500円、「唐揚げ」定食810円、530円等々。「餃子」の“200円”は定番としての訴求効果は高いだろう。

 “ちょい飲み”の象徴であるアルコールとおつまみのラインアップは「日高屋」と同様。「ハイボール」290円、「レモンサワー」290円は相変わらずアルコール度数が高く酔っ払えるのがうれしい。「イワシフライ」240円もある。ただし、車利用の多い店であるから既存の駅前立地と比べるとちょい飲みのお客さまは少ないのではないか。

■オペレーションの効率化を追求


 フロアスタッフにオーダーしようとしたところ「ご注文はすべてタブレットでお願いします」という。このような形で、オペレーションの省力化を図ろうとしているのだろう。キッチンをのぞいてみると、作業動線が一本で働きやすく、ここでもオペレーションの省力化が図られている。

「日高屋」が経営マスコミに取り上げられるようになったのは2000年に入ってからである。その中で筆者の記憶に鮮明に残っているのは『日経MJ』の記事である。そこでフォーカスされていたのはキッチンの作業動線のことであった。具材のバラエティや量目が1ポーションずつ計量されて均一のクオリティのものを作ることが可能で、かつ働きやすいキッチンになっている。このような部分では「日高屋」は他に先んじてきた。さらに「菜ノ宮」にはチャーハンがないので、「日高屋」よりもオペレーションは効率化されている。

 ちゃんぽんは「豚骨ちゃんぽん」と「ピリ辛豚骨ちゃんぽん」を食べた。スープはクリーミーさが抑えられてすっきりしている。具材のイカ、エビ、アオヤギなどがバリエーションを豊かにして「健康的な日常外食」を実感させる。ほかにちゃんぽんは2種類あるが、4種類のバラエティはリピーター利用を発掘することであろう。

 率直に述べて、「ちゃんぽん屋さん」としての価値において「リンガーハット」と「菜ノ宮」を比べると「リンガーハット」に安定感を感じる。しかし、「菜ノ宮」は立ち上がったばかりで、これからブラッシュアップは重ねられていくだろう。

 今後ハイデイ日高屋が挑む新立地開拓と新業態開発は同社に大きなメリットをもたらすと予想する。現状約450店に対し同社のホームページでは「600店舗構想」を掲げている。多業態を持つことによって、業績の動向によっては既存の「日高屋」のブランドを変更することも可能であるし、ロードサイド立地を開拓することによって得意とする駅前立地での自社競合が回避される。また、一都三県を中心に店舗が増えていくことで既存の工場の稼働率が高まり生産性も上がる。

「日高屋グループは一都三県を制覇する」と言われる日が近いのではないか。

千葉哲幸(フードサービス・ジャーナリスト)
ライバル誌である柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』両方の編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴三十数年。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月5日 掲載

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