【助成金の解説】両立支援等助成金/岡 佳伸

■育児介護休業法改正!育児介護休業規定を改正して両立支援等助成金を活用しよう

 現在子育て支援のため、男性の育児休業取得率向上を目的として政府は様々な施策を行っていますが、伸び悩んでいました。育児休業取得率は、女性は8割台で推移している一方、男性は低水準となっています(令和2年度:12.65%)。

 男性の育児休業取得推進のために企業が育児休業を取得しやすい取り組みや個別の支援を行うことや、出産前後でも取れる出生時育児休業を制度化することにより、結果的に男性の育児休業取得者が増加することを目的としています。

 育児介護休業法の改正施行は令和4年4月と10月に分かれています。内容としては4月施行の改正が育児休業に関する情報提供や意向確認、有期雇用契約労働者が入社1年未満でも育児介護休業が取得できるようにされたこと、10月施行分は出生時育児休業制度導入と幅広いものとなっています。育児介護休業が取得し易くなるために両立支援等助成金等国の様々な支援策も用意されていますが、育児介護休業法に準拠した育児介護休業規定の整備とともに育児介護休業を推進する取り組みが必要とされています。

■今年度の両立支援助成金改正点と概要

 今年度は両立支援等助成金が大幅に見直されました。令和3年度からの主な改正点は下記になります。

・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)が中小企業に限定されるとともに1事業主1回限りの助成に変更されました。内容も大幅に見直され育児目的休暇への助成が廃止となり、代わりに代替要員加算と男性育児休業取得率向上に関する助成金が設けられました。
・両立支援等助成金(育児休業等支援コース)の内容が見直され、職場復帰支援加算が廃止になり、業務代替支援に関する助成に変更になりました。
・両立支援等助成金介護離職防止支援コースは大きな変更はありません。

 上記3コースに関する概要は下記になります。助成対象は原則中小企業になります。

■各コースの育児介護休業規定に関する規定例

 両立支援等助成金では支給申請時に育児介護休業規程が現行法に基づき正しく規定又は改正されていることが必要なこととともに、各コースに対応した条文を盛り込んでいることが必要とされています。規定例を下記に記載します。

・全コース共通して「休業前の職場に復帰すること」が原則とされています。本人が異動等を望んだ時以外には休業直前の部署及び職務に復帰させなければなりません。

(現職復帰規定例)
【復職後の勤務】
第1条 育児・介護休業期間が終了したときは、原則として、終了した日の翌日から休業直前の部署、職務及び所定労働時間で復帰するものとします。
2.前項にかかわらず、本人の希望による場合および組織の変更等やむを得ない 事情がある場合は、復職の時期を遅らせ、または復帰後の部署および職務の変更をおこなうことがあります。ただし、会社都合によって復職の時期を遅らせる場合には、会社は、その期間について休業前の平均賃金の60%の休業手当を支給します。
3.復職の時期が到来したにもかかわらず、正当な理由なく復職しないときは、自己都合退職したものとみなします。

・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)は今年度から業務整理や引継ぎに関して規定する必要があります。

【育児休業時の業務整理】
第2条 会社は、育児休業を取得する労働者が生じたことに伴い当該労働者の業務を代替することとなった労働者の業務の増加に伴う負担を軽減するため、育児休業を取得する労働者の業務の整理・引き継ぎに係る支援を行うとともに、当該労働者の業務を代替することとなった労働者への引き継ぎの対象となる業務について、休廃止・縮小、効率化・省力化、実施体制の変更、外注等の見直しを検討し、検討結果を踏まえて必要な対応を行うこととします。

・育児休業等支援コースでは育休復帰支援プランの策定及びプランに基づいた支援が必要です。

【育休復帰支援プラン】
第3条 会社は、育児休業の取得を希望する従業員に対して、円滑な育児休業の取得及び職場復帰を支援するために、当該従業員ごとに育休復帰支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施します。
2.育児復帰支援プランに基づく措置には、下記事項を含むものとし、育児休業を取得する従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施するものとします。
(1)業務の整理・引継ぎに係る支援
(2)育児休業中の職場に関する情報及び資料の提供

・介護離職防止支援コースでは介護離職防止支援プランの策定及びプランに基づいた支援が必要です。

【介護休業および介護休業制度支援プラン】
第4条 会社は、介護休業の取得または仕事と介護の両立に資する勤務制度(以下、「介護制度」という)の利用を希望する従業員に対して、円滑な介護休業の取得及び職場復帰並びに円滑な介護制度の利用を支援するために、当該従業員ごとに介護支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施します。
2.介護休業の取得を希望する従業員の介護支援プランに基づく措置には、下記事項を含むものとし、当該従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施するものとします。
(1)業務の整理・引継ぎに係る支援
(2)介護休業中の職場に関する情報及び資料の提供
3.介護制度の利用を希望する従業員の介護支援プランに基づく措置には、下記事項を含むものとし、当該従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施するものとします。
(1)介護制度利用期間中の業務体制の検討

■両立支援等助成金活用のポイント

・育児休業中、介護休業中の労働者に関して給与及び復帰後の時短勤務時の給与については育児介護休業規定通りにする必要があります。労働者に関して有利な取扱いとして給与の欠勤控除や時短控除をしない時は、育児介護休業規定に基づいた運用がされていいないとして不支給になることがあります。
・休業明けの勤務は「原職復帰」が前提になります。「原職復帰」以外の場合は原則助成金の対象にはなりません。「原職復帰」以外の職に復職する場合は本人の希望であることが必要でその旨の申出書等を確認されます。
・「原職復帰」後の労働時間で時短勤務等を行う場合は、その時短勤務が必ず育児介護休業規定に定められていなければなりません。
・「休業に関する申出書」の写しが必ず必要になります。休業期間の短縮や延長に関しても「休業期間の変更に関する申出書」の写しが必要です。
・労使協定等で育児介護休業対象者を除外する場合は、必ず労使協定を結ぶ必要があります。助成金申請時には労使協定写しの提出が必要になります。育児介護休業規定に対象者を除外する条文があるにも関わらず、その旨の労使協定が締結されていない場合は、望ましく無いとされて対象条文を削除するように指導されることがあります。
・助成金支給申請時に対象労働者が在職中であることが必要になります。

■令和5年度の改正予定

 両立支援等助成金の各コースはそのまま継続される予定です。その中でも介護離職防止支援コースは、新たに介護を申出た労働者に対する周知措置、介護休業中に雇用した代替要員の採用や手当支給による業務代替え支援に関しても助成措置が取られる予定です。

■まとめ

 育児や介護に関して雇用保険の給付(育児休業給付、介護休業給付)を申請することだけであれば、必ずしも育児介護休業規定の制定は必要とはされていません。しかし、両立支援等助成金等国や地方公共団体の支援策を活用する場合は、育児介護休業法に基づいた育児介護休業規定(又は就業規則等に盛り込む)を制定しなければなりません。

 具体的には厚生労働省が公開しているモデル育児介護休業規定の詳細版のような規定が望ましいとされています。助成金支給申請前に労働局の雇用環境均等部(室)等の相談窓口や社会保険労務士に自社の規定類の確認を行って貰いましょう。

筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)

大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント

【webサイトはこちら】
https://oka-sr.jp

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