【主張】中小への波及は転嫁次第

 春季労使交渉の集中回答日を迎え、改めて賃上げ機運の高まりが明らかになった。金属労協の先行大手では満額回答が続出し、賃金改善額の単純平均は8000円を超えた。流通大手など多様な産業・業種の労組で構成する最大産別UAゼンセンでは、翌3月16日現在の集計で正社員組合員の賃上げ分が9144円、短時間組合員は時給ベースで61.8円(制度昇給込み)の引上げとなっている。

 集中回答日当日の金属労協の会見では、金子晃浩議長が「回答指定日を待たずに回答する意向が多くで示されるなど、大変異例の展開」とコメント。「今後に続く中堅・中小労組の賃上げを後押しすべく、引き続き産別と連携を図りながら、しっかり支援をしていきたい」「加えて賃上げに不可欠な価格転嫁に向けた動きを加速させるべく、関係先にも働きかけをしていきたい」と話した。各産別のトップも、こぞって中小への波及の重要性を強調している。

 加盟単組の8割を中小労組が占めるJAMで、取引関係の実態を把握するため、昨年11月から今年1月にかけて実態調査(回答944社・事業所)を実施している。最大の納入先企業からの売上高が全体の2割以上を占める企業は60%に上り、取引関係についても30年以上に及ぶとした企業が65%に上った。特定の取引先に対する依存度の高さが浮かび上がる一方、3社に1社では21年度上半期以降、主要な納入先から価格引下げ要求を受けている。価格転嫁に関しては、8割近くが協議した・応じたとするが、労務費・固定費に限ればその割合は4割に達していない。

 集中回答日当日の3月15日には、首相官邸で政労使の意見交換も行われ、岸田文雄内閣総理大臣が「中小・小規模企業の賃上げ実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠である点について、基本的に合意」があったと報告した。今後、政府として業界別の状況を実態調査し、労務費の転嫁の在り方について指針をまとめるとの意向も示している。デフレマインドの払拭、構造的な賃金引上げの実現に資する実効策を期待したい。

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